第10話
〜翌日〜
くそ〜。気分悪い。
(↑二日酔い)
シフト入れなきゃよかった。
(飲むってわかってたら絶対入れなかったのに)
軽くぼやきながらも、フロマージュに向かう。
・・
・・もう昨日の事を、ゴチャゴチャ考えるのは止めよう。
ただでさえ気分が悪いのに、精神が崩壊してしまう。
どうせもう、あの人と会う事もそんなに無いだろう。
・・ってか、できればもう会いたくない。
あの人、フロマージュを退会してくれないかなぁ〜。
(↑ヒドイ)
ゴチャゴチャ考えてる間に、フロマージュに到着。
・・よし!2時間くらいだし、
いっちょ気分入れ替えて、頑張りますか!
「お疲れ様です!」
「お疲れ様です。
佐伯さんにお客様が来てますよ」
「・・えっ?」
「奥の部屋でお待ちです。
予約のお客様が来るまでそんなに時間もないので、早く済ませてくださいね」
新山さんから釘をさされる。
「はっはい・・」
嫌な予感がする・・
奥の部屋に行きたくない・・
奥の部屋は部屋の作り上、
中に入らないとお客様が見えない。
まさにビックリ箱を開ける気分だ。
・・くそ!
めちゃくちゃドキドキする!
でも・・
行くしかない!!
(そーっ・・)
「うわ!」
予想通りの結果に、つい心の声が漏れてしまった。
「なんだよ『うわ!』って!」
「いえ!・・すいません。。」
何で姫川様がいるの!!!???
(↑パニック)
絶対会いたくなかったのに!!!!!
くそ・・
恥ずかしくてまともに顔を見れない。。。
(↑ピュア)
「ってかおせーぞ!遅刻かよ!」
姫川様の声は明らかに不機嫌だ。
「いえ、遅刻じゃないです!
僕の出勤時間は固定ではないので・・」
「えっ?」
・・ヤバッ!
不審がってる??
もしSプランの事がバレたら、
いろいろとめんどくさそうだ。
「・・へぇ〜、イマドキの会社なんだな」
「はっはい!そうなんです」
助かった・・
姫川様にとっては、
出勤時間が固定じゃない=イマドキなのか。
・・
って!そうじゃない!!
「姫川様!何でいるんですか!?」
「昨日サエクロプスが『明日も僕、仕事ですし・・』とか言ってたから来たんだよ」
(↑声真似すな!)
何だよサエクロプスって!!
(サイクロプスだろ!無理矢理すぎ!)
・・ん?
えっ!!?
ぼっ、僕に会いに来たの!!!?
・・一気に自分の耳が赤くなっていくのを感じた。
(↑普通は顔が赤くなるんだけどな)
「いや、だから何で僕に、その、
会いに来たんですか?」
「えっと、、あの人、、
ほらあの、お見合いを申し込んだ・・」
「五十嵐様?」
「あっそうそう!
イガラシさんと来週会うことにしたから」
「・・そうですか。
それはおめでとうございます」
・・なんだ。
ただ報告に来ただけか。
(↑ちょっと残念)
「だから、来てね」
姫川様が可愛らしくウィンクする。
「・・はっ?」
「うん。だから、、ついて来てね」
「・・何故です?」
「だって、気まずいじゃん」
この人、マジで何言ってんだ?
「いやいや!!
昨日仲良く話してたじゃないですか!」
「う〜ん・・
実は酔っててあんま覚えてないんだよね〜」
姫川様は申し訳なさそうに笑っている。
「えっ!じゃあ・・」
言いかけて口をつぐんだ。
あのキスのことも覚えてないのか?
こっちはこんなに悩んでるのに・・
腹は立ったが何とか気持ちを抑え、平静を装った。
「せっかく二人で会うのに、
僕がいたら五十嵐様が嫌がるでしょう?」
「いやっ、これ、
イガラシさんからの提案なんだぜ??」
「えっ??」
姫川様がカバンの中をガサゴソしてスマホを取り出し、
五十嵐様とのやり取りを見せた。
・・いや、
スマホの画面バッキバキやん。(笑)
(内容が頭に入ってこない)
・・ってか、
やっぱり五十嵐様と連絡先交換してるよな〜・・
(↑どこにガッカリしてんだよ)
スマホを見せながら、姫川様が続ける。
「実はイガラシさんも酔ってて、
ほとんど覚えてないらしいんだと。
共通の知り合いの君に来てほしいってさ」
「・・!」
覚えてない??
・・いやっ、嘘だね!
酔っ払って意識が朦朧だった人が、
あんな顔で僕を見るはずがない!!
五十嵐様は絶対に覚えている。。
・・きっキスのことも。(ドキドキ)
・・
なるほどね。
これは言わば、、
五十嵐様からの果たし状だ!
(↑はい??)
ここで逃げては男がすたる!!
(↑変なところでスイッチが入るタイプ)
「わかりました。付き添います」
「マジで!?おっしゃ!」
姫川様は見るからに嬉しそうだ。
(わかりやすい人だな・・)
「おし!じゃあ連絡先くれ!!」
「えっ?」
「集合日時と場所が決まったら連絡するから」
・・そっか。
そりゃそうだよな。
・・あっ!
思い出して、内ポケットに手を伸ばす。
この間準備した名刺が、まさか役に立つとはね。
上村様に渡すはずだった名刺が・・
(↑ちょっと切ない)
「どうぞ」
「サンキュー!じゃまた!」
「はい。お疲れ様でした」
・・ふぅ〜。
やっと帰ってくれた。
とりあえず、、、
僕も帰りたい。
(既に1日分の仕事を終えた気分だよ)