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アヴリオン イストリア  作者: カワノタミ
10/25

騎士の道 3

 王都の中心では熾烈な戦いが繰り広げられていた。槍状に形を変えて襲ってくる家の残骸を一つ残らずなぎ払い、リアは少しでも敵に近づこうとする。


 だが敵の攻撃は死角をついてくるため、その度に体を回転させ防御にまわる必要があり、再び距離を取られるのであった。


「いつまで続くかな?持久戦は分が悪そうに見えるぞ」


 男の言う通りだ、リアは少しずつ体力を消耗しているが男は腕輪の無限に近い魔力に頼っているため攻撃の数は増す一方である。早く決着をつけないと時間が経つに連れて不利になっていくばかりだ。


 それを理解しているリアは戦い方を変える。全身に魔力を纏い足に負担をかけて、蠢く瓦礫の間を閃光のように駆け抜け一気に間合いを詰めた。


 そして男に向けて渾身の力で剣を振るう、男は離れるため衝撃波を放つがリアの纏う魔力がそれを無力化する。


 完全にとった、しかし足元から伸びてきた巨大な瓦礫の柱に押しのけられる。


 吹っ飛ばされて宙に浮いたリアを待っていたかのように槍が襲う。上手く身をひねり擦り傷程度のダメージでこれをかわし、再び剣の間合いまで近づく


「何度やっても無駄だ!」


 瓦礫の波が男と剣の間に壁をつくる。すでに自分の最高の速度で距離を詰めることを試みたがそれでも男に傷をつけることは出来なかった。


 息をつく間もない攻防が繰り広げられリアの呼吸がだんだん荒くなっていく、最初の一撃で倒せなかったことを今になって後悔する。


「時間がない。何か、、何か弱点のようなものはないの?」


 攻撃の一つ一つを観察()ている。何かが掴めそうな気もするが意識をそっちへと向けている暇はない。槍は次々と襲ってくる。


 リアは騎士の中でもかなりの剣術、体術の持ち主であった。


 しかし、魔法に関しては体や剣に魔力を纏わせて強化する程度の技量はあるが、攻撃魔法や精神系の魔法は全くもって習得しておらず(体術にものいわせて距離を取らせなかったこともある)、遠距離を得意とする敵との戦闘への対策を怠っていた。


「私はまだまだ未熟者ね」


 己に足りないことを今考えても仕方がないと、苦笑いを浮かべる。


「よく避けるな、ならこいつはどうだ!」


 槍となった瓦礫が変形する前の瓦礫を空中へと押し上げる。


 リアの四方八方を瓦礫が囲む、男が手をかざすと一斉にリアを突き刺そうと向かっていく。


 くっとリアは逃げ場がないことを悟ってまさに神技の速さで剣を振り回し、瓦礫が体に刺さるよりも早くその先端を切りおとしてゆく。しかし長く続けられる技ではない


「ほぉ、まだそんなに疾く動けるのか、だがまだ終わってはいないぞ」


 切った断面部分が槍状に再び変形し攻撃してくる。切っても切っても伸びてくる槍はついにリアの身体を貫く、体に激痛が走った。


 それでも生きているのは急所に向けられた槍だけは切り続けていたからだ。ここでリアはある違和感に気づいた。


(なぜ切り落とした先端は攻撃してこないの?そういえば一度私が切って下に落ちた瓦礫はもう動いていない、今私に刺さった木片も、、)


 男を見る、男の横にある動く気配の全くない柱が目にとまる。


 !!


 何かを閃いたようだった。というよりかは思い出した。リアは剣撃によって、周りに散らばる瓦礫を遠くへ吹き飛ばす。


 これ以上はダメージを受けられない。体からは赤い血が止めどなく流れ出て体力もかなり削られた。それでもかすかに勝機が見えた。


(チャンスは一度だけ、一度だけ必ずできるスキに私の全てを注ぐ!)


 剣を握りしめて全身に力を込める。魔力が体を鎧のように包み、最大の攻撃に向けての準備が整う。


「来るか、さあどうする?」


 男はリアの魔力が急激に上がったことで決着をつけにくると考え、警戒を強める。


 えぐれるほど地面を蹴り一直線に男に向かって突進する


「バカが!また同じことだ!」


 目では追えないが来る場所がわかっている限り対策の方法はいくらでもある。男は目の前に巨大な壁を立ち上げ進行を妨げようとする。


 ズバッと壁の一部が切り崩されそこから男めがけて投石物が飛んでくるも衝撃波に粉砕される。男は壁をはったのは間違いだと気づくがもう遅い、リアの姿を見失った。


「あなたのその能力には3つ弱点がある」


 声が聞こえるもどこからかはわからない。


「一つは一度形状を変えて操作したものはもう動かせないこと、二つめはすでに役目を持っているものは操作できないこと」


 リアの持つ剣や鎧を操作しなかったことや始めに街を破壊して瓦礫をつくったことから見出した答えだった。


「その力の名は『命令(オーダー)』、物としての意義を失った物体に形を変えて再び役目を果たさせる能力、かつて万能の王が荒廃した街を一瞬にして修復したという話を聞いたわ。どうやって手に入れたかは知らないけど、あなたのその腕輪返してもらわないと」


「クッ・・・だが、この力を知っているからといって、別に勝敗がひっくり返ることはない。なすすべなく死ね」


 男は一帯の地面に転がる瓦礫を剣山のように変化させる。これでリアがどこにいても関係はない、串刺しである。


「3つ目の弱点は、、、」


 声と同時に剣山の隙間からまさに糸を縫うように一瞬にして間合を詰められる。


「なぜか()()は言葉を理解するそうよ」


 振り上げた剣は当然魔法で強化されている。


 (くっ、周りの瓦礫はすでに剣山として役割を果たしている。衝撃波は通用しない、ならば地面に埋まっているものを壁にすればいい。)


 男の命令より早くリアが口を開く、


「あなた達はすでに足場としての役目があるわ」


 反応しない、リアの言葉にも男の命令にも


「!?、くそッなぜだ!」


「さぁ?なぜなのかしら。でも、立派に役目を果たしているわ。、、これで終わりよ」


  瓦礫たちは足場としてしっかりとリアの踏み込みを支え、剣は男の身体を文字通りぶった切った。大量の血を流しながら男は倒れこむ。


 グガァッ!ブシュウ!声というか息だった。切られた箇所から空気が漏れている。


 しかしまだ男は生きている、切られる瞬間から腕輪による超回復が始まっていたからだ。


(ッッ治癒しきれねぇ!傷が深すぎる、チクショウが!)


 腕輪のお陰で延命措置が行われているだけだ。仮に傷を塞ぎきっても時間がかかり、出血多量になるだろう。なんにせよ数分後には死んでしまう。


「ぐぞっ、じんでたまるがッアアアアッ、、、、」


 人形の糸が切れたように男は動かなくなった。


「・・・ふぅ」


 リアは傷を抑えて応急処置を施す。先ほどの男の攻撃は当たっていた。当たっていたが、当たること前提で動いていたため問題ではなかった。


 傷を負うことを恐れずに立ち向かった成果として勝利を収めたのだ。


 しかし、まだ全てが終わった訳ではない早急に市民の安全を確認しなければならない、敵がこの男だけとは限らないからだ。


「団長はどこにいるのかしら?」


 リアは一目散に飛び出してきたためラスティナの行方を知らないままだった。というかあの時飛び出さなければリアも同様に足止めを食らうことになっていたのだがそれは知るはずもないことだった。


「そうだ、、まだ終わってねえ」


 もう聞きたくもない声が聞こえてくる。


「俺はまだ死ねねぇ、死にたくねぇ、この世界の支配者として選ばれたんだ!こんなカスのクソの騎士になんか負けるわけがねぇ、負けちゃならねぇ」


 なぜ生きてるのかリアにはわからなかった。完全に致命傷だったはずだ。


 よく見ると男の身体は木片や瓦礫が埋め込まれている。


「つくづくこの力は素晴らしいものだ。地面に散ってる破片に身体の組織としての役目を与えた。血が少し足りねぇが腕輪の魔力で動くことはできる。ククッ残念だったな。」


 すでに満身創痍のリアにとって腕一つで無数の凶器を作りだす男に勝つ術はもはやどこにもなかった。


「もう終わりにするさ、絶望を抱かせてな!」


 街中の瓦礫が2、3箇所に集まっている。それらはやがて一つの大きな存在となる。


 瓦礫の巨人、まさにその通りである。動くたびに一部が崩れまた形を成し、体を振れば石の雨が壊れていない民家を襲う。


 リアは完全に折れた、こんな巨大な敵をどうにかすることはできない、おそらくこの騎士団の誰もだ。ここであの男を倒してもこいつは止まらないだろう、あの腕輪は役目を与えるだけで(具体的な操作はできないことはないが)後は勝手に動くのだ。


 終わり。万能の王が死んでたった5日で国が滅びようとするなんて、、


「何が守護騎士よ。結局守られていただけじゃない」


 非力さを嘆く、自分は努力し選ばれたのだと思っていた。自分の力なら誰でも守れると思っていた。


 しかし違った、努力は無意味で誰も守ることはできず、今の今まで巣の中で守られてきていざ飛び立つと圧倒的な力の前にただただ羽根をむしられる結末、涙が出る。もう立ち上がることはできない。


「惜しかったが形勢逆転だ、もう折れちまったみたいだな。敗者は大人しく巨人に踏み潰されて死ね」


 男は去っていった。リアはへたり込んだまま崩れゆく今日をただ見ていた。


 絶望しか残らない気がして、今はもう明日が来るのが怖かった。


読んでくださった方、ありがとうございます。作者のカワノタミです。今回バトルシーンを描いたのですが、いかんせん戦闘の描写は難しいものですね。また見てくださいね

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