第6話
願いも虚しく、会場に到着。
参加者の受付も子会社のスタッフがやってくれるとの事なので、
(↑最近流行りの婚活パーティーを運営する会社らしい)
本当にやる事は無さそうだ。
ならば・・・と辺りを見回し、
スタッフ用の控え室を発見。
そそくさと移動し、
新山さんに言われたように、
名刺にプライベートの連絡先を記載する事に。
とりあえず2,3枚でいいかな。
・・
でも、書くには書いたが、、
何と言って渡そうか。
・・
いろいろ考えた結果、
『何か相談があればいつでもこちらまで』
に落ち着いた。
(普通に考えてこれ以外ないよなー)
控え室から出てみると、もうだいぶ参加者が集まっていた。
そういえば、これ何人くらい集まるんだろう?
「サエ・・キさん?」
前から女性が確かめるように近づいてくる。
髪を結っている凛としたキャリアウーマン風の女性だ。
「あっ、上村様!
・・ようこそ!お待ちしておりました!」
(↑なんとなく来ること知ってた風を装わないと失礼かと思ってる)
「やっぱり佐伯さんだ。
佐伯さんも来てたんですね。
良かった〜」
知らない顔ばかりで心細かったのだろう。
知ってる顔を見つけて、心底安心しているようだ。
(↑可愛い)
「この間ご紹介した方とのお見合いは順調ですか?」
上村様が軽く辺りを見回し、小声で答える。
「それが会ってみるとあまり・・。
やっぱりお見合いって難しいですね」
そっか・・近い地区なんだから、
お相手が今日参加してる可能性だってあるよな。
僕としたことが、気を遣えてなかった・・orz
「・・すいません」
「何で佐伯さんが謝るんですか。(笑)」
・・相変わらず、
凛としてるのに無邪気な笑顔。
ズルいなぁ〜。
ある程度仲良くならなきゃ、
このギャップには気付けない。
(近寄りがたい雰囲気だから)
・・
あれ、ちょっと待って。
・・
もしや、、名刺を渡す絶好のチャンス??
・・
いやいやいや、
ちょっと待って!!
イベント来るのが早すぎるっつーの!!
(心臓バクバク)
まだ心の準備が出来てないって!!
「では、また」
いかん!上村様が行ってしまう!!
「あっ!」
「・・はい?」
ついつい呼び止めてしまった!
「・・」
ここまできたら、、もう渡すしかない!
「あの・・」
内ポケットに手を伸ばした次の瞬間、
「おっ!さえにゃんじゃん!
よっ!さえにゃん!」
『バシッ』
いきなり肩を叩かれてビクッとしてしまった。
・・自分が呼ばれているとは気付かなかった。
(だって『さえにゃん』って!アイドルかて!)
振り向くと、、
ここ最近で一番会いたくない人がそこに居た。
「!ヒメッ・・」
「姫?」
上村様は不思議そうな顔をしている。
「いや!違うんです!!
こちらの方は・・」
すかさず、姫川様が追い討ちをかける。
「そうです。
私がかの有名な東の第3プリンセスです」
シーーーン・・
(↑って音が聞こえそうなくらいスベってる)
上村様はまだ不思議そうな顔をしている。
・・こんな空気、、耐えられない。
「何わけのわからないこと言ってんですか!
(第何プリンセスまでいるんだよ)
こちら、会員の”ヒメ“カワ様です」
(↑あえて”ヒメ“を強調する)
「どもっす!」
「?・・あぁ〜!なるほど」
上村様も納得したようだ。
「こちらこそ、宜しくお願いします。
では佐伯さん、また」
「あっはい!
ごゆっくりお楽しみください!」
上村様は去っていった。
「・・って!
ウチにはあの人を紹介せんのかい!!」
『バシッ』
また肩を叩かれた。
(別に痛くはないけど。暴力的な人は嫌いだ)
「まぁいいじゃないですか」
「ちっ(舌打ち)、んじゃまた」
姫川様も去って行った。
(ひと安心。舌打ちする人も嫌いだ)
・・やれやれ、
せっかく名刺を渡すチャンスだったのに。
見事に姫川様に邪魔されたな。
(↑実は安心してるくせに)
・・まぁいいさ。
まだ懇親会は始まったばかりだ。
これから名刺を渡すチャンスなんて、
いくらでも来るだろう。