27歳、夢で見た景色_後編
目を開ける。
時計。7時。目覚まし。
カチッ
ピ
鳴るとほぼ同時に止める。
ここは私の家だ。
えっと、そう、この発想はなかった。
まさかの2段夢オチである。
最悪の結末と思うだろうが、体験した方は本当に、本当に洒落にならない。
最後に、鏡に「私」が居たな。
という事は、これはSOSのメッセージなのか?
いや、私は全ての力を失ったはずだ。
実際にこの6年間不思議な事は一度も起きていない。
「取り合えず、顔を洗うか」
無意識にそう呟いて苦笑する。
無限ループって怖くね?
こんな場合は取り合えず、2度寝しとこう。
起き上がり、ベットに腰掛ける。
あれ?体が勝手に動くぞ?何これ金縛り?動くタイプの新手の金縛り?
いや、動かそうとしているのは俺なんだが、まるで意識を半分乗っ取られているような・・・
もう1つの俺の人格の方が体を動かしているような?
左手を見ながら、左手を動かす。
まずい!これはまずい!とにかく俺を止めなくては!左手はダメだ主導権を奪われた!右手は?
ベットから立ち上がろうとして、
右手を引っ張られる。
驚いてそちらを見ると、
引っ張られたのではなく、右手がベットの縁をつかんだまま固まっていた。
よっしゃ!右手だけは何とかこっちに主導権があるぞ!
とにかく、洗面台に行かせてはダメな気がする!
ここは死んでも離さないとして、後はどうやって目を覚ますかか?
左手て右手を開かせようとする。
ヤバイ、死んでも離さない。
左手で右手の指を一本ずつ開けていく。
それは卑怯だろぉーーーー
じんわり右手から熱が抜けていくような感覚がする。
右手の主導権は殆ど奪われた。
今度こそ立ち上がり、部屋を出る為に、
引き戸に手をかけようとする。
しかし、ノブに手が掛からない。
まるで見えない圧力に弾かれているかのように、右手がうまく操作できない。
止めるのは無理だが、軌道を変える事はできるか!何とか時間を稼いで手段を考え
左手で引き戸を開ける。
だからそれは卑怯だってぇーーーー
リビングを通り抜けるが、足元がふらつく。
足もせいぜい軌道を変える事が出来る程度か。
よし、多少荒療治だが、衝撃を与えれば何とかなるかもしれない。
廊下に出るときに足元に躓き、洗面所のドアに頭をぶつける。
「っ!でもこれで目が覚めたな」
そう呟きながら、左手でドアを開け洗面所に入る。
今気付いた。
おかしい、ありえない。全部さっきの夢と同じだ。
夢と同じ動きをするのはまだわかる。でも何故、現実の抵抗が夢の方でも反映されているんだ?ありえない
顔を洗いながら色々考える。
この後、「私」を見るのか、変化するのか?無限ループか?
どちらにせよ、ろくなことに、おっと、水が目に入りそうになる。
かって動くからタイミングがつかみ難い。
つかみ難い?
これだ!さっきの夢と唯一違う点があった!目だ!
目と、瞼だけは、完全にこちらの支配化にあるし、唯一別の動きをしている!
「よし!」
顔を上げる。
私は目をつぶったままだ。
絶対に開けない。
向こうの方が直接肩をたたいたりしてくるかもしれないが、少なくとも私は絶対に目を開けない。
意地でもあけない。
全く体は動かない。
私が目を開けるまでこのままか?
いいだろう、我慢比べか?何時間でも付き合うぞ?
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1時間は経っただろうか?
でもこういう時、1秒を1分のように感じるというし、まだ数分しか経っていないかもしれない。
それなら体感で2~3日待つ覚悟でやるぞ!
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3時間は経っただろうか?
とにかく無心だ。無心。いつまでも待とう。
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9時間くらい経っただろうか・・・?
流石に立ちっぱなしで疲れてきた・・・
一体いつまで・・・
ん?疲れてきた?
という事は感覚が戻ってる?
目を瞑ったままだからわからんが、体が動かせる感覚がするぞ!
よし、
とりあえず、目をつぶったまま這ってこの場所を移動しよう。
まずはループの起点のベットに戻って、ループとは違う動きをすればいいのか?
・・・こうやって目を瞑って這っていると、
手が誰かの足に振れたらと思うと怖いな。
薄目で確認すべきか?
いや、罠だ!いや、確認させないのが罠だったらどうしよう・・・
あぁ!もう!わかんない!
とりあえず、当初の予定通り、目を開けない方針でいく!
リビングを通り、ベットによじ登り、
幸い何にも触れることなく戻ってこれた。
ここからどうすればいいのか・・・2度寝か?
全く寝れる気がしないが、取り合えず、このまま横になって無心でいよう。
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うとうとして目を覚ました。
時計。午後5時。目覚まし。
・・・あっ目を開けちゃった。
でもどうやらループからは脱したようだ。
当面の危機は去ったようだが、問題はこれからである。
今のは完全に「メッセージ」だ。
私の能力は失われた、それは間違いない。
それでもメッセージを受け取ったという事は、
答えは1つしかない。
メッセージを受け取ったのは私の力ではないというだけだ。
そもそも、最初の鏡の件だけは他の件とは違い、明らかに異質だった。
わかってしまえば、何故気付かなかったのか不思議なほどに明確に違う。
私は、メッセージを受け取ってしまった以上、何かをする義務がある。
彼女らを探しに行けばいいのか?
でも場所がわからない。
夢の中では何でも思い出せたはずなのに、
映像だけ思い出して、名前などは思い出さなかったので、
場所を調べようもなかった。
あのフェリー乗り場は屋久島で見たものに似ていたけど・・・
いや、仮にそうだとしても、あの登山道は知らない。
更に、あの双子は登山道から離れた場所を探検していたから、探すのはかなり厳しい。
思い返して手を止めた。
いや、私はあの不自然な存在に関わりたくない。
探すのは無理だ。例え場所がわかったとしても。
ではどうする?
メッセージを誰かに伝えるのはどうか。
しかしどう伝える?
「夢で双子が危険な目に合っていました」では、
ただのマヌケな冗談になってしまう。
もっと正確に伝えなくては。
「テレパシーが使える双子が登山道で」
これではダメだ。
もっと正確に伝える為には「最初から」説明する必要がある
私はテキストを開き、下書きを始める
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「これはおばけですか?」
僕は思わずつぶやいた。
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これにて完結です。
皆さんには申し訳ありませんが。
ただの夢だと笑い飛ばしてくれたら幸いです。




