第15話
ダメだ。長引きそうだ・・。
病室をそっと出て、通話可能なエリアに移動する。
「すいません。あの、私・・」
「謝って済む問題じゃない!」
この人、、、
全然聞く耳持ってくれないじゃん!
(娘さんに似てますね!)
「違うんです!
今のは謝ったわけではな・・」
「言い訳は聞きたくない」
こちらが話し出すと、ことごとく話を遮られる。
ねじ伏せてこようとする。
(↑いるよねーこういう人)
マジで困ったな。
・・かと言って、何て伝えよう?
色んなことが渋滞してて、何から伝えればいいのやら・・
「・・」
「聞いてるのか?」
(↑いや、アナタが聞いて!)
しょうがない・・
「おい。聞いて・・」
「だーかーら!」
向こうの言葉を今度はコチラがねじ伏せる。
一瞬電話越しなのに、向こうの驚きと徐々に張り詰めていく空気を感じた。
(↑完全にタメ口だもんね)
・・でも、今だ!!
「私結婚相談所の職員でして!!!」
「・・えっ?」
やっと聞く耳を持ってくれた!!!
(いや、まだ安心はできない。たたみかけろ!)
「娘さんが◯◯病院に運ばれたと連絡があったので来ました。でも安心してください!娘さんの命に別状はありません」
(↑早口)
「・・はっ?」
まだまだ!
(ラッシュ!ラッシュ!)
「ただ少々ケガをした状態で酔っ払って寝ているので、・・“ご両親の方”とご連絡が取れず困っていた時に、・・“アナタ様”から連絡が来たんです」
(↑ここで“お父様”とか言っちゃうと『君に”お父様“と呼ばれる筋合いはない!』とか言われて、またそっちのターンに戻りそうで怖かった)
(↑ドラマの観すぎ)
とりあえず、伝えるべき事は伝えたが・・
一気に説明しちゃったからか、向こうがポカーンとしてる感じが伝わってくる。
少し間を置いて、お父様が喋り出した。
「・・えーっと、、
娘は今・・病院にいるんですか?
もう一度、詳しく教えてください」
さっきまでの威厳のあるザ・父親のような声とは打って変わって、不安そうな声だ。
・・でも
ここまで説明できればもう大丈夫。
(誤解も解けたし、いつでもそちらのターンに戻しますよ)
そこから、お父様の質問にできる限り丁寧に答え、やっとわかってもらえた。
(長かった・・orz)
「・・そうだったんですね。
そんな事とはつゆ知らず、色々失礼な事を言って申し訳ありませんでした」
「いえいえ!」
「・・でも、、それならそうと、
何で早く言ってくれなかったんですか?」
・・いやいや
アンタが人の話を聞かないからでしょうが!!
(↑とは言えるはずもなく・・)
「・・すいません」
「いえいえ!
こちらこそ、わざわざ病院に出向かせてしまって申し訳ありませんでした。
もう夜も遅いですし、お帰り頂いて結構ですので。
私がこれから病院に向かいます。
本当に、色々とありがとうございました」
「いえいえ!
それでは、失礼致します・・」
「・・あっ、ええ。
では、このお礼はまた後日改めて。
娘に持っていかせますんで」
「・・えっ!?
あっ・いえっ!お構いな・・」
『ブツッ』
電話は切れていた・・
・・
最後まで聞いてよ!
(できればもう関わりたくないのに・・)
・・はぁ、帰るか。
姫川様のスマホを返すために、先ほどの病室に向かう。
・・
・・あっ!
お見舞いにあんまり来た事無いからわかんないんだけど、、
(しかも緊急外来だし)
やっぱり、、
手ぶらは失礼なのかな?
(一般常識がわかんね〜orz)
・・まぁでも、
しない後悔よりはする後悔って言うよな!!
(キリッ!)
急いで近くにコンビニが無いか検索する。
(本当は果物が良いんだろうけどこの時間に八百屋はやってない)
・・!
病院内のコンビニがまだ営業してるじゃん!
(ラッキー!!!)
何とかお見舞いっぽいものを購入し、
(本当はメロンが良かった)
(↑コンビニにあるわけない)
病室に戻り、姫川様のスマホと共にそっと置く。
ふぅ。これでよし。
・・姫川様は相変わらず、
イビキをかいて気持ち良さそうに寝ている。
・・
僕は病室のドアをそっと閉めながら呟いた。
「ぉゃすみなさーーぃ・・」
(↑小声)