第101話 散らす火花と一騎討ち
投稿忘れてましたぁぁぁぁ!! ごめんなさいぃぃぃぃ!!
大悪魔ボレアスの討伐に成功した私達は、出現したポータルを潜ってお城の前に戻る。
するとそこには、準備万端構えたアーサーさんが待ち構えていた。
「ふふ、十一秒差だ。惜しかったね、お嬢ちゃん。これでHP三割減のペナルティだ」
勝ち誇ったような笑みと共にそう言われ、むぐぐと呻き声を上げる。
くそぅ、ちょっと慎重に立ち回り過ぎたかな?
「むかつく。そんなだからハーレムギルド作ってる割にリアルではモテない」
「ぐっ!? り、リアルのことは関係ないだろう!? というか、なんでそれを知っている!?」
「カマかけただけ。あっさり引っ掛かるとかざっこ」
「ぐ、ぐうぅ……!」
さらりと重大な(?)事実が浮き彫りになったけど、容赦ないねココア。
あれかな? ティアのライバルだとかなんとかで比べられてる状況が嫌なのかな?
「この程度のハンデ、私のベルにかかれば大したことない。今のうちに、負けた後に消し飛ぶクレジット残高と最後のお別れを言っておくべき」
「ほほう、言うねえお嬢ちゃん」
バチバチと、二人の間で火花が散る。
あれえ、おかしいな。これ、私とアーサーさんの勝負だよね? ココア本人もそう言ってたよね? なんで私そっちのけで二人がガン飛ばしまくってるんだろう……
『この二人仲悪いよなぁ』
『直接対決したことないけど、FFO配信者の中じゃずっとツートップで競いあってたしな』
『てかそれよりさらっと私のベルとか言っちゃってるの尊いんですが』
『やっちまえ! アーサーなんてぶっ飛ばせ!』
『負けて涙ながらにココアに慰められるベルというのも捨てがたいと思わんか?』
『だがそうなるとベルちゃんがアーサーに寝取られる模様』
『ベルちゃんを取り戻すためついに実現するティアとアーサーの一騎討ち』
『なんだその展開熱いな』
『くっ殺ベルちゃんはよ』
「ちょっとそこ、勝手に人が負ける前提で話進めないでくれる!?」
私だって、アーサーさんをボコボコにして毟り取ってココアに色目を使えないくらいの恐怖を刻み込むっていう目的があるんだから。
言われるまでもなく、多少のハンデなんてひっくり返してみせるよ!
『いやほら、ベルちゃんが負ける姿が想像出来ないというか』
『アーサーが泣かされる未来が既に見える』
『百合の間に挟まろうとした男はどう足掻いても死ぬ運命』
『だから始まる前くらいアーサー勝ちに賭けてる風に見せて調子に乗せようという粋な計らい』
「息ぴったりだね!? しかもそんな堂々と暴露してたら意味ないし!!」
今私が突っ込んでるのは私自身の配信窓だけど、可視化されてるからアーサーさんにも見えてる。
当然、視聴者さん達の失礼な言説を見ることになったアーサーさんは、ふっと鼻を鳴らし……
「女性が応援されるのは当然のこと、視聴者諸君も立派な紳士ということだ。だが、そんな逆境を覆してこその騎士!! お嬢ちゃんには悪いが、華麗に勝たせて貰おうか」
サッと髪をかきあげながら、よく分からないポーズを決める。
うん、この人メンタル強いね。その点に関しては私じゃ敵わないよ、多分。
「さて、あまり雑談ばかりして視聴者諸君を待たせるのも悪い。そろそろ始めようか」
「あ、はい!」
カッコつけるのも程々に、そう提案された私はアーサーさんと向き合い、武器を構える。
決闘申請が届き、視聴者さん達も含めてルールを再確認、これで準備は整った。
「さあ、いつでも来るといい、レディファーストだ」
アーサーさんの装備は、全身鎧に両手剣。でも、前に戦ったクッコロさんみたいな威力重視の大剣というよりは、ある程度取り回しを考慮したロングソードって感じ。伝わるかな?
「そう? じゃあ遠慮なく……!」
ともあれ、そういう主義なのか何なのか、先手を譲ってくれるのは有難い。打たれ弱い私は、基本的に攻め続けないとまずいからね。
決闘開始のカウントダウンをゆっくりと見送った私は、それがゼロになると同時に一直線に駆け出した。
「《魔法撃》!!」
いつものスキルでATKを引き上げて、最速最短で足を狙う。
細身で長身なアーサーさんからすれば、私の小さな体はただでさえ対処しにくいはず。そこから更に体勢を低く落としながらの攻撃は、慣れた人でも防ぐのは難しい。
《浮遊》は使えずとも、そのAGIへの補正は健在なブーツのアシストを受けての一撃で、まずはアーサーさんを転ばせてやろうと目論むんだけど……
「おっと!!」
私の攻撃は、アーサーさんの剣にあっさりと弾かれる。
それだけで終わらず、私が攻撃しようとしたのと逆の足を軸にぐるりと回転、鋭い斬撃が返ってきた。
「っ……!!」
慌てて飛び退いたけど、ギリギリのところで躱し切れなかったみたい。私のHPがガクンと二割ほど減って、ペナルティも合わせてあっさりと半分を割り込む。
「なるほど、スキルに一切頼らないでその体捌き、やるねえ」
予想外の反撃に驚く私へ、アーサーさんはあくまでも余裕の笑み。
ただ悠然と剣を構え、私の一挙手一投足を見逃さんと鋭い視線を浴びせて来る。
「俺と同じスタイルのプレイヤーは初めてだよ。さあ、楽しもうか」
この人……ゲームの補正なんて抜きに、私と同じくらい強い……!?




