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夢で見た景色  作者: Sikino
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7歳、虚像

事実を元にしたフィクションです

「これはおばけですか?」

僕は思わずつぶやいた。


鏡に、同級生のあやちゃんが映っていた。

正確には、見た目は完全によーこちゃんだが、

僕はそれを『よーこちゃんの姿をしたあやちゃん』だと認識していた。

その事も変だが、それ以上に不思議なのは、

こちら側の、現実のその場所には誰もいないのだ。


しかし、僕はそれを見ても全く怖くなかった。怖く無さ過ぎて疑問になった。


時刻は昼、天気は快晴、場所は自宅の玄関、

そう、昼なのだ。


答えがわかったので自分で答えた。

「いいえ、お化けは夜に出るものです。つまり、これは、ちょーじょーげんしょうです!」


そうと決まれば、好奇心が警戒心を吹き飛ばした。恐怖心は最初から無い。


よく見ても透けていない、

髪の毛一本一本まで見えるほどハッキリしている。

呼吸をしているように僅かに動いていて、生きているように見える。

足元は・・・・鏡が小さくて見えない・・・

・・・やはりおばけだとは思えない。

どちらかというと、現実側で見えないのが不自然に感じるほど、鏡の中の彼女は存在感があった。


これは・・・触れるのか?

こちらでは見えないけど触れるのか、それとも鏡では見えるけどすり抜けるのだろうか?

鏡を見ながら恐る恐る彼女に触れてみたら、

僕の予想は両方はずれ、そして両方当たっていた。

現実のこちら側では左手は空を切り、鏡の中の僕の左手は彼女の肩に触れた。


手が空を切る感覚と、肩に触れる感覚が同時に起きたのだ。

左手が二つに分裂したような感覚。

ビックリして思わず手を引いたら、まるで裂けた物が逆再生して戻るかのように、

左手の感覚は一本に戻った。


もう一度ゆっくり触れてみる

なるほど、肩に触れると、肩に残る左手と肩をすり抜ける左手に分裂するのか、

分裂と言うより、一部は引っかかって残るイメージ?

そして、肩から手を離すと、にゅるんと一本に戻る。


何これ凄い。意味わかんない凄い。

僕のテンションは有頂天


嬉々として肩をポンポンする。

本当にこれ凄い、誰かに、誰かに見せたい。

おかあさん・・は忙しそうだから他の


そこで気づいた、鏡の中の彼女は、凄く悲しそうな顔をしている事に、

悲しくて悲しくて、泣き疲れて、でもまだ悲しくて、

どうしていいかわからずに止まってしまっているような、そんな顔。


なぜ気づかなかったのだろう。

僕が触れても何のリアクションも無かったのは、

そんな事がどうでもいいと思えるほどの心境だったからなのだろう。


とりあえず、頭を撫でてみる。お母さんはこうしてた。

何の力にもなれないかもしれない。

でも、こちらには髪の毛一本一本がわかるほどの感触があるということは、

あちらにも多少は何か伝わると思う。


「なにやってんの?」

急にお母さんの声が聞こえた。


まぁ、そうだろう、鏡の中では頭を撫でているが、

現実を横から見たら鏡に手を振っているようにしか見えないのだから。


お母さんの方を見ようとしたが、

なんとなく、目を離すと消えちゃいそうな気がして、

視線は鏡に向けたまま答えた。

念のため手は肩に添える。


「かがみにね、あやちゃんがいるの」

僕は答えた。


「で、なにやってんの?」


お母さんは更に聞いてきた。


もしかしたら、僕が何をやっているのか聞いたのかもしれないが、

当時はあやちゃんの状況を聞かれたと思って答えた。


最初はただ立っているだけだったけど、いつの間にか何かを抱えていた。


「がくぶち?もってる。大きいの。でも1位のやつ(賞状)じゃなくて写真なの。変なの」


「絵じゃなくて?大きい写真?どんな?大きさは?」


だんだん食いついてきた


「知らない人が1人で映ってる。抱えるくらいの大きさ」


「どんな人?」


「大人の、男の・・・」


よく見ようとしたら、いつの間にか抱えている物が変わってた。


「あ、ごめん違った。大きな箱だ」

「布でくるまれてる、おせちみたい。大きさも、でも真っ白なの」


おかあさんの返事は無い。


「おかあさん?」


おかあさんの返事は無い。


「おかあさん、とりあえず来て!見て!」


おかあさんの返事は無い。


「おかあさん!」


おかあさんの返事は無い。


「おかあさんってば!」


ちょっと頭にきてお母さんの方を見てしまった。

同時に肩が消え、両方の左手が空を切り、左手は一本に戻った。

慌てて鏡を見直したが、もう僕しか映ってなかった。


そこへお母さんが戻ってきた。返事が無かったのは奥の部屋に行っていたからで、

押入れから何か本を引っ張り出してきたらしい。


「おかあさんが遅いから!」


僕が怒ろうとしたら、お母さんは人差し指を上げて1の合図をした。


1分待ってと言う合図だが、大体1分で終わらない。

しかし、大事な事をする時に使うから、おとなしく待つことにする。

あとでいっぱい文句言うからな。


お母さんは電話をかけ始めた。

さっきの本は、番号を調べていたようだ。

しかし、全然出ない。

もう一度本を見て、もう一度電話をかけた。

今度はすぐに出た。


「もしもし~あやちゃんのお母さんいますか?」

「あ、いつもお世話になっております~」

「実は先ほど、あやちゃんを見かけまして」

「様子がおかしかったので心配になりまして」

「家にかけてみたけど誰も出なくて・・・」

「あぁ、友達の家に?・・・一応連絡とかしておいた方が・・・」

「何もなければいいのですが、気になってしまって、すみません」

「ハイ、ありがとうございます。ごめんなさいね、変な事言って」


怒るつもりだったが、なんだ今の電話?

一応、信じてくれていた、のかな?

でも、なんというか、ちゃんと伝わっていない?

確かに見たけど、あれ絶対本物じゃないし・・・

なんと言えば良いか悩んでいるうちに、今度は電話がかかってきた。


「あ、もしもし~、あ、問題ない。そうですかーよかったー、きっと見間違いですね」

「ハイ、ごめんなさいね、ありがとうございます~ ではまた」


全く意味がわからんが、とりあえず良かったらしい。


僕が何が起きたのか考えていると、

お母さんが特別なプリンを出してくれた。

やったぜ!


謎は全てプリンに押し流されていった・・・



この日はこれで終り。




数日後


お母さんに特別な服を着なさいと言われた。

式典の服。パーティーか?ご馳走か?

すぐに準備する。


車に乗り、移動し、到着した先は、知らない家の前。

多くの人、みんな黒い服。

なんとなく把握した。取り返しの付かない何か悪い事が起きた。

多くの人が悲しんでいる。


まぁ、僕には関係ないこと。行儀良くしてればいいだろう。

お母さんの後について周り、言われた事をする。それだけだ。


見覚えがあるものが目に入った。

額縁に入った大きな顔写真、泣き疲れたあやちゃん。


あの日、僕が見た物とは違う。あやちゃんが写真や箱を持ってはいない。

でも確実に、アレはこの状況の事を伝えていたと確信した。


僕は怖くなってお母さんの後ろに隠れて、

泣きたいけど泣けなかった、

うまく考えがまとまらなかったが、

何も知らず何もしなかった僕が泣くのは、誰かに失礼な気がしたからだ。


少しして、あやちゃんのお母さんがお礼を言いに来た。

あの日電話で『家にかけても誰も出なかった』と言われた事が気になり、

一旦家に帰ったら、倒れていたおじさんを見つけたらしい。

医者の見立てでは、元々いつこうなってもおかしくなかったらしいし、

もう少し早ければどうにかなったわけでもなく、

家に電話かけて出なかった時点で完全に手遅れだったらしい。

ただ、早くに気付いてあげる事が出来たのはあの電話のおかげだと。

ありがとうと感謝された。


僕は謝る事しか出来なかった。


お母さんが、あの日あやちゃんを見たのは僕だと鏡の件はぼかして説明した。

あやちゃんのお母さんは、「あなたは悪くない」と僕を慰めてくれた。


違う、

僕は、

感謝されるべきではない


何かしても結果は変わらなかったとしても、

『メッセージ』を受けとった以上、何か、果たすべき義務があったのではないか?

しかしそれは、子供がどうにかできる範囲を超えている。

仕方のないことで、僕に罪は無いだろう。でも罪悪感だけは痛烈に残る。


僕はそういったことを漠然と感じて、

でもうまく説明できずに、

ただ、謝る事しか出来なかった・・・



それ以来、僕は見えるはずの無いものを極端に恐れるようになった。


例えば、仮に、飛び降り自殺の幽霊を見たとする。

それは怖い。が、怖いだけだ。


その幽霊が、まるで『突き飛ばされた』かのような動きをしていた場合はどうだ?

それはSOSだ、だがそのSOSに答えることは出来ない。

子供がお化けを見たという理由で、自殺で処理された捜査が再開されるはずが無い。

僕は確実にそのSOSを見殺しにする事しか出来ないのだ。


しかし、それから目をそむけ続ける事も義務を果たしていない気がする。

僕はどうすればいいのかわからない。


願わくば、

今回の一件が、偶然に偶然が重なったミラクルで、

今後の人生で二度と起きなければいいのに・・・




三ヵ月後

よーこちゃんの父親が亡くなり、

僕はメッセージのもう1つの意味を知る。


そして絶望し、


二度と関わらないと心に決めた。


基本的に1話完結風に書きます。

よーこちゃんの父親について補足しますと、

このとき既に余命1ヶ月の宣告を受けていて、逆に長生きした方です。

つまり、そっちは逆に何も言わなくて正解だった。



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