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アヴリオン イストリア  作者: カワノタミ
18/25

嵐の夜

 嵐の中、ジャックは奇跡を目の当たりにしていた。村を飲み込もうとする水流は寸前で止まり、少しずつ村を避けるようにその量を減らしてゆく。


 川の裂け目には1人の人間が立っていた。まるで自分こそが川の氾濫を抑えているとせんばかりの姿にジャックは驚く


「な、何が起きたんだ?、水の化物が止まった・・・あいつはいったいなんだ。」


 明らかに普通でないその男はジャックに気づく


「人がいたのか!偶然近くを通っただけなんだが、この村の危機と思って助けに来た。」


「ああそうか、本当に助かった。こんな凄いことができるなんて、アンタいったい何者だ?」


「俺はレイス、こいつは魔法ってやつだ。こんな辺境の村では滅多に目にすることはないだろうが、結構便利なものでよ、大抵のことはできる」


 ジャックは感動した様子を見せた後、唐突に頭を下げ懇願する。


「頼みがある。その力でうちの息子の病気も直してくれないか、もう時間がないんだ。村の医者では手の施しようがなくて、もうアンタしかいない」


「・・・・いいだろう、病気のひとつやふたつを治すぐらいワケないからな」


「ほんとかッッ、ありがとう!恩に着るよ!」


 村では住民たちが突如として消えた災害を不思議に思いながらも、皆安堵し生きていることを喜んでいる。


 しかし、ジャックの顔からはまだ焦りが消えておらず、レイスを連れて苦しむ息子のもとへと急ぐ。やっと見つけたかすかな希望だ。一秒だって惜しい。


「ここだ。さ、早く入ってくれ」


 周りと大差のない普通の家に二人は入る。家の奥にはベッドに寝たまま苦しそうに息をする子供の姿があった。


 レイスはすぐさまジャックの息子に手を当てる。ジャックにはわからないがおそらく魔法を行使していのだろう。少ししてレイスがかざしていた手をどける。しかし、ジャックの息子の容体がよくなったようには見えなかった。


「どうなんだ、病気を治したのか?」


「・・・ダメだ。」


「は?」


「彼は病気に侵されているのではない、これは呪いだ。それもとてつもなく強力な怨念から受けた呪い」


「じゃあ、治すことができないのか?あんたの魔法はなんでもできるんじゃあなかったのかよ!?」


「病気なら治すことはできる。だが呪いは治すのではなく、解かなくてはならないのだ。経緯(いきさつ)がわからなければ怨念を解放することもできない」


 ジャックはその場にへたり込む。もうすがるものはない。息子を救う手段は絶たれた。


「ちくしょう、ちくしょう!!」


 涙を流し、何度も床に拳を叩きつける。何もできない自分への怒りと悔しさが溢れ出た。


「仕方ない、あの手でいくか。私も救うと約束した手前、見捨てることはできない」


「・・・?まだ何かあるのか」


「私の寿命を分けてやる。私の命は少し特別でな、何があろうとも与えられた時間を生きることができるのだ。」


「つまり、どういうことですかい?」


「これから私がお前の息子に寿命20年分を分けてやる。これで呪いに関係なく、彼は後20年は必ず生きることができるはずだ。」


「そこまで・・・ああ、ありがとうございます。」


 ジャックは床に頭を伏せて、心からの感謝を見せる。


「命ひとつ救うことで変わる明日もある。この子がいつか、国を動かすほどの賢人になるかもしれない。与えられた20年をどう使うかは君の自由だが、期待しているよ」


 そう言い残して、レイスは姿を消した。


 それから15年、今は亡きレイス王に救われた少年は自ら嵐の中へ飛び込むほどの立派な青年へと成長したのだった。


 その青年の名はウィン、いずれ国中が知ることになる勇敢な男である。

読んでくださった方ありがとうございます。作者のカワノタミです。ついに一章が完結いたしました。次章もぜひ見てくださいね、本当にありがとうございました。

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