表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢で見た景色  作者: Sikino
7/11

19歳、死期

前回のあらすじ

 命を懸けた助け合いは私の敗北で終わる

 

祝福と呪いは紙一重だと思う。



どうやらここまでのようだ。

全身に力が入らない。

いや、徐々に力が抜けていく。


思い返せば、ここ最近は異常に不幸の連続だった。

交通事故だけでも6件だ。

それ以外にも、仮設の足場が崩れたり、看板が外れて落ちてきたり、色々あった。

包丁が首めがけて飛んできた時は流石に笑った。


そんな中、今まで生き残れたのは、彼女が残してくれた物のおかげだ。

それと、ただ運が良かっただけだろう。

あの日以来、私は予知のような物ができるようになっていた。


発動条件は二つ。

1、今後の人生に重大な影響を与える出来事が起きる数秒間だけが予知の対象になる。

2、その時と同じ場所で全く同じ行動をとらなければならない。


つまり、死ぬ直前と全く同じ行動をすれば、

未来と重なる既視感のようなものが発生し、未来に起きる事を追体験できるのだ。

ただし、「同じ行動」は普段から行っているような行為ではダメで、

例えば、「歩く」とか、癖で「指を鳴らす」とかではなく、

「靴紐を結ぶ」等の変わった動作が必要なのだ。

更に、見た未来がいつ起こるかはわからない。

ただ、実際にその時になれば、今度は逆に過去と重なるような既視感が発生するので、

今がその時だとは確信できる。


普通に考えれば、全く使い物にならない予知である。

事故の直前に、たまたま普段とは違う行動を取っていだけでも珍しいのに、

それと同じ行為を同じ場所でする奇跡を要求してくるのである。

発動条件が完全に運で、しかも時間が短すぎる。

そして、おそらく、見た未来は確実に訪れるため、そもそも事故を未然に防ぐことは不可能。


唯一利点があるとしたら、

死ぬ未来が見えるのではなく、死を回避する未来を体験できる事だ。


包丁の時は、友人宅でテスト終了祭を開いて、つまみを用意しようとしていた時だった。

落ちているカードを何だろうと拾い上げた瞬間に既視感が発生した。

キッチンで友達が躓いて、机に掴まったつもりが、まな板をつかみ、

それが机からはみ出している部分だった為に、盛大にひっくり返り、

上に乗っていた包丁がカタパルトのように射出されてきた。


横に逃げる?後ろに逃げる?何かでガードする?

正解は、「前進しながら包丁の下を潜り抜ける」


刺さって終了。を見ただけならそんな発想は無かっただろう。

映像として見ただけなら、実際に対面した時、一瞬躊躇し、間に合わないだろう。

でも、まるで何百回とこなしてきたルーチンワークのように、

無理なく回避することを一度「体験」していれば、

過去と重なるような既視感が発生した時点から、まるで反射のように体が動く。

条件は厳しいが、条件さえ合えば、自分に可能な手段で100%回避できる。


正直、包丁程度なら当たり所がよっぽど悪く無い限り死にはしない気もするが、

「脅威」も感じたし、何かあるのだろう。失敗した未来はどうなるかわからないのも、ある意味欠点か。


包丁はまだ危険な感じはしないが、交通事故の方は全力で殺しにかかってきた。

サイドミラーを拭こうとした時の事に既視感が発生した、

対向車が中央線を超えてまっすぐこっちに向かってきて、

私が左を抜こうと加速したら、

追尾するかのようハンドルを切って迫ってきた時は流石に理不尽すぎて怒りすら覚えた。


事故後、現場検証に来た警官の第一声が、

「バイクの方はもう病院に運ばれました?」だったのには笑ったが。

ブレーキ痕だけ見れば完全に即死コースだから仕方ない。まさか無傷とは思うまい。



そうやって危機を、ある意味異常な幸運で回避してきた私が、

今、何故死にかけているのか。

実は未来を見れなかったわけではない。

今回は回避しようがなかったのだ。


どういう原理か知らないが、

今私に迫る脅威は、、

おそらく最適な表現だと「老衰」だろうか。

半日かけて緩やかに生命活動が停止していく。

これはどうしようもない。


結局のところ、やはり私はあの時死ぬべき運命だったのだろう。

それを、彼女が捻じ曲げて生き残ってしまった。

ここ最近の不可解なほどの不幸は、

「あるべき姿」に戻す修正力のようなものだったのではないだろうか。

だがそれすらも限界で、もうなりふり構わない最終手段に来たのかもしれない。



今はもう起き上がることすら出来ずに、ベットに横たわったままだ。

指の隙間から、水がすり抜けて行くように、

活力を、体内に維持できなくて、体外に流れていってしまうような感覚。

まるで、ベットで命が濾し取られていく様な。



時間の感覚があやふやだ。

気付けば外が暗い。

不思議と恐怖は無い。

苦しみ無く死ねそうなこの状況は、呪いなのだろうか、祝福なのだろうか。



祝福ってなんだろうな。



ドアが開く。

誰か入ってきた。

3人の友達。


学生寮だから、隣の部屋の人が、心配して?


「早く行こうぜ!」「さぁ、早く!」「早く行こうぜ!」


何故満面の笑顔?何の話?


「早く!早く!」


遊ぶ予定無い。はず。それに。もう。無理。


「いいから早く!」「早く!」


妙だ。ドアの外。廊下が。明るすぎる。

壁や。床が。光っているような。


「もういい。連れてく?」「そうだな」「行こう!」


「まて!」


もう1人。誰だろう。懐かしい。


「こいつは俺の管轄だ」


「早く!」「早く!」


「先に行ってろ。後は俺に任せろ。」


「わかった」「早くしてね!」


出て行った。


「さて、時間がなさそうだ」


誰?先輩?


「そうだ、今、危険な状態だ」(先輩の声)


先輩じゃない。先生?


「これで良いか?それで」(先生の声)


先生じゃない。以前どこかで。

たしか「誰でもある」人。


「そういう認識は初めてだな」


信頼できる。人。


「ではこのまま行く。時間が無い。まず、運命を信じるか?」


運命は。なるべき形。火がついた物が。燃えるような。燃え尽きるような。


「話が早い。それで、お前は死ぬべきだ」


知ってる。


「だがxxxxxxxxxx」


聞こえた。日本語だった。意味不明な。音の羅列ではなかった。

でも。意味が。理解できない。


「あぁ、概念が無いのか、う~ん、なんと表現すれば、被害、補償、」


どうせ。もう終わる。


「まずい、本当に時間が無いな」

「とにかく。俺はお前を助けることにした」

「まず、お前は死んだ事にする。これで死ぬ運命は回避できる」


彼が。右足に触れる。

右足の。感覚が消えた。


「この影響で、お前はこの世界からズレる」

「運命の歯車が外れて浮くようなイメージか。だが、一時的なものだ」

「そのうち隙間に入り込んで落ち着くはずだ」

「それと、死ぬのと同時にお前のxxxx。えっと『力』は消える。だが、どの道もう不要だろう」


・・・


「礼はいい。俺はお前をxxxxx。あー、気に入ったんだ」


・・・


「じゃぁ、俺のxxxxはここまでだ。あとは頑張れよxxxxx」


・・・





翌朝

いや、翌日の夕方か。


目を覚ました。

生きてる。


まだ、体に力が入らないが、生きてるし、

何かが流れ出て行くような感覚も無い。


どうやら助かったようだ。

いや、助けられた。


昨日の出来事を思い出してみる。

途中から、頭がうまく回らなくなって、流されるままだったが、

思い返すと色々とおかしい。


まず、私の部屋に来た友達3人は偽者だろうな。

死神か天使か知らないが、死を迎えに来る系の存在だろう。

とてもさわやかな笑顔だったが、一切感情を感じない無機質なロボットのように感じた。

友達の姿をとっていたことからも、外見は死者によって変わるのだろうか。

もしかしたら天使でも死神でもある存在なのかもしれない。


そして彼らが入ってきたドア、

外の廊下は、形状はいつもの廊下だったが、一面真っ白で光源がどこにあるのか分からなかった。

全ての物がそれら自身で発光してるように眩かったが、

神々しいというよりは、3人と同じく、非常に無機質な感じがした。

あそこは別の世界なんだろうか。

私の部屋のドアが異世界に通じているというより、

ドア付近の空間が異世界と重なっていたような感じがした。

あの時、実際には、ドアが開いている光景と、ドアが閉まっている光景がダブって見えた。

片方の目の前に手のひらを持ってくると、手のひらとその向こうの光景が同時に見えるように、

どちらもそこに存在しているかのようだった。


私を助けてくれたあの人は、

前に一度会っている気がするんだが、

どこだったか思い出せない。

ただ単に知人に変身するんじゃなくて、

最初からそうであったかのように過去にさかのぼって別人に切り替わる。

時空を超越でもしてるのだろうか、仕組みが全く理解できない。

・・・何気に私の心を読んで会話してたし、もはや何でもありだな。

とにかく、あの人は信用できる人だから。きっと助けられたのだろう。


たとえ、今、私の右足があやふやな存在になっていたとしても。


うーん。コレはどう表現した物か・・・

存在はしているけど、希薄というか・・・

いや、右足だけ異世界に突っ込んだままの状態から徐々に戻ってきている感じだろうか?


右足だけを死者として持っていかれた?そして今回復中?

いや逆に右足に次元を超える力を打ち込まれたために、一度死んでも蘇った?そして今余剰分を放出中?


うーん全然わからない。

今の私には、超常的な存在を感じる事が出来ない。


あの時の彼の言い方から、一時的なものじゃなくて、恒久的なものかもしれない。



よし。とりあええず、寝よう。


まだ、体力は回復しきっていないどころか、非常に疲れているし、

危機は去ったみたいだし。

まずは回復してから・・・





翌朝、右足は元に戻っており、

私の「意思」を感じる感覚は、やはり無くなっていた。

おそらく、死の危機を回避する予知も出来なくなっているだろう。

だがもう、死の危機はそうそう訪れないだろうから、それでいいのだ。



これで、私の不思議な体験は終り、一般的な日常が始まるのだった。






と思ったら大間違いだ。

終りが見えてきた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ