1・六角再動
ソウタの遺した言葉を頼りに、私はすぐに綺堂晶の元へ向かった。
悲しんでいる暇など……ない。
そんな事許されない。
私は、生かされたのだから。
ならば、使命を果たさねばならない。
幸い、ツィレード戦のダメージは一時的なもので、後を引く程のものではなかった。
戦闘らしき戦闘にすらなっていなかったという事でもあるが……。
……力不足を嘆いている場合では無い。
歩を進めねば。
綺堂晶……か。級友ではあるが、会話を交わした事は無い。
素行は悪くなく、おとなしく真面目という印象だ。
その綺堂を見つけるのは難しくなかった。
決闘式縛鎖空間に妨げられていただけで、もともと近くに居たのだから。
見れば、呑気に級友たちとスイカ割りなどしている。
周りに居るのは、同じく級友の天ケ瀬鈴菜たちだろう。
海パン一丁でハチマキを目に巻いてふらふらしている姿に、逆恨みというのは自分でもわかっているが、無性に腹が立った。
「来い」
私は、半ば無意識に綺堂の耳を引っ張っていた。
「え? 何?」
目隠しをして自分が何をされているかわかっていない綺堂と、私の乱入に喚いている級友たちが見えたが、どうでもよかった。
有無を言わさず、綺堂を連れていく。
そうして、学生が集まる海岸からやや離れた防風林としての松林にたどり着いた頃、綺堂はもうハチマキを外していた。
顔には当然、困惑の色。
だがそんな事に構っているヒマは無い。
「綺堂晶、貴様の放力を見せろ」
「はぁ? ちょ、ちょっと待ってよ。何言ってるんだよ、その、千本北大路さん?」
「いいから見せろ。私が気長に見えるのか」
「だ、だから、一体何の事だか全然……」
しらばっくれているのか、それとも本当にわかっていないのか、私には判断がつかない。
それこそこんな時、アイツがいてくれたら、正しい答えを導いてくれるだろう。
……だが、アイツはもういない。




