2・綺堂詰問
「お前に放力があるというのは確かな筋からの情報だ。隠しても為にならんぞ」
「お、落ち着いて。何言ってるかわからないし、確かな筋とか言われても、本当に知らないんだよ……」
「アイツが嘘を言っているとでも言うつもりか!」
違う。
そういう事が言いたいんじゃない。
駄目だ。
全然自分をコントロールできない。
「……千本北大路さん……もしかして、泣いてる?」
「泣いてなどいない!」
嘘だ。
泣いているはずだ。
だって、綺堂の姿が歪んでまともに見えない。
「……何かあったんなら、ちゃんと説明してよ。ちゃんと聞くからさ」
「……わかったような事を……」
なぜ、私は反発する。
綺堂の言っている事は、何もおかしくない。
それどころか、私の無茶な行動に、理解まで示している。
私などよりよほど、人間が出来ている。
だというのに。
その理解が、心に踏み込まれるようで、耐え難かった。
もう誰もそこに踏み入れさせたくなかった。
「……知らないというなら、それでいい。……だが、事実だ。お前には放力と呼ばれる、極めて特殊な力が備わっている……はずだ」
「極めて……特殊?」
「そうだ。この世に存在を縛る力、縛力と対を成す力……あらゆる縛力を解き放ち、純粋なる力へと還元する……」
聞きかじりの知識だ。
そもそも今現在、本物の放力使いを見た者などいない。
全てが言い伝えなのだ。
綺堂は神妙な面持ちで聞いていた。
「……どうした? 知らんと言う割にやけに真剣じゃないか。普通なら信じないはずだ」
「……正直、全部が全部信じられるわけじゃない。……でも、その、千本北大路さんが真剣なのは、わかる」
「六角でいい。長くて言い難い苗字なのはわかっている」
「じゃ、じゃあ、そうするよ。……六角さんの言っている事はわからないけど、今、身の回りで不思議な事ばかり起きているのは、わかってる。だから、きっと何かあるんだろうと思う」
おずおずと綺堂は言う。
「不思議な事とは?」
「……気がついたら川に落ちてたり……おかしなメールで呼び出されたのに誰もいなかったり……」
「何だそれは」
「あとは……これは夢かも知れないんだけど……駅でバケモノに襲われたような気がするんだよ。何か、周りは虹色で……」
「……!?」
駅?
駅だと?
それは、あのシレン獣と戦ったあの時か?
あそこにはソウタも居合わせたはずだ。
これは……なんの偶然だ?
いや、それより――
「……その時の記憶が、あるんだな? それは伝聞ではないな?」
「気付いたら倒れてて……だから夢かとも思ったんだけど……少なくとも他の誰からも聞いてないし、誰にも言ってない事だよ」
「それは夢ではない。そして……」
『成程、興味深い話で御座るな』




