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夢で見た景色  作者: Sikino
8/11

21歳、時間

前回のあらすじ

 ついに力を失った。

 特に感慨深くは無い。

 私が死んだからだろうか。

過去を切り捨てるのは、とても辛い事だと思う。最も悲しいのは、それを辛いと感じないことだが。



あの人は「この世界からズレる」と言っていた。

まぁ、色々起きたが、その中のひとつを紹介しよう。




その日は、飲み会に遅刻しそうだった。


寝坊したのではない。

無慈悲な大渋滞である。


目的地は距離にして35km程。そしてこの先10km程は大渋滞。

残り時間は後10分。

もはや手遅れである。


幹事に遅れる旨を連絡する。


「もしもし、遅れるわー」


「今どこ?あぁ、県庁前か」


丁度、県庁前の時計の鐘がなる。時間によっていろんなメロディーが流れるタイプの奴だ。


「おっけー1時間遅刻ね。」


「30分でいけるんじゃね?」


「無理だよ。その先事故があって完全に止まってる。俺迂回したけど、その迂回路も今は詰まったらしいよ」


「マジか」


「あ、じゃぁ、1時間でも無理か、2次会参加も厳しいかな」


「出来るだけ急ぐわー」


「頑張れー。どうしようもないけど」



その後、たしかに10分間車は一切動かなかった。


しかし、予想に反して、その後すぐに車は動き始める事になり、

混んでるとはいえ、普通に走れるレベルにまで落ち着いた。

これなら40分後くらいには着くのではなかろうか。


私の期待に答えるように通行量は徐々に減り、


そしていつのまにか1台も居なくなった。



どうしてこうなった。



おかしい、

一本道で、真っ直ぐ走ればいいだけのはずなのに、

いつの間にかオフィス街が消え、右手には田んぼ、左手には木造平屋の、

全く見知らぬ場所に来ていた。

道には街灯も無くなり、自分のヘッドライトだけが唯一の明かりになっていた。

周囲を見回しても、町の明かりは一切無い。ただ遠くに山のシルエットが見えるだけである。


おかしい、

目的地まではずっと街中を走るはずである。

明らかに道が違う。しかもこんな場所は知らない。


とりあえず、幹事に電話する。

ハンズフリーは持ってるが、一度車を止めた方が良いだろうと、路肩に寄せようとした。

しかし、歩道が砂利なのに気付いてやめた。


なんとなく、だけど、

この車道から出てはいけない気がする。

それと、止まってもいけない気がする。


と言う事で、時速5kmくらいまで落とし、電話をかける



「もしもーし。」


「おう、進んだ?」


「何かめっちゃ進んだ」


「へーおめでとう」


「で迷った。」


「いやいやいやいや、一本道なのにどうやって?」


「いやー真っ直ぐ走ってただけなのに、マジ凹むわー」


「周りどんなところ?」


「右手が田んぼで、左手が木造平屋がちらほら」


「それおかしくない?だって、その」

「ウェーイ!主役は遅れて登場!」


向こうもハンズフリーで離していたから、後ろの人の声が入る


「ちゃらい」


「ちゃらいな」


「バカだな」


「バカだよな。んでなんだっけ?」


「道に迷った」


「まぁ、真っ直ぐ走ってればそのうち着くんじゃないかな?少なくとも知ってる道には出るでしょ」


言われてみればそうである

この周囲の道路は知ってるから、真っ直ぐ走ってればどこかにはぶち当たるはずだ


「なるほど。そだな」


「あ、飲み会は14分スタートで40分になったから。混んでて変更できなかったわ」


「終わる前には着けそうだな」


「ガンバレー」


そうと決まれば真っ直ぐ走る。

しかし暗いな。どうせ対向車も無いしハイライトにするが、

それでも、スピードを出すと怖いほど先が暗い。

出来るだけ急ぎたい気持ちと、でも安全第一な気持ちでやきもきしながら進む。


しかし、左手に散発的にある木造平屋だが。

人の生活の気配はあるのに、何で全部真っ暗なんだ?

日が落ちて1時間程度だから、寝るには早すぎるし、全部が全部は不自然だ。


急ぎたいけど、気になって仕方ないので、速度を落として、家の様子を観察する。

古めかしい木造だが手入れが行き届いていて、ちゃんとした家だ。



一瞬窓の暗がりが動いた。

やはり誰か居る?


車を止めてはいないので、

前方にも気を付けつつ、窓を注意深く観察する。



暗幕か!


全ての家の全ての窓に暗幕が引いてあるのだ。


なるほど。奇妙な風習だけど、謎が解けたわ。

安心して速度を上げる。


・・・


しかし、こうやって町ぐるみで灯火規制しているのに、

私は思いっきりハイライトで走っていいのだろうか・・・

なんだか、ものすごく いけない事 をしているような気がしてきた。


ローに切り替える。


いや、ローも切った方が良いか?

実は月明かりで切った方が良く見えるとか、



速度を落とし実験する。

一度ハイライトで前方に何も無い事を確認してから、

ライトを切る。


無理。


即座にライトをつける。


うっすら見えるが、暗すぎて危険。

仕方ない、ローで我慢してもらおう。

あまり速度は出せないが、もう間に合う気がしないしいいや。



そうやって20分ほど走る。


相変わらず暗い道のままだ。

流石に不安になってきた。

今現在、自分がどの辺にいるのかまったく予想がつかない。


また速度を落として、幹事に電話する。



「もすもーす」


「   」


「あれ?もしもし?」


「   」


返事が無い。通話中にはなっている。

ポケットに入れた状態で偶然通話になったのか?


「もしもしー?」


「ザザッ」


雑音の反応があった。電波が悪いのか?


「おーい」


「ザッ   ザザッ」


「誰か応答してクレー」


「ザザーッ この ザッザ」


一瞬何か聞こえた


「あ、もしもしー?」


「ガッ ブツッ」


切れた・・・


圏外になってるじゃねーか・・・


仕方ない。真っ直ぐ進むしかない・・・




しかし、それからすぐに、遠くに1つの明かりが見えた。


街灯だ!


まさに一筋の光明!


近づくとやっぱり街灯。そして更に先にも光源が!


どうやら謎の暗闇地帯は抜けたらしい。

徐々に間隔が短くなっていく街灯。


そしていつの間にか、よく知ってる道を走っていた。

そして、いつの間にか、そこそこの交通量があり、周囲には他の車も走っていた。

真っ直ぐ走っていただけなのにいつの間に?


この場所は分かる、目的地まであと5分くらいだ。

さっき電話で14分から40分と言ってたから、終了は54分、今は45分くらいだから、

終了間際について、一緒に2次会に移動する事になりそうだな。

車は代行にするつもりだったが、丁度良く俺が運転手になればいいか。


後は何事もなく目的地に到着した。駐車場でちょっと戸惑い、時間は52分。

中に入って幹事の名前を言うと、テーブルに案内された。


「わりぃ遅れたー」


「お、おぅ?」


何故か戸惑われる。


「そろそろ時間だろ?2次会の場所は決まった?取り合えず一旦出る?」


「何で?」


「いや、時間だろ?」


時計を見る、54分だ。


「14分スタートで、40分だろ、54分までじゃん」


「お、おぅ。そうだけど」


「じゃぁ、出なきゃ」


「何で?」


なにか微妙にかみ合ってない。


「え、そもそも、14分スタートとか何で知ってるの?」


「電話で聞いたじゃん」


「誰に?何時?」


「幹事に。15分頃かな?」


「それは無い。ごめんちょっと意味が分からない」


「いやいや、他に誰に聞くんだよ」


「ちょっと待て。落ち着けって両方とも」


こういう時は頼りになるリーダーの仲裁が入った


「えっと、15分頃に電話で54分に終わるって聞いたんだな」


「あぁ、そうだよ」


「いや無理じゃん」


「まぁまぁ、それで、今何時?」


時計を確認する。56分になった。


「56分だろ?」


携帯の表示も確認する。56分だ


「スマンが、後ろに時計があるからそっちを見てもらえないか?少しずれているようだ」


「多少ずれたところで」


柱時計を見る。


12分?


「いや、これおかしいだろ」


もう一度自分の時計を見る。


12分?


「そんなバカなさっきまで」


「54分って電話で聞いたの何時だっけ?」


「15分ごろ・・・」


「そう、俺らはその電話受け取って無いんだが」


「でも確かに・・・」


「本当は既に着いてて、脅かす為に隠れて聞いていたんじゃないか?」


「一応、通話履歴残ってるんだぜ、ほら」


そこには未来の通話履歴が残っていた


「俺の携帯には着信履歴無いんだけど」


幹事の携帯には履歴が無いようだ


「すごい!どうなってんだこれ」

「携帯の時刻を変えた後に通話して元に戻せばいける?」

「いや、発信じゃなくて通話だからこっちにも履歴が残るはず」

「消せば?」

「全消しは出来ても一件だけは出来ないんじゃないか?」

「同じ名前で登録した人にかければ偽造できる?」

「それなら電話番号が合わなくなるだろ」


理系なので、こういうことには違う意味で食いつく


「その時他に何聞いた?」


「あぁ、丁度チャラ男が到着してたな「主役は遅れて登場!」みたいな」


「めっちゃ言いそう!」


「でもハズレー。今日はお休みで~す。彼女とデートだって」


「爆発すればいいのに」「爆発すればいいのに」「爆発すればいいのに」


意見が一致した。


「じゃぁ、やっぱり夢でも見てたんだろうな」


「運転中にか、上級者だな」


「運転と言えば、こいつ10分前に県庁前にいたはずなんだが・・・鐘聞いたから間違いない」


「30kmとちょっとを10分・・・時速180km?凄い!」


「マッハで来るっていったろ?」


「マッハって1000km超えてたろ」


「マッハ0.1で来るっていったろ?」


「何それ早くなさそう」


「ちょっと待って!!!」


「どしたん?」


「そろそろ、お前から電話かかってくる時間だぜぇ」


「なるほど!携帯出して!どうなるかな?タイムリープで過去からかかってくるのかな!」


「俺ここにいるのに?」


「早く早く!後5秒!4!3!2!1!」


「・・・何もおきねえな」


「いや待て!後60秒ある」


・・・・


「何もおきねぇじゃねーか!」


「いつの間にか着信履歴とかは?」


「いや、無い」


「ハズレかー、ちょっと期待したのになー」


「ウェーイ!主役は遅れて登場!」



「 」



「あれ?何この空気。せめて突っ込んで」


「お前ら組んでるだろ!」


「え、何が?」


「着信は無いよ!」


「何の話?」


「最初から説明してやろう。でも取り合えずビーーール!!」


「そうだったカンパーイ!」




こうして何故か私は飲み会に参加できた

この後、店側の手違いでダブルブッキングが起きており、

私たちは10分早く店を出たのだった


「しゃー2次会はー たまたま を 突き に 行こうぜぇ~」


「言い方!ビリヤードか!いいね」


「あ、ここ一晩車止めていいらしいから、明日の昼に皆で取りに来よう」


「じゃぁタクシー呼ぶわ。幹事、携帯貸して?」


「チャラ男なんで携帯持ってねえの?」


「彼女の部屋に置き忘れてきちゃった」


「爆発」「爆発」「爆発」


「あ、電話だ」


丁度、幹事の携帯に電話が掛かってくる


「こいつヤバイ!登録名が空白なんだけど!」


「未登録?知らない人?」


「その場合電話番号が出る。つまりー、名前を隠してる相手って事だ!」


「女か!」「女だな!」「え、心当たりが無いんだけど」


「あ、もしもしー」


普通にチャラ男が通話し始める


「何ででてんだよ?お前ー!!」


「心当たり無いんだろ?まぁまぁ落ち着けって」


「もしもーしとか言ってる、誰だろ?」

「あれ?この声・・・」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


チャラ男がいきなり携帯を地面にたたきつけた


「ああああぁぁぁぁ」「それは無いわー」「引くわー」


「い、いま、お前の声が聞こえた」


「そりゃぁな」


「いや、違くて、携帯から、お前の声が、お前今しゃべって無かったのに、」


「何言って・・・あぁぁーー忘れてた2回目の電話!」


「あ、そういやそうだった、時間は」


「こっちの通話履歴の時間と一致するな」


「一回目の通話履歴もいつの間にか増えてるんですけどぉぉぉ!あの時無かったよね!無かったよねぇぇ!」


「何それ、その携帯キモイ。呪いか!?画面割れたし」「何か不幸の電話かかってきそう」


「あ、そっか、そういやこっちの携帯もヤバイか?」


「お前のは根源だからセーフだろ」


「なるほど。えっ?」


「携帯買い換える・・・」


「俺が投げたんだしちょっと出すわ」


「明後日ショップ行くか」


「ねぇ、こっちは?こっちもやばくない?」


「ヤバイのはお前だから諦めろ」


「 」




この日はこれで終り。



仲間内の適応力が異常に高いのは、

この事件の前に、私が同時刻に複数の場所に出現するドッペルゲンガー騒ぎがあったり。

私の部屋にいると、たまに時計の針が逆回転しているのを目撃していたりしたからです。

もう慣れたのでしょう


「この世界からズレる」は主に時間のズレとして現れました。

しかし、「そのうち落ち着く」と言う言葉通り、これを機に時間の異常は収束します。

そして同時に、その影響よって起きた事に対する認識も急速に薄れるようでした。


まるでこの世界には存在して無かったかのように。



そうやって全ては過去の夢として消えてゆくのです。

仮に過去に戻っていたとした場合、

問題なのは「いつの時代に行っていたか?」です。

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