第3話
「えっ!?男性のお客様も接客するんですか!?」
「もちろんです。仕事ですから」
新山さんの”さも当然“、という顔はもう見飽きたよ、、、
「でも婚活として来てるのに、何か意味がないっていうか、、」
「あながちそうとも言い切れませんよ」
「えっ?」
・・
「・・新山さんってもしかして、
僕にそっちの気があると思ってます?」
「そんなわけがないでしょう」
冷ややかな目だ。
・・逆にドキドキする。
(↑おバカ)
「人の振り見て我が振り直せ、という言葉はご存知ですよね?」
「ええ、まぁ」
「ここに来るという事は佐伯さん同様、
多かれ少なかれ婚活に困っているという事です。
何かと学ぶ事もあるでしょう。
自分を客観的に見るためにも、
大事なことなんですよ」
「・・なるほど」
新山さんには、いつも感心させられっぱなしだ。
そうだな。
お給料だって発生しているんだし、
同じ志を持つ男性と話す事で得られる事だってあるはずだ。
四の五の言わず、精一杯やろう。
〜お客様来店〜
「どうも、五十嵐です」
パーマがオシャレなデキる男風の男性だ。
「五十嵐様。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
・・普通にこんなとこに来なくても、モテそうな人なんだが。
この間の上村様もそうだけど、
結婚相談所って、容姿整ってる人が多いのかな?
(↑僕は中の下)
名前は五十嵐智紀様。30代後半。
と言っても、年齢に比べて見た目は全然若く見える。
・・僕より若く見えるんじゃなかろうか。
(↑何気にショック)
・・えっ!?
バツ2なの!?
・・なるほどね。だからか。
(悟った)
(↑失礼)
「いや〜、お恥ずかしい限りです。
そこに書いてある通り、バツ2でして」
!・・ビックリした。
心の声を聞かれたのかと思った。(焦)
「いえいえ。今時バツがあっても珍しい事ではないと思います」
僕の言葉に、嬉しそうに五十嵐様が反応する。
「ですよね!それにバツがある人の方が、
結婚経験がある=結婚できるだけの生活力が
あってモテるって言いますからね!」
「あ〜そうですねー」
(自分で言うか?)
まぁ、悪い人では無さそうなんだけど。
何気なく五十嵐様が続ける。
「やっぱり最近は、バツありの会員さんって多いんですか?」
うっ、何か答えにくい質問。。
「え!ああっ、えっと、、、
すいません。研修中なもので」
胸のバッチを見せる。
「あ!そうなんですね」
ふ〜。やっぱこの言葉便利だわ。
(新山さんありがとう)
これ以上、この人のペースに巻き込まれるのは何か危険だ。
(ボロが出そう)
さっさと本題に入ろう。
「ご希望の条件は・・明るくてサバサバした方、
でございますね?」
「ええ。・・ここだけの話、元嫁がねちっこい人で、、」
「そうなんですか・・」
反応に困る・・。
〜1時間後〜
「うわぁ〜この娘も、この娘もいいですね〜」
いやいや・・
いやいやいや・・
無邪気か!
中学生がグラビア見てるわけじゃないんだから。
(せめて『この娘』じゃなくて、『この人』って言いなさいよ)
・・でもやっぱり、悪気は無さそうなんだよなぁ。
(↑まぁ、その方がタチが悪い場合もある)
「あの、、、五十嵐様。
大変申し上げにくいのですが、
そろそろ次の予約がございますので・・」
「あっ!もうそんな時間なんですね!
いや〜楽しい時間って一瞬だなぁ〜」
喜んでもらえて何より。
五十嵐様は意気揚々と帰っていった。
お見合いの申し込みをしたわけでもないのに・・。
・・まぁこちらとしても、
気軽に女性を紹介して犠牲者を出すわけにもいかないので助かったのだが。
(↑失礼)
別に悪い人ではないんだけどね。
(↑何のフォローだよ、ってか何回言うんだよ)
片付けながらふと、新山さんの言葉を思い出す。
『人の振り見て我が振り直せ』っか・・
・・
いやいや!
悪いところ有りすぎ!
(無かったのは悪気だけ)
(↑誰が上手いことを言えと)
(↑いや、そんな上手くない)