第11話
この日の接客は、とにかく身が入らなかった。
姫川様から連絡が来てるかも!っと思い、
事あるごとにスマホを確認していたからだ。
・・でも一向に、連絡が来る気配がない。
(なんとなくモバイルデータ通信をOFFにしてONにしてみたけど、やっぱり来てなかった)
・・
そうか!
仕事の邪魔になってはダメだから、っと、
気を遣っているんだな!
意外と思いやりのある人じゃないか!
(↑勝手にポイントアップ)
〜仕事終了〜
連絡は、、、
来ていない。
・・いやいや、焦るな。
家に帰るまでが仕事だろ?
(↑遠足かて)
〜自宅到着〜
ドキドキしながら、リュックの奥深くからスマホを取り出す。
・・家に着くまでに連絡が来てるかどうか楽しみにしときたかったから、
リュックの奥深くにスマホを入れて、
連絡が来ても気付かないように仕向けてました。
(大事な連絡が来てたらどうすんだ)
(↑僕にそんなものは来ない)
連絡は、、、
やはり来ていない。
(帰宅中ずっと耳を澄ませてたから何となく知ってたよ。悲)
(↑気付かないようにしてた意味無)
・・
なるほど!
フルタイム勤務だと思われてるんだな!
(もう仕事は終わってるのに。まったく・・)
って事は先に夕食を・・
いやっ、お風呂を済ませておくか。
〜入浴後〜
連絡は来ていない。
〜夕食後〜
連絡は来ていない。
・・
!!
そして気付く、驚愕の事実。
まだ、、、
登録すらされてなくない!?
(↑『知り合いかも?』に名前出てこないぞ)
・・
あの人、、、
とうとうスマホが壊れたのか?
(画面バキバキだったもんなぁ)
(↑どうにか『何かあったんだ』と思いたいピュアな男心)
それからも、待てど暮らせど連絡は来ず、、
気付けば数日が経っていた。
・・こうなると、ピュアな男心はだんだん醜く、歪んでいく。
もういいや。
もう期待しない。
(いやっ、別に最初から期待してないけど)
・・やっぱ付き添うなんて言わなきゃよかった。
ってかそもそも、
初デートくらい勝手に2人で行けよ。
人を巻き込んどいて、連絡の一つもよこさないとは。
あーあ。
僕も連絡先、聞いとけばよかった。
そしたら僕から断る事も出来たわけだし。
別にあの人の事なんて、何とも思ってないんだから。
待つ側って圧倒的に不利だよな〜。
・・
決めた!!
もう絶対、連絡が来ても断る。
(当たり前だ。チャンスの神様はもう、とうに去っているのだよ)
人生そんなに甘くないって事を僕が教えてあげないとね!
(↑無駄な使命感)
『トゥルトゥン』
通知音に気付き、自分史上最速でスマホの画面を開いた。
相手は・・
姫川様だ。
『ども!姫川っす!!
連絡遅くなってごめんね!
集合日時と場所ですが
明日の午前10時◯◯動物園でいかが?
まぁダメって言っても連れてくけどw
んじゃまた/~~』
・・
マジで、、
前日に連絡とかどういう神経してんだか。
・・
・・まぁ、たまたま休みだったから良かったけど。
それに、下手に断ったり約束ドタキャンしたりしたら、
また職場に来られて何されるかわかったもんじゃないからね。
(↑フッ、素直じゃないね)
・・さっきまであんなにムカついて卑屈だった気持ちが、ウソのように晴れていく。
『お疲れ様です。
了解です。
当日はどうぞ宜しくお願い致します』
(↑取引先へのメールかて)
『トゥルトゥン』
うぉ!?返信早っ!!
(今までの連絡の遅さは何だったんだ?ホント悩んでたのがバカらしい)
画面を開き、つい吹き出してしまった。
フフッ。何だこのスタンプ。。
何となくヨロシク感は伝わってくるものの、
有名キャラものではなく、素人感満載の変なスタンプだ。
・・こんなの送ってくるって事は、
最後に自分が返信しないと気が済まないタイプなんだろうか?
・・
返信しようか1時間くらい悩んだ挙句、
(↑なげぇよ!)
やっぱりしない事にした。
(向こうが気にしてまた返信してくるかもしれないし)
さてと!
明日に備えてさっさと寝ますか!
明日は10時集合だから、、、と
準備の時間を逆算して、目覚まし時計をセットする。
(ウトウト・・)
・・
(!!)
・・えっ!?動物園行くの!?
(ベタすぎじゃない?)