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夢で見た景色  作者: Sikino
6/11

17歳、運命

前回のあらすじ

 「怨念がおんねん」

 「嘘つきめ!呪ってやろうか?」

 どっちが悪霊なんだろうな

不安や心配は杞憂だ。問題無いのではない。受け入れるしかないからだ。



失敗したと思った。


初めて喫茶店とやら入った。

通りに面する部分が一面ガラス張りの、

明るくて、お洒落で、大人の世界って感じのところだ。


コーヒーの種類なんて良く分からないが、一番普通そうなやつを指差せば、注文は何とかなった。

時間が時間で混雑してはなかったので、窓際のいい席に座り、

ぼんやり外を見ながら、コーヒーを飲む。


溶け込めていると思う。


何が失敗かって?

気取るのが疲れる。

それと、カフェオレっぽいのを頼んだつもりが、カフェラテだった。

オレとラテの違いを始めて知った。


背伸びするものじゃないな、公園のベンチでジュース飲んでる方が性に合っている。

そして私はコーヒーより紅茶派だ。


不味くは無いが趣味ではないコーヒーを飲みながら、外行く人を見る。

外は雨が降っており、傘を差した人が時折通り過ぎる。


白い傘、黒い傘、赤い傘、黒い傘、黄色い傘、

そういった物が左から右、右から左へと流れていく。


さっさと飲んで出よう。外で時間をつぶそう。

そう考えていると、ひとつの白い傘が目に止まった。

何故か思わず見入ってしまった。


その白い傘は、左から来て公園の入り口辺りで一瞬とまり、

また右へ歩き出し、少し進んだらまた公園入り口に戻り、

少し悩んでいるようにウロウロした後、

再度ゆっくり右へ歩き出し、

また止まり、

長考した後、今度は走り去るように右に抜けていった。


確実に公園入り口になんかあるな。


私はコーヒーを一気に飲み干し店を出る。

まだ夕方だが、分厚い雲で夜のように暗く、

店に入る前より雨は強くなっていた。



公園の入り口に来たが、特に目立つものは無い。

人が倒れてたりするのだろうかと、不謹慎な期待をしていたが、肩透かしだったようだ。


狐に化かされたのだろうか。

いや、ただ単に道に迷っていただけかもしれない。

でも、一応警戒しておくか。


周囲を見回す。

特に危険は無い。危険は無いが、かすかに「困惑」の意思を感じる。

希薄すぎて位置がわからない。再度注意深く周りを見回す。

それでやっと気付いた。

少し離れた場所にあるダンボールに、あの白い傘の人の葛藤に。


子猫だ。

「拾ってください」のダンボール。

本当にこんな事する人が居るんだな。

しかも、よりによって雨の日に。

いや、昼までは晴れていたから、半日放置されてこうなったのだろうか。

ダンボールは完全に水を吸い、自重すら支えれずにひしゃげてる。

だいぶ長い時間ここにあったのだろう。


子猫は、鳴く力すら無いのだろう。弱々しいくしゃみをしているだけで。

降りしきる雨に邪魔されて、眠ることすらままなら無い様子だ。

人の気配を感じで顔を上げたが、私が見えていないようで、周囲をきょろきょろした後

泣き声を上げるようなしぐさをしたが声にならず、また丸くなってしまった。


すまない。どうしてやることも出来ない。

おそらくもう手遅れだろう。

せめて最後は安らかに眠ってくれ。


私はかばんからタオルを取り出し、かぶせた後、

傘を雨よけにそこに置いた。


「飼えないなら!・・・」


後ろで怒鳴られてびっくりして振り返ると。

白い傘を差した人が立っていた。

さっきの人だろうか。


「期待させて!・・・・・残酷よ!・・・・」


雨と傘で顔が良く見えないが、泣いているのだろう。

言葉に詰まって、うまく喋れていないが、

言いたい事はわかる。


捨てたのはこいつか?

私は本気で殴りたくなったが。

一瞬で考えを改めた。

この人がそうなら、確実に日を改めただろう。


「この子は・・・これ以上・・・・私だって!・・・・」


言いたい事はわかる。

彼女の判断は正しい。


「私は。タオルと傘を。『落とした』だけだ」


「そんなの!」


「もう遅い」


そう言ってダンボールの前から移動する。


彼女は、離れた場所から遠目にしか見てなかったのだろう。

その時初めて子猫の現状を知り、絶句した。


ここに長居はしたくないのでその場を離れる。


「私だって・・・でも・・・」


すれ違いざまに弱々しい声が聞こえた気がした。



その後は、

新しい傘を買わずにそのまま帰った。

共感や贖罪だろうか、そうしたくなったのと。

顔に雨が当たるのは都合が良かったからだ。




翌日、


私は公園のベンチでぼんやりしていた。


あの場所にダンボールはもう無い。


もう夕方だから、昼のうちに片付けられたのだろうか。

本当は朝来るべきだったのかもしれない。でも私には出来なかった。

今日は昨日とは違い、夕日に空が赤く染まり、とても明るく感じる。

今日であれば良かったのに。と考えずにはいられない。


あの場所にダンボールはもう無い。


私は公園のベンチでぼんやりしていた。



誰かが隣に座った。

知らない人だ。


「ありませんね。箱」


あ、昨日の白い傘の人か。


「拾われているといいですね」


「そうですね」


彼女は即座に笑顔で答えたが、

一瞬強い悲しみを感じた。


驚いてその方角を見る。

離れていて良く分からないが、ゴミ箱に茶色い塊が捨ててある。

ぬれて完全につぶれたダンボールのように見える。

信じられない。


「ごめんさい」


嫌な事に気づかせてしまった謝罪だろう。

うまく隠せなかったことへの。

いや、見た目には分からなかった。君は凄い。


「まぁ、中身だけが大事だからな」


少々苦しいか、


「そうですね」


返事はそっけないが、張り詰めていた物が緩んだような感じがした。

それから彼女は少し黙って、あの場所を見つめている。

だがそれは、喪失感に耐える顔ではなく、少しの悲しみを残した穏やかな微笑みだった

いい人に拾われて幸せになるのを想像しているのだろうか、

強い人だな。現実逃避ではなく追悼なのだろう。


しばらくそっとしておこう。


しかし、1分もせずに彼女は立ち上がった


「ありがとうございます。コレはお礼です」


折りたたみ傘だ。男物の。わざわざ用意したのだろうか。


「あ、私の分はあるんで大丈夫です」


「そうじゃなくて、別にいらないよ?」


「すぐに必要になりますよ」


私のそばに傘を置き、一礼して、足取り軽やかに帰って行った。


今日晴れなんですけど。降水確率0%なんですけど。

どうせなら雨の日にくださいな。

なんて、心にも無い意地悪な事を考えてると、

急速に雲行きが怪しくなり、本当に雨が降り出した。


早速折り畳み傘を使わせていただいた。

今頃あの子は勝ち誇った顔をしてるのだろうかと思うと、

何故か私もうれしくなり。

雨にぬれていない事を楽しみながら家路に着く。




翌週


私はまた同じ時間に公園のベンチでボーっとしていた。


「やぁ」


かなりダメ元だったが本当に再開できるとは思わなかった。


「この前傘ありがとう。何で分かったの?」


先週、私は天気予報の情報が古かっただけだと思ったが、

あの日傘をさしている人は1人も見なかった。


「感」


「感か」


「あなたも感は強いでしょ?」


「まぁ、少し」


第六感のような物だろうか?


それから少し世間話した。

猫は可愛い。犬も可愛い。犬派猫派で争うのはバカだ。

両方愛でれば倍幸せ。あ、でも小鳥も可愛い。

小鳥の外飼いしてみたいけど無理だろうな。

みたいな、どうでもいい内容ばかりの話。


彼女とは考え方や価値観が非常に似通っていて、

「生き別れになった双子の片割れ」だとしか思えないような人だった



翌週も同じ時間に会った。

週末の夕方に公園に行けば会えるようだ

習い事とかかもしれない



翌週、4回目の週末。


この日、彼女は一言も喋らなかった。


不機嫌なわけではなく、

ずっと難しい事を考えているようで。

結論が出たかのように立ち上がっては、それが不服かのように座りなおし、

また最初から別の道が無いか考え始める。

と言うのを繰り返しているようだった。


私は隣で大人しく待った。


彼女はたっぷり20分ほど悩んだ後、

ついにこっちを向いた。


どんな言葉が出るか戦々恐々としていたが、

彼女は相変わらず黙ったまま、私の頭の上に手を置いた。


その瞬間殴られたような強い衝撃を受けて私の意識はとんだ。





目を覚ますと、

公園のベンチで寝ていた。いつの間にか1時間も経っている。

寝てる間に何かとても重要な事を見た気がするが思い出せない。


頭を確認するが、たんこぶどころか、殴られた形跡は一切なかった。


何が起こったのか確認しようもないので、

この日は帰るしかなく家路に着く。


いつものルート、いつもの交差点。

歩行者信号が青に変わった



ーーー



 私は横断歩道を渡り始める。

 夢と現実が重なるかのような感覚。


 「バカな!この感覚は!?」


 慌てて車道を見る。


 回避したはずだ!


 あのトラックが来る。


 まずい。後ろを振り返る。


 彼女が居る。何故?


 「止めろ!こっちに来るな」


 私は叫ぶが。彼女は既に躊躇なく飛び出していた。


 私は彼女を押し返そうとするが、

 歩いていて急に方向転換した私と。

 助走をつけた彼女では勝負にならない。


 突き飛ばされた私の目には、

 彼女の心からの笑顔。


 そして、

 無慈悲にトラックが目の前を通過した。



ーーー


現実に引き戻される。

そこにトラックや彼女は居ない。

私を庇って轢かれた?

何だ今のは、幻覚か?


思い出した。

さっき公園で気を失っていた時に見た映像はコレだ。

そして、その舞台はこの場所だ。

コレは何だ?妙に生々しかった。


信号が点滅しているのに気付いて、

慌てて歩道に戻る


今のはなんなんだ?

警告?

にしてはいつもより表現が直接的過ぎる。

まるで予知のような


予知?

彼女の仕業か?


この一か月彼女と話して分かった事だが、

本人は隠していたが、彼女の「感」は本物だ。

おそらく、「状況を正確に把握してさえいれば結果が分かる」感じの能力だろう。

予知と言うより、驚異的な予測といった方が正しい。


だが今のは、今見た物は予測の範囲を超えている。


コレが本気なのか?

そしてどうやってそれを私に見せた?


いや、まて、まず重要なのは、その意味だ。

事故を回避する事が目的だろう。

今日はずっと、

その手段を考えていた?


そしてコレを見せたと言う事は。

この交差点を二度と使わなければ回避できるのか?


余りにも、わからない事が多すぎるが。

まずは遠回りしよう。


そして、もう一度彼女に会う必要がある。




しかし、翌週もその翌週も彼女は公園に現れなかった。


彼女の意図は分かる。

おそらく、会わない事が回避の条件の一つなのだろう。


しかし、私は毎週の日課を続けた。




3ヶ月が経ち、

ついに日課を止める決心をした。


元々、この町に来ていたのは塾に通っていたからだ。

その塾を今日辞める事にした。

最後の手続きを終え、最後の帰路に着く。


この町に来る事も当分無いだろう。


公園が見える。


・・・


しかし今は平日の昼間。


最後だが、寄らずに帰ろう。


そう後ろ髪を引かれながら

歩行者信号が青に変わるのを確認して、



ーーー



 私は横断歩道を渡り始める。

 夢と現実が重なるかのような感覚。


 「バカな!この感覚は!?」


 慌てて車道を見る。


 回避したはず、いや私が間違った、

 いつもと逆方向から歩いていたから、間違ってあの交差点に入ってしまった。


 あのトラックが来る。


 まずい。後ろを振り返る。


 彼女が居る。何故?ありえない!平日だぞ?昼間だぞ?

 3ヶ月間、一目見ることさえなかったのに、何故今ここに居る!?


 だが私には最後の手段がある、理論上は出来ても、絶対試さないと誓った最後の手段。

 それで全てを失おうともかまわない。

 彼女の為なら覚悟はいらない。



 『こっちに来るな』



 受信できるなら送信も出来る。

 私は限りなく強い意思を乗せて命令した。


 彼女は一瞬止まった。

 それで良い。出来てよかった。

 消耗が激しい。魂を削るというのはこんな感じだろうか。

 途方も無い喪失感で気を失いそうだ。

 だがこれでいい。


 「私の勝ちだ」


 私の目には、

 彼女の心からの笑顔。


 そして、

 無慈悲にトラックが歩道に激突した。



ーーー




バカな。何故。


私はよろよろと歩道に近づく、


朦朧として、意識を保てない。


変えたはずだ。


なぜトラックまで動きを変えた?


追尾するように。


変えられないのか?


トラックの前輪のそばまで来る。

誰かが叫んでいるが、もう良く聞こえない。良く見えない。


だが、1つ、そこに血のような色があることだけは分かった。


私は意識を失った





目を覚ました先は病院だった。



看護士が簡単なチェックをした後、


事故現場で倒れていた事。

体に異常は無いが、衰弱が激しかった為、点滴をしている事。

事故のことは無理に思い出さなくていい事を説明された。


もう一度眠り。

次に起きた時はすべてが終わっていた。


どうやら私は凄惨な現場を見て卒倒した無関係な通行人A扱いされたようだ。


私自身も、事故の事が受け入れきれず、本気で向き合う気になったのは2週間後だった。




私はあの交差点に来ていた。


花は添えられていない。


私は彼女が最後に立っていた場所に立ち、集中する。

彼女が最後に何を思ったのか、なんと言おうとしたのか、

それが知りたくて。



それは走馬灯のようだった。



「残す」彼女は私にサイコメトリーのような力があると信じ、メッセージを残した

「予測」彼女の能力は、将来をある程度正確に予測できるという物

「義務」常に完璧である事を求められているようで負担になっていた

「救い」あの日、完璧にこだわる価値はさほど高くないことに気付き救われた

「未来」私に未来が無いことに気付いた

「回避」事故を回避する為に最善尽くした

「転写」自分の能力の一部を私に移した。神移し?おそらく能力は変質する

「計画」最後の手段以外の計画は全て失敗した

「謝罪」出来れば二人で残りたかった。力不足でごめんなさい


最後に、最後の瞬間何が起こったかわかった。

あの時、私の『こっちに来るな』という命令は、彼女だけでなく、

周囲の人間にまで僅かな影響を与えた。

殆どの人は目をそらした程度だが、

寝ていたトラックの運転手は無意識にハンドルを切った。


彼女は私が躊躇無くその身を犠牲にし、

未来を捻じ曲げてでも自分を救おうとしてくれた事と、

それでも私を守れたことに心から喜び。

無邪気にこう言おうとしたのだった。


「私の勝ちよ」



そうして私の運命は終わらずに終わった。

脅威の感知は出来ても、

脅威の方が高速で突っ込んでくる場合、

感知できる頃には遅いんだよなぁ

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