7・無意識
「勝っ……た」
いや、そんな事より――
「綺堂!」
尻もちをついたまま慌てて振り向くと、その先には同じように尻もちをついている綺堂が見えた。
自分の掌を見つめて茫然としている。
……本当に、何も知らないのだろう。
では、なぜ……ソウタは知っていたのだ?
いや、ソウタは未来が見えると言っていた。
つまり、それが事実だったという事だ。
では……ソウタは自分が死ぬのも……わかっていたというのか?
……いや、それを考えるのはよそう。
何を考えても予断になる。
それに……アイツの顔を思い出すのも……今はつらい。
とにかく、綺堂の件が先だ。
幸い、痛みはあるものの驚くほど肉体が回復していたので、すぐに立ち上がり、歩く事が出来た。
縛力による破壊は、縛力によって癒された場合、治りが良いと聞く。
世界にとって縛力の使用は規格外であるから、戻そうとする作用が大きく働くためだと言う。
縛力と言えば、縛鎖空間が崩壊し始めているが、中には私と綺堂しか居ない。
記憶消去光を使う必要もないだろう。
ラーゲルトの時もそうだったが、必要無い時には使わない。
あれは原理としては単純で、縛鎖空間内で起きた事を、記憶として縛り付けている縛力ごとビンに回収しているだけだ。
縛力使いから縛力は引きはがせないし、放力使いには掻き消されてしまう。それではやる意味が無いからだ。
「怪我は無いか?」
「え、あ、あー、うん」
心ここにあらずといった様子で、綺堂が答えた。
無理もない。
自身にまさかあんな力があるなどと、誰が想像できる?
「話が途中だったな。……だが、おおよそわかったのではないか?」
「……まさか。むしろ、わかんない事だらけだよ。説明してほしいね」
ふむ。おとなしく真面目なだけの人間かと思っていたが、思いのほか斜に構えているようにも見える。
人見知りではあるようだが、こちらが素なのかもしれない。
……やはり私に人を見る目は無いな。
「先に一つだけ答えてくれ」
「何?」
「なぜ……あんなマネをした。放力の話こそしたが使い方も知らなかったのだろう? 死ぬとは思わなかったのか?」
問われた綺堂は、首をかしげ、うんうん唸りだした。
「何で……か。うーん、どうなんだろ」
「自分の事だろう。なぜ答えられない」
「そうは言っても、体が勝手に動いたとしか」
勝手に……だと?




