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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

インカ:帝国の逆襲

作者: 登録情報がありません

この物語は短編のため、新大陸における天然痘などの伝染病の大流行を押さえた「人痘」の描写や巨石文化を利用した製鉄技術開発の描写を大幅にカットしました。なお作中の地名や人物名は現在の呼称です(ロス・コロラドス鉱山など)。

フランシスコ・ピサロはトゥンピスの港から南下、ピウラに至った。

手勢はたった180人、馬は37頭しかない。


彼が向かうのは人口1200万人を擁する巨大帝国インカであった。


一方、インカの皇兄ワスカルと皇弟アタワルパは内戦中であった。

正室の嫡子ワスカルと側室の庶子アタワルパの王位継承権争いだ。


1532年。

キトでの戦闘で皇兄ワスカルを破った皇弟アタワルパは、クスコへの帰途についた。

その帰路でカハマルカの県都カハマルカに、80000人の兵士と供に留まった。


その情報をピウラで聞きつけたピサロ。

「距離にして316km、急ぐぞ!」


なんと北部アンデスの山地帯パラモを踏破して、2週間でカハマルカに到着した。

ピサロと180人の兵士が全兵力だ。


だが予想外の展開がピサロを待っていた。

インカ皇帝と供にいたのはムーア人だったのだ。


ピサロ「ム、ム、ムーア人がなぜここに!」

ムーア人とはスペインに住んでいたイスラム教徒だ。


スペインでは、レコンキスタでイベリア半島を追い出されたムーア人たち。

英雄エル・シドの仲介も空しく、放逐されてしまった。


ムーア人「……新大陸をスペインの勝手にはさせん」

彼らは、スペイン人に敵愾心を燃やしていた。


1492年にコロンブスがアメリカを発見すると、すぐさまムーア人は追従した。

スペイン人は西インド諸島を経て、メキシコに西進。


1493年、ムーア人は南進して、ブラジルを発見。

ブラジルのインディオと通商を持った。


1500年スペイン人やポルトガル人がブラジルに相次いで漂着。

上陸はさせず、正しく航路を訂正して送り返している。


ムーア人はさらにアルゼンチンを発見、ブエノスアイレスに首都を置いた。

やがて彼らはそこで、行商人からインカ帝国の存在を知る。


1505年ムーア人は、アンデス山脈を越えてペルーと通商を始める。

なんとしてでもスペインより先に、インカと外交を結ばねばならぬ。


ムーア人A「スペイン人の征服速度は予想以上に速い」

ムーア人B「イスパニョーラ島、キューバも陥落した」

ムーア人C「エルナン・コルテス、ヤツは危険人物だ」


すでにスペインはキューバを征服、インディオを奴隷化していた。

ユカタン半島は風前の灯火であり、アステカ征服を覆す事は不可能である。


だがスペインがメキシコに躍起になっている事で時間稼ぎが出来る。

インカ帝国へのスペイン到着は~1532年頃と見積もられていた。


当時のインカ帝国は皇父ワイナ・カパックの治世である。

文字がなく、情報伝達はキープというヒモであった。


覚書が作れないため、詳細を伝えるには実際に会うしかない。

ムーア人は貢ぎ物を携えて。首都クスコに向かった。


途上、ワイナ・カパックはキトに滞在してる情報を得た。

スペイン人はこの時すでにパナマにまで達していた。


皇帝は、北方の要キトを要塞都市とするため、視察に来ていたのだ。

ムーア人「我々の危機感は共通で一致しています」


ムーア人はちょっと誇張して戦争を物語風に語った。

イベリア半島でのスペイン人の悪行と蛮行を語った。


インカ人は話半分で戦争の話に聞き入っていた。

インカ人では行商人ポチテカが諜報機関であった。


メキシコのアステカからの間諜の報告がすでに耳に入っていた。

ムーア人の物語は、アステカでのスペイン人の悪行と蛮行と一致していた。


アステカは征服され滅んでしまうだろう。

その魔手はやがてインカにも向けられる。


ワイナ・カパック「我々はそうはならんぞ!」

「どうすればいいか、教えてくれ」


ムーア人は続々と技術者と図面を持ち込み、武器を現地生産した。

ロス・コロラドス鉱山で鉄鉱石が、アタカマ砂漠で硝石が産出する。


アフリカ式塊鉄炉で錬鉄を精製し、銃や大砲を製造した。

現地調達の硝石は、火薬の原料となった。

ケジャベコ銅鉱山からは弾丸の銅が産出した。


一方スペイン人は、メキシコのアステカ帝国を、その毒牙に掛けようとしていた。

1525年、アステカ皇帝クアウテモックは絞首刑となり、帝国は滅亡した。


この時すでにインカの武装は一変していた。

石斧や弓や投石は銃に、投げ槍は大砲に取って代わった。


こうして今、完全武装の80000人の武装兵士が県都カハマルカにひしめいていた。

さらに要塞都市の外観は稜堡式城郭のそれに変貌していた。


ピサロ「は、話が違うぞ」

皇弟アタワルパ「きゃつを馬から引きずり降ろせ」


馬から引きずり降ろされたピサロは人質となった。

輿からインカ皇帝を引きずり降ろすハズが、これではあべこべだ。


スペイン兵もすべて降伏し、捕虜となった。

ピサロは宮殿の床に伏して、服従のポーズをとった。


ピサロ「い、命ばかりはお助けを……」

アルマグロ「ピサロの命に従っただけで、私は無罪です」


ピサロ「なんだとこの裏切り者!」

アルマグロ「勲功の独り占めをスペイン王室に告訴する!」


皇弟アタワルパ「ああ、やめい、この期に及んで仲間割れか」

皇兄ワスカル「弟よ、ちょっと話がある」


皇弟と皇兄は、長い間話し合っていたがまとまったようだ。

侵略者のスペイン人の組織と規律は、盤石の備えではない。


ピサロは爵位と権力、支配地の分配を自分のいいように解釈していた。

アルマグロはピサロに利益、権利、権威、統治で不満を募らせていた。


この確執を利用して、インカ側にまずアルマグロを取り込む事に成功した。

アステカを占領したスペインのヌエバ・エスパーニャ福王領。


これを奪還し、アルマグロを福王として統治を任せた。

勿論これはインカ帝国の傀儡政権である。


その後ピサロを伴って皇兄ワスカルはスペインに渡った。

スペイン国王はカルロス1世、国王に謁見するためである。


インカ皇帝を捕虜にした凱旋帰国と誰もが思ったろう。

だが、現実はその逆であった。

ピサロが捕虜なのだ。


1535年、英雄ピサロが凱旋帰国。


インカ皇帝と、捕虜10000人を貨物船に満載しての帰還である。

その実はインカ挺身隊10000人の機械化部隊の侵略であった。


カルロス1世は自身の宮殿建設に国費を費やして金欠だった。

新大陸の財宝は喉から手が出るほど欲していたのだ。


カルロス1世「財宝は?黄金はどうした」

ピサロ「貨物船が沈むほど満載してございます」


カルロス1世「皇帝は軟禁して身代金をとれ」

ピサロ「捕虜は如何いたしましょう?」


カルロス1世「グラナダの奴隷市場で売り払え」

その刹那であった。


一発の銃声が鳴り響き、カルロス1世は倒れた。

インカ挺身隊10000人が一斉に蜂起し、宮殿は占拠された。


こうしてスペイン王朝はインカ帝国のモノとなった。

だが王政は、国王を挿げ替えて、収まるモノではない。。


欧州の国家は複雑な婚姻関係の上に成り立っていた。

その最たるモノがハプスブルグ家の血脈であった。


カルロス1世は婚姻政策の結果、ハプスブルク家の血脈を継いでいた。

その血脈がスペイン-ハプスブルク家なのだ。


その血脈は息子のフェリペ2世に受け継がれている。

彼はわずか8才で王位に即いた。


もちろんインカ帝国の傀儡政権である。

日の沈まない帝国スペインはインカ帝国の植民地となった。


ピサロは本国では裏切り者扱いのため、新大陸に戻った。

キューバの統制官が新しい彼の地位であった。

以上は、私が南蛮人から安土城大広間で、そのまま聞いた異国の動静である。

堺の港にも多くのインカ人が訪れている。

これは偽りの情報ではないだろう。

1576年。

織田・アリー・信長記す。

実はカルロス1世は生きていますが描写では倒れたとぼかしています。彼がいないと後年の宗教会議や宗教論争が破綻してしまうからです。織田・アリー・信長は父・信秀の継室の土田御前はシリア人二世だったという設定です。国際結婚だったというワケです。スペインへ進攻する際の戦略も上陸作戦と宮殿包囲戦を「宮殿は占拠された」で大幅にカットしています。

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