市民トーク2
万能の王レイス・ヴァーミリアン、それはヴァルミア王国始まって以来最も国を繁栄させた存在であり先代の王である。
若き時代にいくたびの冒険を乗り越えあらゆる力、道具、知恵を手にした王は人間を束ね、他種族との共生をも実現させた。
その栄光は全世界が認めるほどすでにいくつもの伝記や物語すらも出回っていた。
*
「亡くなったって?・・・マジかよ。」
突然のことでウィンは頭が真っ白になる
「まぁ、あんなすげえ偉大な人でも、いつかは死んじまうもんなんだな。
・・・なんだい、ずいぶんとショックをうけてんじゃねぇか。」
となりの店主は、まるで自分の親の死を知らされたかのような反応をする青年を見て不思議そうにたずねた。
「恩があるんだよ、子供のころ、病気で死にそうになったところを助けてもらった・・・命の恩人だ。いつか礼を言おうと思ってたんだがなぁ」
青年はどこか寂しさを感じさせて笑った。
少しの間があってから、店主が口を開いた。
「にいちゃん、名前は何ていうんだ?」
「・・・ウィンだ」
「そうか、ウィン、お前さんは葬儀に参加すればどうだい、礼を言うならそのときしかもうないだろうよ。おそらく2日後ぐらいにあるだろうからウチに泊めてやるよ、多少は働いてもらうことになるがな。」
青年、ウィンは驚いた様子でうなずいた。
「あんた見た目と違っていいやつだな。」
強面に反した優しさを見せる店主は笑った。
「俺はダグラスってんだよ。見た目よりもは余計だ。」
客のいなくなった市場に男2人の談笑が響きわたっていた。