動乱終結2
事件の2日後、王宮のとある1室では王が激昂して以来一度も開かれていなかった定例会議が行われていた。
出席しているのは以前とは異なる面々で現国王リエス、トリエンダ、文官数名の他に2人の騎士団長、リア含む3人の聖騎士も参加していた。
「聞きたいことは山ほどあるがまずは順を追って話してもらおうか」
今回の件を大まかに把握しているリアはトリエンダに説明を求められ立ち上がる。本来であれば騎士団長の責務であることだが、ラスティナは何も言わない
「まずこの事件の主犯はキラーウェと名乗る男でごく普通の魔法使いでした。奴ともう1人男がいました。おそらくキラーウェという男にこの街を襲うように指示した張本人だと思われますがそれによる被害自体はほとんどなくラスティナ騎士団長の足止めが男の目的だったようです。現在、足取りは全く掴めず完全に逃げられています」
トリエンダが顔をしかめる
「ただの魔法使いがこれだけのことをやったとは思えんのだが?おぬしも一度応戦したと聞いているぞ何故捕らえることができなかったのだ?」
リアは少しためらった様子で答える
「先代の遺品、王の腕輪をつけていました。その魔力はとてつもなく私も一時撤退を余儀なくされました」
文官がどよめく、王が静まれというまで室内は混乱することとなった。
「何故そいつが国宝を持っているのだ?」
王の質問にリアは黙る。別の方向から答えが返り皆の視線が集まる
「盗賊の仕業ですよ。近年この国に拠点を築いていると言われている盗賊集団の話をご存知で?」
声の主は青髮の男、武装騎士団の団長フロドルであった。
「無論だ。去年から対策に追われている案件だからな、しかし全く情報は入らん」
「遺品騒動の犯人も盗賊です。昨日盗賊の一味に足止めをされた際に1人捕らえておきました。知っていることを洗いざらい話してくれましたよ。今ご報告しましょうか?」
「・・・いいだろう」
では、と一礼をした後にフロドルは話を始めた
「まず奴らの狙いは資金調達であることが判明しました。国宝はさぞかし高く売れたのでしょう、売った品は王の遺品13基のうち9、そのうち5つが領土外へ売り飛ばしたそうです。盗賊の手元に残った4つは悪用されることは間違いないでしょう。そのうちの1器『魂冠』はあるお方の手によって奪還されました。」
「・・・算数の問題じゃないんだぞ。もっと端的でいい」
「つまり遺品は王宮内に7基、盗賊に3基、国外に6基
です」
王は頭を抑える
「・・・数が足らんのではないか?」
「残る4基はそれぞれあるべき場所に戻っただけじゃよ」
また別の声が聞こえてくる
「おお、来られましたか御老公」
フロドルだけが上を向いていた。他のものも上を見上げると天井に老人が立っていた(ぶら下がっていたというのが正しいのだろうか)
「何者かな?」
「かつてレイス王とともに旅をしていた。冒険家スワイオールでございます国王陛下」
老人がフワフワと降りてくる。何かの魔法だろうが、皆唖然としている。
「と、まぁ堅苦しいのはこれぐらいにしときねぇや。先代はガキの頃からの付き合いだ。手助けはできるだけしてやるぜ。」
急に軽い口調に変わったため王は少し対応に困った様子を見せた
「あ、ありがたい、では先ほどの残りの4基とは?」
そう聞かれスワイオールは真剣な顔になる
「ふむ、知らんのけ?魔法剣はもともと剣ではないんじゃ」
ふたたび室内がざわつく、フロドルも細い目を見開いていたためこの話はここで初めて明かしたことがわかる。
「ワシらが旅の途中で見つけた膨大な魔力を持つものを剣に変えただけなのじゃ、例えば、、、黒竜とかな」
「ああ、竜から作られた黒剣のことですか、その4基の剣が生物に戻ってどこかへ帰っていったと?」
騎士たちは思い当たる節があるようだ
「うん、そんな感じじゃ。かつて、ワシが相手したのは『黒竜』と『猫森』だけじゃが、どちらも化け物じゃで、あれは人が手を出せるものではないわ」
だんだんと口調を変化しつつ、スワイオールは何かを思い出し身震いをする。
「そんな恐ろしい化け物が復活したのですか!?ああ人類はどうなってしまうのだ」
「心配することはない。奴らはちょっかいさえ加えなければ自分の住処で大人しく寝とる。ただし一度起きれば一大事となるじゃろうな」
軽い脅しにその場は凍りつく
「心配事がこれ以上増えるのは困るがな、少し話が外れすぎたようだ。今回の件に戻ろう」
ふたたびリアに視線が集まる
「はい、では王都の被害についての報告をいたします。死傷者約1350名、行方不明者150名・・・」
「まて、行方不明者とはなんだい?瓦礫の撤去はすでに終わっているのだろう、何故行方不明者が出る?」
フロドルが口を挟む
「それが敵の狙いだと思われます、混乱に乗じて市民をさらっていました。詳しい理由はよく分かっていません」
「おそらく国宝を売りさばく為のカモフラージュじゃな、人に装飾品をつけて売れば痕跡は残らん」
それはないのではないかと数人が思ったが口にはしなかった。王はため息をつく
「なんにせよ捜索隊を結成する必要があるな、軍備を整えなければ」
「行方不明者捜索の任は我々、武装騎士団が請け負いましょう。現在盗賊の足取りを調べている途中ですから」
「そうかならば全権をお前に託そう」
「ありがとうございます。必ずや尻尾を掴んでみせます」
「いい加減にしてほしいですな!」
机を叩き、立ち上がったのは代表貴族のドルフ卿であった
「あなた方はいったい何の話をしているのですか?」
「聞いていなかったのか?この件の損害を、補填する為のだな・・・」
「そんなことはわかっている!私が言いたいのはそんなことよりもしなければならない話があるといっているのだ!!」
数人がピクリと反応し険悪な空気に包まれる。現在この国では王族とほとんどの貴族が対立関係にある。
そのため貴族は政治的な力はほとんど持ってはいない、代表が政策の内容を他の貴族に伝えるために参加している程度であった。
しかし今回のように王族派が失態を犯すとすぐ傷口をえぐるような真似をして王族のは政治的権力を削ろうとするのだった
「この大事件、王都に重大な被害をもたらした挙句に盗賊に民が連れ去られているだぞ!我々貴族はあなた方が最適な方法で対処すると信じて騎士団継続の為の資金を提供しているのに金を巻き取るだけ巻き取っていざ災事になればこのありさま、まるで侠客・・・」
「あまり熱くなりなさるな、それ以上は狼藉とみなしますぞ。だが、あなたの言い分も分かりますドルフ卿、たしかに責任を取らなければなりませんな」
代表貴族はだんだんと平静を取り戻していく
「・・・そうだ。王よあなた様はどう思うのだ?こんな状況まで何もできなかったことを申し訳なく思っておられるなら、よくお考えになられよ」
沈黙が訪れる。ただ1人スワイオールは我関係なしと言わんばかりにお茶をすすっている
「私の責任です」
「なんだと?」
初めてラスティナが口を開いた。リアは驚いた様子で言葉が出ない
「私の油断により状況が悪化したことは事実です。私があの場所に着いた時にはすでに街は崩壊していました。初めから私がいればもっと小規模に抑えられた」
皆が考え込む、
「まぁ確かにな、どんな理由でも騎士団の人間が市民を守れなかったのは問題だ。お前のせいでこうなったと言われても仕方がないな」
フロドルが一言加える
「そんな、、」
リアは唖然とする
「戦力の低下は致し方あるまい、ラスティナ・ダンエンドには騎士団長の座を降りてもらう。代わりに今回の功績を称え、リア・グリンデルに騎士団長の任を命じよう」
リアがラスティナのほうを見て何か言いたげな顔をするとラスティナは首を横に振った
「・・・はい。・・・ありがとうございます」
反論の余儀なくリアは任を受け入れた。その後スワイオールの助言もあり、順調に会議は進んだ。
結局、王の遺品も盗賊も武装騎士団が捜索することとなったがリアの頭の中に内容は全く入ってはいなかった。
会議後、ラスティナとリエスを部屋に残して皆解散し、リアだけは部屋の前でラスティナが出てくるのを待っていた。
しばらくしてラスティナが扉を開けて出てきた。
「ティナさん、なんで自分からあんなこと言ったんですか!?何も騎士団をやめなくても、私たち守護騎士団は王宮を守り抜いたじゃないですか!なのになんで!」
ティアはかじりつくようにラスティナへ問いかける
「・・・そうだ、お前たちは王宮を守り抜いた。だが王都はこの有様だ。私がいれば救えた命もあっただろう、お前たちに無理をさせることもなかった。・・・本当にすまない」
ラスティナに頭を下げられ、もうどうしようもないと悟ってしまう
「でも、でも・・・」
涙目になっているリアの頭をラスティナが撫でる
「泣かなくていい、またいつでも会えるさ。私がいなくても騎士団のリーダーとしてこの国を守ってくれ頼んだぞ」
リアは涙を拭い、ラスティナの思いを受け取る
「私はいつか貴女様を超えるほどの騎士になります。だから安心してください」
ラスティナは笑みをうかべもう一度頭を撫で王宮をあとにした。
この先起こる困難も彼女なら乗り越えられるだろうと確信したその目には何かを覚悟する意志が見えた 。
読んでくださった方ありがとうございます。作者のカワノタミです。今話でまたたくさん登場人物が増えました。誰が誰か忘れそうで怖いですね。さて次回の話は「ウィン復活!農民をどれだけ働かせるんですか!!」です。また読んでくださいね。




