騎士の道
王国には騎士団が存在する。彼らは建国以来続く伝統的な国家最高戦力として、領土の警備や他国への牽制を主な仕事としている。
その中でも先代、万能の王にその実力を認められて魔法剣を授かった3人の騎士団長と、聖騎士の称号を授かった4人は政治に口を挟むことすらでき、彼らを人は七聖と呼んでいる。
その選ばれし7人の1人であるリア・グリンデルは最年少かつ女騎士だった。彼女は城下見回りの使命を担っているため街の人にはよく知られている。
「今日もなにごともなく帰れそうね、やっぱり平和が一番よ。」
辺りを見回しながら先ほど買った赤い果実を口に含む。
「わ、甘酸っぱい!やっぱこれ買って正解だったわ。あ、サーシャ姉さん、これ食べてみてくださいよ。」
リアは一緒に見回りをしていた年上の女騎士に果実をさしだす。
「リア、仕事中なのよ。気を緩めないで、、、でもせっかくだからいただくわ、ありがとう」
2人はいつも通りに宿舎へと戻った。
宿舎には数人の同僚と住んでおり、家事などは交代制で取り組んでいた。
「2人ともお帰り、リアにさっき手紙が届いたけど、部屋に置いておいたからね。」
リアは心当たりがあったようで少し嫌な顔をした。
「どうせ貴族の男からでしょ。いちいち手紙なんか寄越すんじゃないよもう!」
王宮から遺品がなくなって1日が過ぎたが未だになんの手がかりも見つかっていない、それなのに呑気に恋文など読んではいられない。
「あ、あとね団長が明日王宮に来てくれって言ってたよ、聖騎士さんは忙しいねぇ。」
リアは正直面倒だと思ってしまうが、団長に後から説教されるのはもっと面倒なので了承した。
「ハァ、分かったわ。じゃあ今日は早めに寝ることにする。」
リアは食事を済ませた後1人で寝室へと向かった。
*
次の日、朝から王宮に呼び出されたリアは団長とリエス王の会議に参加させられていた。
この国の騎士団はリアの所属する王都の警備を任された|守護騎士団
法の届かない領土内の問題を解決する|武装騎士団、
そして国境付近の警備をする|国境警備騎士団の3つに分けられている。
現在、王都には近衛のみがいるためその中から遺品捜査の役も出せば、残る戦力は相当少ないのものになるのである。だから王都にいる七聖2人が呼び出され、対策を考えている。
「ラスティナ・ダンエンド近衛団長よ」
「王、ラスティナでかまいません」
「そうか、ラスティナよ、すでに先代の遺品は盗まれたものとして国政は動いている。王都の警備には最低何人必要だ?」
団長が少し考え口を開く
「最低でも10人は必要です。我が団には15人の騎士がいますがそのうちの3人だけを捜査に向かわせます。」
王は苦い顔をする。
「3人か、これ以上増やすとなると王都の警戒が手薄になってしまうと、ううむ、」
「武装の連中があと半日で戻ってくると連絡がありました。ならば警備に人数を費やすべきでしょう。彼らが戻ってきてから考えた方が良いかと。」
王は少し不安そうにする
「わかった、ご苦労だった。何かわかったことがあればすぐに報告をよこせ。」
2人は頭を下げて、王室を後にした。
王宮の廊下にコツコツと2人の足音だけが響く、
「流石ですね団長、今日の会議は私必要なかったみたいですね。」
「なぁリア、お前は優秀な奴だ。だからこそたずねるが、」
唐突にラスティナが口を開く
「お前は何のために騎士になった?貴族の娘であるお前が、命を賭して戦う理由があるのか?それは国のためか?王のためか?自分の名声か?」
ラスティナ強めの口調でリアの真意を問う。
「今日を生きるためです。」
その目に迷いはなかった、
「私も私以外の人も今日を生きる、明日を望む権利がある。その権利を暴力が奪っていい道理はありません。誰であろうと、たとえ王であっても民衆の明日を奪うといなら、私は容赦しない。騎士になったときそう誓いました。」
ラスティナはリアの言葉に信念を感じた。
「そうか、フフッ、問い詰めて悪かったな。やはりお前は私より優秀だな。」
「何言ってるんですか、私はあなたを尊敬してます。あなたになら、、」
「もういい、ありがとう。」
2人は顔を見合わせて笑った。
*
それは突然に現れた。
一瞬にして感知した2人は城下町の方向に振り向く、目に見えるほどの高魔力が中央通りに集まっている。それがどれほどの危険性を持つかはすぐにわかった。
「リア!」
ラスティナはリアの方を振り向くが、すでにリアの姿はない。リアの行方を察し、伝晶石で連絡する。伝晶石はラスティナと近衛の宿舎を繋ぐ連絡手段である。
「もうわかっているだろうが緊急事態だ!総員、市民の安全を最優先に行動しろ、私もすぐ行く!」
最低限の連絡を終えて、ラスティナも魔力の元凶に向かおうとする。
「まぁ、まてよ。」
真横から声がして咄嗟に後ろに下がった。
男が立っていたが声をかけられるまで気配は全くなかった。
いやそれよりも、王宮に侵入者がいることの方が問題であった。
「きさまどうやって入った!衛兵は気づかなかったのか!?」
ラスティナは身構える。
「いや、お前の部下は優秀だよ、ただし相手が悪かったな。どうなったかは聞かなくてもわかるよな?俺たちは男女関係なく邪魔する奴は消すぜ。」
その瞬間、城下で巨大な衝撃波が起こった。一瞬にして街は壊滅した。
「なっ、あれもお前の仕業か!?」
男は笑った
「あれは俺じゃない、ツレがやったことだ。しかしまぁずいぶんと派手にやったな。いったい何人が死んだかな?」
ラスティナはもう何も言わない、ただ男に斬りかかった。だが斬撃は男の身体をすり抜け、壁を破壊した。
「お〜怖っ、あー仮想体ってことがバレちまった。すまんな、俺はここにはいない、さっきのも嘘だ、衛兵には会ってない。今回はお前に用があってな。」
「用だと?」
顔をしかめるラスティナを見て男はニヤつく
「万能の王が遺物はある組織の手によって盗み出され、世界にばらまかれた。それを身に付けることができるのは選ばれたものだけなのはお前も知っているだろう?」
ラスティナは反応しない。
「選ばれたものは世界を導かなくちゃならない、誰かがまた統率者になる必要がある。かつての王もそれを知っていたから旅に出たのさ、そして全てを手中に収めた。」
「何が言いたい。」
男は拳を握る
「闘いだよ、選ばれたものたちによる覇権争いさ!震えるねぇ、勝者は1人だけ、そいつが次の支配者だ!」
「ふっ、くだらない。そんなことはさせないあれらはわが国の王のものだ。我々の国で管理する」
男は笑う、
「よくいうねぇ、知ってるぜ団長さんよぉ、あんたあの剣を持ってるだけで使うことができないんだろ?そりゃそうさ使えるわけねぇ、お前は選ばれなかったただの人だ。ただの人に扱えるわけがない、そういうもんだ」
仮想体はすでに消えかけている。
「・・・だがその実力は本物だ。だからお前には外野に行ってもらわなくちゃ困る。」
男の仮想体がラスティナを囲んだ
「じゃあな、また会おう」
次の瞬間まばゆい光に包まれた。気づけばラスティナは王都から離れた商業都市にいた。ラスティナは気づく、奴は自分の足止めが目的だったのだと、
「くそっやられた、転移魔法か!」
おそらく仮想体に一度だけ転移が発動するように仕組まれていたのだ。今から王都に戻ろうとしても時間がかかるだろう。まんまと出し抜かれた。
「すまないみんな、リア、頼む持ちこたえてくれ!」
王都は間違いなく混乱している。事態は最悪だ。男の言葉が胸に刺さる。
「これさえ使えれば、」
ラスティナは腰に差した魔法剣を使えない己の無力さを憎んだ。
ちょこちょこ作品タイトル変わってたんです。
でももうこれでいくことにしましたのでアヴリオン イストリアよろしくお願いします。