第14話
運良く大通りでタクシーを捕まえる事が出来た。
「◯◯病院まで!」
「はい」
・・あとは到着まで待つのみ。
到着まで何も出来ないというもどかしさはあるものの、焦っても仕方がない。
とりあえず、状況を整理しよう。
僕が解散した後、恐らく二人は居酒屋に向かったはずだ。
その道中で交通事故にあったとか?
・・いやいや、それなら五十嵐様と一緒のはずだ。
病院がわざわざ直近の履歴から僕に連絡してくるはずがない。
(そもそもトークアプリの無料電話なのに履歴から折り返せるんだな)
(↑初めて知った)
五十嵐様も一緒に事故に巻き込まれたとか?
・・いや、だったら『この携帯の持ち主様とお連れ様が・・』みたいに複数ケガ人がいることを匂わせてくるはずだ。
(↑たぶん)
・・ってか、病院から連絡が来たのは僕が帰宅しただいぶ後だったじゃないか。
普通に道中はありえないだろ。
(冷静になれ。テンパるな)
っとなるとやはり、居酒屋の帰り道か。
・・
ってことは、、
五十嵐様とホテルには行かなかったんだな・・
・・って!
何ちょっと安心してんだよ!
こんな時に!!
(不謹慎だぞ)
いや、待てよ・・
もしかして、
ホテルで五十嵐様に暴力を振るわれて・・
あらぬ妄想が止まらない。
どんなに考えたところで、それは憶測に過ぎないのに、いろいろと考えてしまう。
・・でも、ただ一つ、
間違いなく言えることは、
姫川様は今、自分で連絡が出来る状況ではない、ということだ。
・・クソ。
何で僕は先に帰ってしまったんだ。。。
「◯◯病院です」
「ありがとうございます!」
タクシーが病院に到着した。
病院が見えて来たあたりから手元に用意していたお金で払い、
病院の入り口方面に向かう。
えっと、緊急外来用の入り口は・・
あそこだ!
急いで受付まで走る。
「すいません!
先ほどコチラに運ばれた姫川美久の関係者ですが!」
「ヒメカワミク様、ですね。
お調べ致します。
その間にこちらにお客様のお名前とご連絡先の記入をお願い致します」
「はい。
・・・
記入しました!」
「ありがとうございます。
では、恐れ入りますがお客様とヒメカワ様はどのようなご関係でしょうか?」
「・・友人です。
先ほど病院から連絡があって来ました」
「・・わかりました。
では、こちらへどうぞ」
緊急外来用の待合室に通された。
「では、担当の者が参りますので、しばらくお待ちください」
「はい」
・・
とっさに友人とか言っちゃったけど大丈夫かな?
(だって結婚相談所の職員です!とか言ったら『はっ?』ってなりそうだし)
・・大丈夫だよね?
あとで病院側が『こんなヤツ友達じゃねーよ!勝手に通すなよ!!』って姫川様に言われて、
僕、、捕まったりしないよね??
(↑そんな事は無い・・と思う)
看護婦さんや先生風の方が通る度に、
呼ばれるのではないかとビクつくが、、呼ばれない。
かれこれ10分くらいは経ったと思う。
・・もしかして、
僕、、既に怪しまれて通報されてる?
(警察待ち?)
「すいません。ヒメカワ様の・・」
ビクッ!!
「あっ!私です!」
「どうぞこちらへ」
先生風の方が、僕を促す。
・・やっと姫川様に会える。
夕方まで一緒だったのに、もう何日も会ってない気分だ。
・・無事なのか?
『命に別状はない』とは言っていたが、
ケガの具合とか、何でケガをしたのかとか、何も聞いていない。
今すぐにでも先生に聞きたいが、もう本人の元へ向かうんだ。
今はそんなことで足止めするよりも、さっさとこの目で確かめたい。
いくつかの病室を通り過ぎ、ようやく到着。
ベッドに横たわる姫川様を見て、、
言葉を失った。
顔にいくつかバンソウコウが貼ってあり、意識が無いように見える。
まさか・・昏睡状態なのか!?
「先生!ヒメカ・・」
「グォ〜!、グオ〜!、プシュ〜」
「・・ん?」
これは・・イビキ??
「酔っ払っていて全然起きないんです。
何度も起こそうとしたんですが・・」
「・・えっ?」
「酔っ払って転んでケガをしたみたいです。
通行人の方が偶然見つけて、
119番してくれました。
道端に『痛てぇ〜痛てぇ〜』と言って倒れてる人がいる、っと」
「・・そうだったんですか」
・・良かった。本当に良かった。
「ご両親の方に連絡をと思い、
失礼ながら勝手に携帯を確認したんですが、、、」
先生が困った顔で携帯を操作しながら続ける。
「お父様、お母様の連絡先が見当たらないんです。
・・とは言っても一応、
それらしき連絡先を見つけはしたのですが、、
どうしても確証が持てず、、」
先生にスマホの画面を見せてもらうと・・
そこには『パピー』と『マミー』の文字が。
「ははっ・・」
(↑苦笑い)
恐らく十中八九、パピーとマミーが父親と母親だろうとは思うけど・・
(確か前にそんな感じで呼んでたような気がするし)
これは確かに連絡しにくいな。
夜も更けてきているし、
万が一、間違って連絡してしまったら迷惑だ。
とりあえず、命に別状はないわけだし。
「とりあえず、、
起きるまで待つしか無さそうですね」
「そうですよね。
では、私はこれで」
「はい。ありがとうございました」
先生は病室から出ていった。
・・
静かな病室に、姫川様のイビキだけが響き渡る。
寝ている姫川様に静かに近付き、寝顔を確認する。
・・
・・ったくもう!
女性が顔にケガをするなんて!
(バカ!ホントバカ!)
『ブゥーーーゥ、ブゥーーーゥ』
姫川様のスマホが鳴っている。
(↑マナーモード)
画面を確認すると、
「!!」
・・そこには『パピー』の文字が。
・・パピーかい!!
(できればマミーが良かった・・orz)
でも・・
せっかく向こうから連絡して来たんだ。
恐らく父親なんだし、
早くこの事をご家族に伝えないと。
「・・もしもし」
「・・!
娘は?」
威厳のあるザ・父親みたいな声に縮こまる。
「・・いやっ、あの・・」
「・・まぁいい。君だろ?
娘と健全なデートをしてくれている人は。
その件には感謝している」
「・・!
ちっちがっ・・」
「でも、こんな遅くまで何の連絡もなく、
年頃の娘を連れ回すのはいかがなものかな」
・・
怒られた!
(高校生のような怒られ方!)