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夢で見た景色  作者: Sikino
4/11

13歳、写真

前回のあらすじ

 コントロールできるようになった。

 恐れていた物の殆どはたいした事なかった。

 それはそれで良心が痛む。

中学生になり、一人称が僕から俺になりました。

俺に出来る事は無い。



俺は相変わらず何も出来ない一般人だ。

ただ、ほんの少し妄想が酷いだけだろう。

思春期のアレだ。

5年前くらいから始まっているが、きっと気のせいだ。

たぶん、自分の記憶を捏造してるんじゃないかな?

きっとそうだ。


しいて言うなら、ほんの少しだけ、危険な場所を察知する事が出来る気がする。

感だぞ。第6感、的なやつだろうな。


例えば、今、この状況もちょっと危険だぞ。

とても寒い。


その日は、修学旅行で北の方に来ていた。


あ、暖房ケチった車内の話で、遭難とかそんなんじゃないぞ。

せいぜい風邪引きそうとかそんなレベルの危機だ。


そして、もう1つ心配事があった。

これから向かうホテルの事だ。

旅行のしおりで初めて外観写真を見たとき、

一瞬だけ違和感があった。


直接見れば白黒ハッキリするのだろうが、

山奥の建物という事もあり、少し不安だった。


バスが進み、ホテルが見えてきた。

一目見て杞憂だとわかった。

ココは安全だ。


違和感の理由は、

おそらくデザインだな。

ただの四角い箱ではなく、ところどころ切り取ったようなデザインなのだが、

正面から見る分には見栄えが悪く、おそらく、別の角度から見ないと良さが出なさそうなのに、

他3方は山に囲まれているので、デザインが無駄になっている。


まぁ、こんな謎立地に建ててるし、色々と適当なんだろうな。


俺たちはバスを降り、さっさとホテルに入る。

前言撤回。ロビーを見るに、無難に良いホテルじゃないか。


部屋割りが発表され、各自部屋へ急ぐ。

早く暖房の前に陣取りたい。


同じ部屋の人は、3人グループの2セットで、

友達のマサとトモと・・・あー友達A、友達Bでいいか。

後は不良C・D・Eの6人だ。

不良ではあるが、我が校の不良は、他校の不良と対抗する為に作られた自警団的な側面が強く、

色々と傲慢ではあるが、基本的に一般生徒にはそれなりにやさしい。


つまり、部屋の暖房の前を陣取るのは早い物順という事だ。


さりげなく部屋の鍵は俺が受け取った。

ドアを開け一番に乗り込


「いっちばーん」


不良Dに先を越された!

しまった、うかつ。ドア開ける人は位置取り不利じゃねえか!


「させるかぁぁぁ」


即座に後に続き、部屋に入るなり荷物を投げる。

暖房の前に滑り込む荷物。


「あーずりぃ」


早い者勝ちだからね。

フフフ、すまないね。寒がりだからこれは譲れない。


早速暖房の前に座り込もうと荷物に近づき。



そのまま、倒れこむように土下座した。



心の底からそうすべきだと思った。

後ろで誰かが何か言ってるような気がした。

友達Aか?何でこいつは土下座しないんだ?バカか?

そんなことはどうでもいいか。無視だ無視。

僕は今心から


急に、背中を思いっきり引っ張られ、

俺は仰向けにひっくり返った。


「大丈夫か?お腹痛いのか?」


友達Aが心配そうに覗き込む。

あぁ、うつぶせに倒れたと思われたのか。


意識がハッキリする。状況が分かったが、理解できない。

俺は片足をもう一度その場所に突っ込んで再確認し、即座に引っ込める。

ありえない。その僅か一畳ほどのスペース内だけに、尋常じゃない脅威を感じる。


イメージを、脅威を火のイメージに変換するとすると、

骨折の危機は焚き火程度の火力。

命の危機はキャンプファイヤー程の大火になるが、

そのスペースに居るのは、太陽、とでも表現すればいいのだろうか。

存在が大き過ぎて、全体を捉えることすら不可能な、人のものさしでは計ることすら出来ない何か。

『規模』が違う


通常、脅威は離れれば離れるほど安全になる。当たり前の話だが。

だから、強い脅威の場合、それに見合って危険を感じる範囲が広まり、

感知出来る範囲も広くなる。

それが、一歩隣に居るだけでまったく感じない。

ありえない、これほどの存在、地球の裏側に居ても即座に死を確信するレベルだぞ。


これは妄想が思春期とか言ってる場合じゃない。

今度は右手だけをそのスペースに入れ、集中する。

相変わらずすさまじい、右手の感覚が無い。

だが、これは、

悪意は感じない。善意もだが。


右手を引っ込める

安全。だろうな。

だが俺には無理だ。正気を保っていられない。


「大丈夫だ」

「それより、場所交換しようぜ!」


俺は平静を取り繕って言ったが、焦りすぎた。


「え、やだ。」


明らかに警戒してる

今度は不良たちに交渉する


「場所交換しない?暖房の前の方がいいでしょ?」


「それが人に物を頼むたいどかぁ~土下座くらいしないとなぁ~」


不良Dが調子に乗るが、


「よっしゃ、そんなんでいいの?」


僕は即座に膝を付き、また焦りすぎて失敗したことに気付く


「えっ?マジで?」


流石に不良Dも警戒させてしまった


「俺は絶対やだね」


リーダー格の不良Cは明確に拒否した


「ビビってんの?」


不良Dが調子に乗るが


「俺はあの件を知ってる。こいつがガチで逃げ出す時はガチで逃げた方がいい。」

「俺たちも逃げた方がいいか?」


不良Cはこっちを見ていった


「大丈夫だと思う」

「例えば、俺らが足元の砂粒の表面についているミジンコを特定して殺すなんてありえないだろ?」

「ミジンコどころか砂粒さえ、道具無しで潰すのは難しい」


「お、オカルトか?意外な・・・」


不良Dはまだ半信半疑だ


「前は土砂崩れだった。実際に起きたのは翌日だから、別に命を救われたわけではないが」

「俺なら危ない橋は渡らないね」


不良Cが知ってたのは去年の件か

これはもう無理だな


「じゃぁ、俺廊下で寝るよ・・・無理言ってごめんな」


ちょうど夕飯時なので、みんなで部屋を出る時間だ。

憂鬱だ・・・


・・・そうだ。今なら撮れるんじゃないか?

俺はポケットからカメラを取り出した。

当時はまだ、フィルム式が主流で、お手ごろ価格の「使い捨てカメラ」と呼ばれるものが存在した。


バチが当たるとかは無いと思うけど・・・

そもそもミジンコを認識する事すら出来ないと思うし・・・


とりあえず俺は かしわで を打ち、一言お祈りをした。

(失礼します。写真を取らせてください。)

そしていざカメラを構えたが・・・


やっぱ止めた。


もう一度一礼して、

ポケットにカメラを入れ、友達を追いかけようとして、カメラを落とした。

ポケットに入りきれてなかったのだろう。

打ち所が悪かったみたいで、壊れたっぽい。

まぁ、使い捨てだから残り2~3枚のフィルムが無駄になっただけで、たいした事ではない。


あ、今更だが、ミジンコは水中プランクトンだから砂粒には居ないか。

まぁ、通じてたしいいか。



その後は、

夕食とレクリエーションがあり、部屋に戻ってきたのは数時間後だった。

あの範囲内にある荷物をどうしようか憂鬱だったが、この間に布団がしかれたようで、

荷物は手前に移動していた。

ありがたい。仲居さん?グッジョブ。


風呂から戻ると、

俺はホテルに良くある、障子と窓の間、机と椅子と洗面台とかがあるあの謎スペースを片付けた。

確実に寒いだろうが。まぁ仕方ない。

最後に、布団を回収しようとして、

その前に何か悪化していないか確認する為に、あの範囲に右手を突っ込んだ。


・・・?


何も感じない?

右手の感覚がなくなったわけではない。

脅威が消えた?


恐る恐る範囲内に立ち入ってみる。


何も感じない。


「大丈夫か?」


友達Bが心配して声をかけて来た。


「大丈夫になってる。消えてる。」


「お、おぅ」


周りをうろうろしてみる。

全然問題ない。全然何も無い。


「大丈夫だ。本当に。なんだったんだ?」


「寒い所から暖かい所に急に移動したから、何か眩暈とかして、それを勘違いしたとか」


「そうかもな」


絶対違うが、一応同意しておく。

さて、どうするか。

でもまぁ、やっぱり念の為だよな。


「でもやっぱり、念の為、移動するわ」


「そうか、悪いな」


「待って!」

「安全なんだよね?」


不良Eが会話に入ってきた


「安全ではあると思うよ」

「仮に復活しても、安全ではある」

「ただ単に俺にとって居心地が悪いだけだから」

「じゃなきゃ『交代』ではなく『近づくな』って言ってる」


「じゃぁ僕がそこに寝る」

「外だと絶対風邪引くもん」

「あ、でも試してなんともなかったらね」


マジかよ。こいつすげえ。

結局交代することになった。


翌朝、皆無事に起きる事が出来、

無駄な心配だったねって話ながらホテルを後にした。


その後も修学旅行は続くが、

この日はこれで終り。




数日後


現像が出来たので、修学旅行中に取った写真の確認と整理していたら、

撮った覚えの無い写真が3枚出てきた。

1枚は部屋の写真?

1枚は暗い部屋に白いもやのような物がかかっている。

1枚は真っ黒


あぁ、これカメラ落として壊れた時の写真か。

1枚目が落とした瞬間の写真だろう。

衝撃でシャッターが切れたんじゃないかな。

でもこれ少し変だな。

カメラが回転していたのだろう。写真に写っている部屋は、

ぐるっと回転するように映像がブレているが。

その回転の影響を一切受けずに、光の線が縦と横に何本か入っている。


回転するようにブレさせるのは簡単だ。カメラを動かしながらシャッターを切ればいい。

光の線を入れるのも簡単だ。シャッターを切る瞬間に、光源をすばやく動かせばいい。

でもそれを同時にやるのは非常に困難だ。

そのまま合わせると、回転の影響を受けて、光の線も回る。

回転の影響を逆算して光源が動けばいいが、極めて難しい。

それを何本も?縦横同時に?

偶然に偶然が重なっても非現実的じゃないかな。


2枚目は、壊れたのを確認し、フィルムを巻き切っているときに偶然写った写真かな。

背景は暗くて凄くぼやけていているが、たぶん天井の一角だろう。

問題はそこに浮かぶ白いもやで、

水墨画を白黒反転させたような物が浮かんでいる事だ。


水墨画独特のあやふやな輪郭で、ハッキリ分からないが、

水墨画に良く出てくる天女と老師を足して二で割った感じの雰囲気の人が、

今まさに振り返ろうとしている瞬間のように見える。


3枚目は、完全にダメになっただけだな。


この2枚、

いや、1枚目はたぶん殆どの人が理解できないか。

でも2枚目は、誰が見ても、心霊写真では無いだろうか?


俺はこの写真を自慢するつもりは無い

ただ、こうして形になる事で、ほんの少し、自分の妄想が認められた気がしたのだ。


自慢するつもりは無いけど、第3者の意見も聞きたいな。

自分では渾身の一枚でも、他者から見れば駄作とか良くあるから・・・

とりあえず、ちょうど居間に居る姉に見せてみよう。


「ヘイ!そこのお嬢さん。これをどう思う?」


「ハーイ!あ、写真?どれどれ、お姉さまが評価して進ぜよう」


・・・


姉は急に無表情になり、机にあるハサミを取り、

写真を切り刻もうとした。


慌てて、写真を奪い取る。


「それは違う」


姉は真顔で、抑揚の無い声でそう言った後、

また何事もなかったかのようにテレビを見だした。


「お、怒ってる?」


「え、何が?何の話?」


「なんでもない」


急に普段の雰囲気に戻り、

まるで何事もなかったかのように振舞う姉が怖くてその場から逃げた。

機嫌悪かったのかな。別の人にしよう。



翌日


写真を学校に持ってきた。

まずは軽く友達Aに見せてみる。


「これ心霊写真っぽくない?」


・・・


友達Aは真顔で写真を見つめた後、

写真を投げ捨てながら、抑揚の無い声でこう言った。


「これは心霊写真じゃない」


慌てて拾う。

投げ捨てる事はなくないか?


「え?何?見せて?」


友達Bは写真を見た後、写真を破ろうとした。

慌てて写真を奪い取る。


「これは心霊写真じゃない」


何これ、そんなに駄作なの?怒るほど?

最低でも「見えなくは無い」って盛り上がるくらいはすると思っていたのに・・・


そうだ、隣のクラスに心霊写真マニアが居たな。

光の点があるだけで心霊写真だと喜ぶような奴だ、あいつくらいは多少は評価するだろう。


・・・


「これは心霊写真じゃない」


くしゃくしゃに握りつぶされた写真を拾いながら、俺は落胆していた・・・


「あの時の写真?見せて」


不良Eだ、もう誰にも見せずに持ち帰るつもりだったが、

こいつには恩があるからな。とりあえず渡す。

すぐ奪い取れるように身構えて。


「あ、ホントだ!そんな感じする!」


お?おぉ?何この人?実は天使?


「でもなんか不評っぽいからあんまり見せない方がいいかもね」


そう言って写真のしわを伸ばして返してくれた。

ありがとう、もう十分だ。自慢したかったんじゃない。

誰か一人だけでも共感してもらいたかっただけだから。

お礼を言って、写真はかばんの奥底にしまった。


その後は、今日最後の授業の体育があって、

後は帰るだけだ。


・・・?

体育から戻ると、誰かがかばんに触った形跡がある。

財布、ミュージックプレイヤー、金目の物は何も取られてはいないな・・・

あっ!写真が無い!?

あの写真の存在は4人しかしないはず。とりあえず聞いてみよう。


「なぁ、昼に見せた写真知らない?」


「どんな?」


「心霊写真っぽい奴」


「何それ見て無い!見たい!見せて!」


あれ?なんか変だぞ?


「いや、見せたじゃん。怒って捨てたじゃん」


「いやいや、見て無いし。ってか人の写真捨てる訳ないじゃん」


友達Bも同調してる。

覚えてないのか?


「いや、お前ら何か写真見てたぞ。んで捨ててたぞ。感じ悪かったから覚えてる」


友達Fが助け舟を出してくれた。


「え、いや全く身に覚えが無いんだけど・・・あれ~?」

「あ、本当にやってたらごめん。もう一回見せて、思い出すかも」


「いや、無くなってるから探してるんだ。知らないならいいや、見つけたらも一回見せるね」


次は隣クラスのあいつだな。


・・・


「知らんよ?イヤイヤ俺が見てたら食いつかないはずが無いだろ?絶対見せてない」


同じか。

どういうことだ?嘘をついているようには見えないぞ?

見た記憶が消えたのか?


後、天使(不良E)は、もう帰ってるか・・・まぁ、奴は無いな


となると、こっそり写真を見せているの見た第3者か?

今までの流れから行くと処分されてそう・・・もう探すの無理だろうな・・・


まぁ、ネガ(元データみたいな物)があるから複製すればいいか。

ついでに3枚目も明るさ調整すれば、実は何か写っているかもしれないな。


・・・


家に帰って驚愕した。


俺の机が荒らされていた・・・

鍵付きの引き出しを無理やり強引に開けたようだ。

そして、予想通り、

ネガの一部が破壊されていた。


犯人は、1人しか思い浮かばないが・・・

聞いても記憶に無いのだろうな・・・


もしかして、あの写真が呪われていたのか?

でもそれなら俺が気付かないはずが無い。

俺の感知範囲外の何かがあったのか?



真面目な話、俺が感知できる「何か」は、

霊能力とは別物だと思っている。

間接的に同じような結果になるだけだと。

俺が受信しているのは、強いて言うなら精神エネルギーのようなものだと思う。

断片的な意思が分かるだけで、発信源の詳細を知ることなんかは出ない。

その意思の強弱や、善悪のバランスで脅威度を判断してるだけだ。

だから、無意識に弱い力でクリティカルを出すタイプとは相性が悪い


少し、自分を過信していた。

やはり俺は無能なのだ。

世の中には想像を絶する物がいくらでもある。

反省し、もっと臆病になろう。





それから1年後。

不良Eが亡くなった。

何の変哲も無いバイク事故だった。

誰もが違和感を感じないほど、普通の事故だった。


本当に何も異常はなかった。


それでも、俺は、

俺に何か過失があったんじゃないかと、

自分を責めずには居られない。


1つだけ、今なら分かる事がある。


「あれは心霊写真ではなかった」


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