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結婚相談所Sプラン  作者: みゃう
21/27

第21話

「あの・・『全ての要望を満たしている女性でもない』っというのは・・?」



「自分でも気付いてるんじゃないですか?」



・・



気付いてないから聞いてるんでしょうが!


もったいぶらないでよ!

(イライラ)



恐らく僕が気付いてない事に気付いたのか、新山さんが続ける。



「・・最初に『あくまで勤務時間内は真摯に対応してください』と言ったはずです。

 わざわざ休日に付き添ったりする必要はないんですよ?」



「!!・・それは、、

 ・・向こうにいきなり言われたから、、

 ・・しょうがなく・・」



「・・フフッ、やっぱり」


「?」



「・・先ほど挙げた『ウザイ』と『テキトー』ですが、・・実はそんなに嫌いじゃないんでしょ?」



「!!」



「なんなら、ウザイくらい絡まれたいとすら思ってるんじゃないですか?

 ・・もちろん、異性からのみ」


(↑あれ?もしかして前に『そっちの気があると思ってます?』って聞いたこと根に持ってる?)



・・なるほど。確かに。


(時々ホントにウザイと思う事あるけど)



「・・そうかもしれません」


「そうでしょう?」


自分の予想通りだった事が嬉しいのか、

新山さんは少しだけニヤッとした。



「さて、そして『危なっかしい』ですが・・

 ・・こればっかりはどうにもなりませんね」


ズコッ!

(↑よくテレビでやってるコケそうになるやつ)

(↑実際にはコケそうになってないよ。頭の中だけ)



どうにもならんのかい!!



「・・まぁ要は、

 心配で心配でたまらないって事ですね?」



「!!・・なんかその言い方嫌です!」



「だってそういう事でしょう?」



「・・なんというか、、あの人は、、

 僕のペースをことごとく乱すんですよ!

 今まで一人でのらりくらりやってきた、

 僕のペースを」



「まぁそれが、パートナーがいるという事ですからね」



「・・だとしたら、知りたくなかったです。。

 正直、、出会わなきゃよかったです・・」



・・



「さて、最後に『チャラい』ですが・・」


新山さんは、僕の話を無視して続けた。

(こんなに頑張ったのに・・)



「・・そもそもあの方は、

 本当にチャラいんですか?」



「えっ?

 いやっ・・チャラいでしょう!」



「・・アナタ、本当は気付いてるんじゃないですか?」



・・出た!気付かせ待ち!

(もういいって)



「見かけや雰囲気がチャラそうなだけで、

 中身はそこまでチャラくないのでは?」



「!!何を根拠にそんな・・」



「もちろん、明確な根拠があるわけではないのですが・・

 パーティーの時に、姫川様を結構見てたんですよ。私にはパーティーを監視する義務がありましたので。

 ・・姫川様は、、嫌でも目立つタイプでしたし」



パーティーか・・

だいぶ懐かしいな。



・・ふと、あのキスを思い出し、

恥ずかしさが込み上げる。



そんな僕に気付く気配もなく、

新山さんが続ける。


「雰囲気が軽そうな方ってやっぱり、

 パーティーでは人気なんです。

 ・・言い方は悪いですが、

 簡単にいけそうだから」


「!!いやっ・・いけそうって・・」



・・話してる最中に、



またあのキスを思い出す。



・・



・・そうだよな。



簡単にキスするんだから、男達からしたら、かなりチョロいよな。



男なんて、

醜い考えのヤツしかいないのだから。

(↑偏見のかたまり)



「でも、、うまーくかわしてましたよ。

 携帯を片手に連絡先を聞こうとする男性の皆様を。

 基本、女性にばかり話しかけてましたし」



「えっ!?

 ・・いやいや!僕が見た時は、

 男性に話しに行ってたような・・」



「そう!そこなんです!

 佐伯さんが見た時だけ、男性に話しに行ってたように、私も見えたんです!」


(心なしか新山さんのテンションが上がってる気がする)



「・・それって、まさか・・」



「そう、私の気のせいじゃなければ、、、

 それは駆け引きですね」



「!!」



カケヒキ・・?



駆け引き!?



あの姫川様が!??



・・どう考えても猪突猛進タイプだろ!

(↑失礼)



・・だが、


思い返してみれば僕も小学生の頃、


気になる女子の前で、ワザと違う女子と話してたような・・

(↑似た者同士)

(↑小学生の頃の僕とね)



「・・だから、、、

 不器用なだけなんじゃないですか?

 ・・佐伯さんと一緒で」



「!!」



・・そう、薄々気付いてた。


チャラいわけじゃなく、

逆に純粋なんじゃないかって事に。


いつもふざけてるフリをして、

本気で結婚相手を探してるんじゃないかって事に。



・・でも、諦めてるんじゃないかって。


自分には無理だって。



・・そして、あのキス。


普段はガサツで、デリカシーのかけらも無い姫川様から繰り出された、


優しく、繊細なキス。

どこか、切なさと儚さを感じたキス。



・・だからあの時、何も言えなかった。


これが、あの時の違和感の正体。



・・もちろん、

本人から直接聞いたわけじゃないから、

僕の推測に過ぎないんだけど。




「・・でも、、

 『男紹介して』って言われたんですよ・・」

(↑相変わらず素直じゃない)



「・・だから、、

 あの方は不器用なんですよ」



少しニヤッとして、

新山さんが大きな手提げの紙袋を差し出す。



・・?



・・あっ!



あの時、姫川様が持ってきた紙袋だ。



中を確認して、ハッとする。



「菓子折りの下に入ってましたよ。

 あの時、佐伯さんを呼び止めたのに・・

 そそくさと帰っちゃったんで渡せなくて」



・・ぐっ。



「これっ、、佐伯さんにですよね?」


新山さんは明らかに僕宛てだとわかりきった顔で問いかけてきた。



「・・ですね」



中には小さなキリンのぬいぐるみが入っていた。



・・タグの部分に、

あの時行った動物園の名前が記載してあり、



その下にマジックで『さえキリン』と書いてある。



「・・何なんすかね?

 ・・ほんとに」



・・



人前で涙ぐむのか?



この僕が?



卒業式ですら泣かなかったこの僕が?




気持ちを察した新山さんが、

優しく問いかける。




「やっぱり、、、

 出会わなきゃ・・よかったですか?」



・・



「・・わからないです・・まだ・・」



正直な気持ちだった。



・・でも、



やる事は決まった。



〜帰り〜


「色々と話を聞いていただき、

 ありがとうございました」


「いえいえ。では」



新山さんは、もう怒っていないようだ。



「佐伯さん」



呼び止められたので、今度はちゃんと立ち止まった。



「はい?」



「ファイト!」


ビクッ!



「・・はっはい!

 ありがとうございます!」


(普段あんまり声張らない人が、急に声張ったらビビるなぁ)

(↑新山さんキャラ変してない?こんなキャラだったっけ?)



でも、、気合は入った!

(あざっす!!)



よしっ!!



・・仲直り大作戦だ!



僕は燃えていた。



・・恐らく人生で初めて。

(↑しょうもない人生だったんだな)

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