15歳、怪談
前回のあらすじ
「あれは心霊写真ではなかった」
高校生になり、一人称が俺から私になります
私の努力や苦悩とは関係なく世界は回る。悪い意味でも。 良い意味でも。
さて、
どの学校にも、皆さんの学校にも、七不思議というのはあったでしょう。
そして、定番の少女の霊。
私の学校にもありました。
ただし、トイレや音楽室ではなく、合宿用の別館に出没するという噂。
詳しい情報は何もかも謎で、、
何らかの理由で自縛霊として居付き、心霊現象を起こしている。
とまぁ、なんとも雑でふわふわした設定の幽霊らしい。
しかし、不思議な事に、
助けられたという噂と、悪霊だという噂と、2種類の噂が流れていた。
助けられた方は、複数の体験談があって、
「視界の端に一瞬うつっでビックリしたら、そのおかげで事故が回避できた」
といった内容の物。
例えば、ジョギング中に、人影を感じで立ち止まろうとしたら、
実は靴紐がほどけていて、すぐそばを一緒に走ってた友達が踏んでいて、転びそうになって、
もし立ち止まろうと減速していなかったら盛大にコケて怪我をしていたに違い無い。
みたいな・・・
助けられたというのだろうか・・・
悪霊の方は、特に具体的なエピソードはなく、何がどう危険なのかはよく分からない
そのため、純粋に恐れられているというよりは、
祟りも良くあるけど、守り神でもあるような扱われ方をしていました。
まぁ、私からすれば、盛大にネタバレしてますけどね。
悪意は皆無、存在も希薄。
おそらく「一瞬視界に映った気がする」程度の力しかなく、危険性は皆無。
不幸の前触れのような扱いをされ、
それを身構える猶予をくれる吉報と捉えるか、
不幸の象徴と捉えるか、の違いでしかないんじゃないかな。
もちろん別館は立ち入り禁止だった。
幽霊騒動があるからというより、別館を常時開放する理由が無いからね。
ただし、完全に不可侵というわけでもなく、
年に数回は使用されることもあった。別に閉鎖する理由も無いからね。
その日は、学園祭・・・・ではなかった気がするが・・
何かのイベントの打ち上げをクラスでやろうと言う話になり、
担任が喜び勇んで、よりにもよって別館の使用許可を取ってきてしまった。
この先生、赴任一年目で、かつ、先生になって始めてのクラス担任というのもあり、
こういうのにあこがれていたらしい。
かわいい。
非日常×非日常という感じで、私たちはむしろ盛り上がり、
自分たちで費用を出し合って、飲食物を用意し、
ささやかなパーティーが開かれることになった。
買出しの途中、他のクラスと良く会った。どうやら他のクラスでも打ち上げをするようだ。
つまり、他の場所は全部とられてたから、あの場所になったんだろうな・・・
買出しから帰ると、私の担当は終りなので、別館の中を探検した。
1階はイベントスペースのような大広間。準備係が机や椅子を並べてる。
隣に簡易的なキッチン。今は担任と料理得意組が料理中。後で手伝おう。
2階は階段脇にトイレ。封鎖されてる?水が出ないのか?
隣が8畳の和室。
その隣が16畳の和室。
2階は合宿時の宿泊スペースだな。
探索するほどでも無い広さと、「何も無さ」に、
少しのがっかりと、少しの安心を感じながら戻ろうとすると、
団体が階段を上がってきた。
女子バレー部の顧問と、女生徒数人?
この別館の使用許可を掛け合った時、女子バレー部顧問の参加を条件とされたらしい。
別館の管理者というわけではないのだが、
この建物を合宿所として使っているのは女子バレー部だけで、
普段良く使っているからだろうか?
「はい、こっちの小さい方の部屋へどうぞ~」
ツアーガイドのように誘導してる・・・
面白い話が聞けるかもしれない。
「この部屋、何か感じない?」
「えぇ~何も無いけど・・・あ!もしかして!」
「そうあの有名な幽霊の出る場所だよ!」
「きゃ~~こわ~~い」
へーそうなんだ。全くそんな気がしなかった。
というか、女生徒陣。リアクションが接待モード過ぎるだろ。
いや、確かに、この建物借りるには、こいつの機嫌とっておく必要があるっぽいが・・・
「彼女はココで首を吊って死んだんだ・・・」
「・・・」
「ちょうどその場所で!」
「きゃぁ~~」
へーそうなんだ。全くそんな気がしなかった。
というか、何これ?何この茶番?
「この部屋には彼女の怨念が渦巻いていて、もう呪われてしまったかもしれん・・・」
「えぇ~大丈夫なんですかぁ~」
「この僕が居るから大丈夫!!!」
「先生すごーい!頼りになる~」
失笑。
というか、こいつらお互い茶番だって気付いていて楽しんでるだろ。
上級者過ぎない?
「僕は以前、神社に勤めていた事があってね」
「多少の御祓いは出来るのさ」
なるほど、だから、バレー部しかここを使っていなかったし、参加条件だったのか。
「非常に強力な悪霊なのだが・・・」
イラッ
・・・?
「僕にかかればちょろいもんさ」
「悪霊退散」(キリッ)
「きゃぁ~すごーい」
「非常に強い憎しみを感じるね・・・」
「この学園の生徒見境無く呪いそうだ!」
・・・?何か、非常に不愉快だぞ?何故だ?
「でも僕が抑えておいたから、もう大丈夫だよ!」
「すごーい」
「シュッシュッ 悪霊は滅びよ!」(ドヤァ)
調子に乗るなよ嘘つき。
「そんなに強い悪霊ならココで祓っただけでは足りなく無いですか?」
「本当は亡くなったのココじゃないですよね?」
「ど、どうしてそれを・・・」
「え?ココじゃないんですか?」
「あ、いや、本当は隣のトイレなんだ。でも狭いから隣でやるようにしてるんだ」
「僕ほどになればこのくらいの距離」
「それも嘘ですね」
「トイレではありますが、一階のトイレです」
そう言って斜め下を指差した
「更に、首を吊ったのも嘘です」
「本当は病気の発作ですよね?」
「何故それを!私しか知らないはず!」
「しかも、亡くなったのはココじゃない」
「普通に病院で亡くなった」
「誰にも見つからなかったのではなく、発見が遅れただけだ」
「そのせいで手遅れになったが、病院に運び込まれるまで意識はあった」
「彼女はその時、学校に悪い印象を残すことに心を痛めていた」
「彼女に、後悔の念があるとすれば、それは謝罪であり、恨みではない」
「それなのに」
「そんなに彼女を悪霊にしたいのか?」
『ならばお望みどおり、呪ってやろうか?』
・・・
誰もが止まった。
静寂を打ち破ったのは、蛍光灯の点滅だった。
「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
今度は本気の悲鳴が上がり、皆が階段に外に向けて逃げ出した。
階段で事故が起きなかったのは奇跡だろう。
私は最後尾だったので、直接見ていないが。
バレー部顧問は我先に逃げ出し、そのまま車に乗ってどっか行ったらしい。
1階にいた人たちは、何事かと騒然になったが、
2階に居た女生徒の1人が事態を収拾した。
「いえ、2階で怪談話をして、それがちょっと怖かっただけです」
こいつメンタルやべぇ。
いや、動じていないわけでは無い。
打ち上げが、ぶち壊しにならないように配慮したようだ。
おそらく、深くは考えずに、迷惑かけたくないって気持ちが先に出たんだろうな。
しかし、別館開放の条件である、バレー部顧問が 何故か 帰ってしまったため。
結局お開きとなった。
ただし、「片付け」に2時間かけるという、担任の神配慮により、
クラスの皆は十分に「片付け」を堪能する事が出来た。
2階に居た組はお通夜だったが・・・
この日はこれで終り。
さて、
私はいくつかの大きな勘違いをしていたらしい。
1つは、私は絶対的に優位な立場では無いと言う事。
2つ目は、良く分からない存在を甘く見すぎた事。
3つ目は、自分の限界を自分で決めていたに過ぎないって事。
今回の件、
私は事前に何も知らなかった。
仮に知っていたら、こんな目立つやり方だけはしなかっただろう。
彼女の怒りに引っ張られ、不愉快な思いをしているうちに、
彼女の死ぬ間際の学校を思う意志を感じて、ついカッとなった、
操られたというより、誘導された感じだろうか。
最後の一言は
「ならばお望みどおり、呪われても仕方ないな」
と言おうとしたのに、口から出た言葉は別物だった。
強い意志を叩きつけられた為に、間違ってそっちを言っちゃった感じだ。
万が一何かあっても、逃げれば良い程度に考えていたが、
いつでも私に選択権がある。という考えは傲慢だった。
今回は、私自身が、ほぼ同意見だったのもあるが、
相手が圧倒的に格上の場合は、意思に反する事を誘導された上で、
そのことに気づくことすら出来ないかもしれない。
そして油断していた。
能ある鷹は爪を隠すという可能性を失念していた。
考えてみれば当たり前である。常時周りを威嚇し続ける奴なんて少数派だろう。
それとも、気配を遮断する結界のような物が有り、
至近距離まで近づかないと気付かないとかか?
もしくは、もっと単純に、
周りに影響を与えようとしている時にだけ影響力を感じるのかもしれない。
それと私は
「断片的な意思が分かるだけで、発信源の詳細を知ることなんかは出ない」と決め付けていたが、
それは、私がそうあって欲しいと願っただけで、結局は使い方なのだろう。
病院で学校の事を憂いている気持ちを知っただけで、事情をほぼ理解した。
同じように、私は、今現在は彼女の本名も容姿も知らないが、
彼女がそれを知らせようと望むのであれば分かるのかもしれない
そもそも、最初の鏡の件が説明付かない。
あれは、完全に、そんな理屈では説明できない。
そんなことを土日は考え
憂鬱な月曜日が来る
はぁ、流石にアレはごまかしきれないよな・・・
とり憑かれたバケモノ扱いされるのだろうか・・・
スピリチュアル霊能力者扱いされるのだろうか・・・
とにかく、碌な事にならないだろうな・・・
どういう顔して学校に行けばいいか分からない・・・
休みたい・・・
登校してすぐに
あの時混乱を収拾した鋼メンタルさんに手招きされた
終わった。
帰りたい・・・・
「ねぇ、あの時、あの声ってどこから聞こえた?」
「良く分からないな・・・う、後ろかな?」
「やっぱり!皆聞こえた方向がバラバラなの!」
お、お?
「昔を知る人に聞いたけど、病死は本当みたい。あれ本物かも」
「とにかく、私たちは喋らない事にしたから、あんたも気をつけないさいよ」
「下手にしゃべったら悪霊扱いしたと思われるかも知れない」
?試されてる?
いや、本気っぽいぞ。全くこっちを警戒して無い。
これは、
もしかして、別館の幽霊様の御業?
ありがとう天使!
これで残りの学生生活も平穏無事に過ごせる!
とはいえ、人の口に戸は立てられぬだろうし、
詳細を精査すれば危ういかもしれない・・・一応警戒しておこう・・・
その後
1週間ほど警戒したが、やっぱり「声の主」は分からずじまいになったようだ。
ありがとう天使!
噂になったのは、
「別館の幽霊は良い幽霊らしい」って事と、
「顧問は調子に乗って呪われたらしい」って事、
「一階のトイレでなくなったらしいけど、一階にはトイレが無い」という謎だけだ。
そう、無いのだ。
だからこそ顧問は1階のトイレだと聞いて本気で驚いた。
事実なのだ、10年以上前に実際に起きた事故で、一応記録が残っており、
記録上は1階のトイレで事故がおきたとなっている。
しかし、1階にトイレは存在しないし、建物の図面にも存在しない。
本来はそれゆえに七不思議にエントリーしていたのだ。
そのため、それで先生方は2階の書き間違いだろうと判断し、
尚且つ、実際の場所を伏せる為に、2階の小部屋とした。
更に噂では場所不明としていた。
それでも、本来の場所が当てられた。
だからこそ、出鱈目と切り捨てれずに、急に現実味を帯びた。
流石に放置出来ないと、
先生方有志で、別館の大掃除が始まった。
言うまでも無く、本当の目的は1階のトイレの謎だ。
しかし、壁紙を剥がす勢いの捜索もむなしく、
結局何の成果も得られなかった・・・・
事態が動いたのは翌日。
「大掃除」の範囲を広げて、外の倉庫を掃除していた時の事。
いや、その休憩中。
別館の屋根を借りるような構造の、屋外の自動販売機コーナーにて、
休憩中の先生に、生徒の1人が妙な事を言い出した。
「この後ろの板。なんなんですかね」
別館とは反対側の、伸びた屋根を支える巨大な柱と自販機の間に大きな鉄板のような物がある。
どかす為には自販機を動かす必要があり、色々と面倒そうだ。
先生は最初心底面倒そうだったが、ぼんやり見つめた後、その不自然さに気付き、
大慌てで人手を呼び、撤去作業を行った。
予想通り、そこにはトイレがあった。
その後は、丁重な清掃と、本物の神主によるお清めらしきものが行われた後、
再度、木版と自販機で封印された。
建物の図面に載っていないはずである。
外であり、しかも、後から増設された区画だったのだ。
以外にも、それで一件落着となった。
生徒の混乱が全く無かったから、薮をつつく必要は無いと判断されたようだ。
ちなみに
バレー部顧問はどうなったか。
私は直接見て無いが、
複数の目撃者の証言を統合すると、
余りにも背後におびえすぎて、たった3段の階段を踏み外し、
パニックになって、自分から全力で地面を蹴飛ばし足首を捻挫。
何故か次の日に松葉杖で登校し、怪我を理由に長期休暇に入ったらしい。
最初は他の先生方も対応に苦慮したようだが、
件の別館の幽霊が悪霊だと広めていたのはバレー部顧問だった事が発覚し、
それは合宿所を独占する為についた悪質な嘘と認定され、
更に、目撃証言に不審なところも無かった為に、
自業自得の自滅のような判断をされ、加えて不当な理由での長期休暇も付き、
何らかの罰則を受けたらしく。いつの間にか居なくなってた。
見えない存在を利用し、私利私欲に走った者の末路か、
耳が痛い話である。
私は、私の後ろに、存在しない何かどろどろした物が渦巻いているような感覚を覚え、
苦笑いしながらつぶやく。
「明日はわが身 かな」
残りの6不思議は、無かったようだ。
1強過ぎて存在が霞んだんだろうな




