アクション!(1) 「箱中、部活はじめるってよ」
【注意】シナリオ形式で書いています。
アクション! 登場人物表
箱中 陸(16)映画部の部長。監督。凛太の兄
箱中 凛太(15)撮影監督。陸の弟
東森 健(35)映画部顧問。陸らのクラス担任教師
九園 新一(16)映画評論家。陸のクラスメイト
葉左上 杏(15)女優。凛太のクラスメイト
天田 聖良(15)プロデューサー。凛太のクラスメイト
林 若子(28)凛太らのクラス担任教師
1.学校の校庭(朝)
校舎を眺めるように立つ箱中凛太(15)
凛太「今日から高校生か・・・。よ〜し、気合いいれてがんばるぞ!」
意気込んで、校舎に入ろうとする凛太の前を、スケボーに乗った箱中陸(16)が勢いよく、通り過ぎる。
陸「ヒィーハー!どけどけー!」
後ろから東森健(38)が必死でおいかけていく。
東森「(息切れしながら)ま、まちなさーい!」
唖然としながら視線を向ける凛太。そして再びこっちに向かってくる陸。体勢を変えてボードに寝そべっている。
陸「フォーーーー!・・・って、凛太じゃんか!どうしたんだよこんなとこで」
ボードから起き上がる陸。
凛太「どうしたって・・・陸こそどうしたんだよ!高校生にもなって!恥ずかしい」
陸「(にやけて)高校生だからこそだろ〜。(ひじを押してながら)楽しもうぜぇ〜」
凛太「高校は勉強をするところだよ?」
陸「えっ・・・。お前勉強しに高校来たわけ?」
東森が向こう側から走ってくる。
東森「ぜぇ、ぜぇ。ま、待ちなさい…。と、止まれ〜・・・」
倒れる東森を見下げながら。
陸「こんな大人にはなりたくないだろ?」
東森「(立ち上がりながら)陸、今日という今日はゆるさん・・・。って、きみ誰だ?」
凛太「は、はい!ボクは箱中凛太。今日から高校1年生です!よろしくお願いします!」
陸「(笑いながら)よろしくお願いします!・・・だってさ。先生、笑えるよな、こいつ」
東森、驚愕し声にならない悲鳴をあげ、体を震えさせている。
東森「は、は、箱中ってま、ま、まさかこいつの兄弟なんかじゃ・・・」
陸「そうだよ、こいつ俺の弟。まあそういうことでよろしく〜」
東森「いやあああああああああああああ!」
叫びながら走って逃げていく東森。
東森、陸が乗り捨てたスケボーに乗ってしまう
東森「あらっ!あらあらあら〜!」
そのまま生徒の間を走っていく。
石につまづき、前に吹っ飛ぶ東森。
東森、ごつい生徒にぶつかり、押したおす。
東森「あっ、ご、ごめんなさいね〜。あらっ、頭に落ち葉がついておりますよ〜。(落ち葉をはらう)ぐふふふ〜・・・」
ごつい生徒、東森を強くにらむ。焦る東森。
東森が走って陸と凛太の前を横切る。その後ろをごつい生徒が追いかける
東森「たすけてえええええええええええええ!」
陸「あれが俺の担任。変な先生だろ?」
逆側からごつい生徒に胸ぐらをつかまれ、持ち上げられた東森がつれられていく。
東森「覚えてろよ〜! 陸〜!」
陸「・・・笑えるんだな〜これが!」
満面の笑みの陸。唖然としている凛太。
2.学校・1年3組教室(朝)
がやがやと騒がしい教室に入って、席に着く凛太
凛太、隣の席に目をやると葉左上杏(15)と目が合う。
凛太「や、やぁ・・・」
杏「お、おはよう・・・」
もじもじしている2人。
凛太「あ、あのっ」
杏「あ、あのっ」
同時にしゃべりだし、照れ笑いをする2人。
凛太「僕、箱中凛太。よろしく」
杏「私、葉左上案。よろしくね」
しばらく見つめ合って奇妙な笑い声を上げる2人
その間を天田聖良(15)が押しのけて通る。
聖良「邪魔よ、どきなさい」
杏「ちょっとぉ! なにすんの!」
聖良「青春ラブコメならよそでやりなさい。(体をさすりながら)さぶいぼがでるわ」
杏「いきなりなんなのあんた・・・!」
聖良「ニキビできてるわよ」
慌てて顔を隠し、席に座る杏。
聖良は教室の奥にあった、豪華な特等席にすわる
杏「なにあいつ、むかつく!」
凛太「まあまあ落ち着いて・・・。あっ、ニキビの予防には洗顔とマメな保湿、夜更かしはさけて・・・」
杏、凛太を睨みつける。
凛太「(裏声で)うん、すっごくきれいな肌!」
林 若子(28)教室に入り、教壇の前にたつ。
林「皆さ〜ん、席についてくださ〜い。私立天田学園へようこそ、この学校は・・・」
聖良「(手を挙げて)は〜い。私の名前も天田〜。」
林「そ、そうね。実はこの学校の理事長はっ・・・」
聖良「(手を挙げて)は〜い。私のお父様〜」
林「え〜、そういう事もありますが、皆さん。彼女には皆と同じように普通に接して・・・」
聖良「私に尽くした人には楽に進学させてあげるわ。
あら、ペンが落ちちゃったわ」
落ちたペンを拾おうと一斉に飛びかかる生徒達
引きつった顔で見合っている凛太と杏
3.学校・職員室(朝)
東森、パソコンで書類を作っている
東森「今日から理事長の娘が入学してくるらしいから・・・。うまく立ち回らないとな〜。」
身振り手振りを交えながら呟いている東森
後ろから入ってきた陸がその動きをまねする
東森「うまく機嫌をとれば理事長にも私の良い噂が入って、いずれはこの私が校長の座に・・・。ぐっへっへっへ〜」
陸、東森の肩をたたきながら
陸「そのときは俺を教頭にしてよ〜」
東森「うっ、うわぁ! り、り、陸!」
陸「いやぁ〜。楽しそうな話してるからつい聞き入っちゃったよ」
東森「(立ち上がりながら)職員室に入ってくるときは挨拶ぐらいしなさい!」
陸「ごめんなさい。次からは気をつけますよ、校長せんせ〜い」
東森「ふっ!(睨み威嚇する) で、何のようだ?」
陸「実は相談があって・・・」
東森「駄目だ!」
陸「先生〜!(あきれた感じで)」
東森「ん〜、わかったわかった。どんな相談だ?」
陸「俺、クラブを作りたいんだ。」
東森「クラブを作りたい? またバカなこと言って。お前、今入ってるクラブはどうしたんだ? え〜と何だっけ」
陸「野球部。でももう行きたくないよ〜!だってあいつら年中飽きもせず鉄の棒振り回してるんだぜ? 頭おかしくなっちゃうよ」
東森「・・・。そりゃ野球部だからね〜。」
陸「でもさ、この学校、クラブ活動が義務づけられてるかなんかで・・・。 とにかくさ! 俺が続けられるクラブがないから、だったらいっそ自分で作ろうとおもってさ!」
東森「却下! どうせ、イタズラ部とか・・・そんなんだろ!」
陸「おっ、いいね〜それ! じゃあそっちに変更して・・・」
東森「わ、わ、わ! 待て待て待て! ちゃんと聞くから!」
陸「じゃあしっかり聞けよ〜。ちょっとまって・・・。じゃ〜ん。 映画部で〜す!」
大きな文字で「映画部」と殴り書きされた紙を取り出す陸
東森「映画部? お前にしてはまともじゃないか」
陸「だろ〜? これなら俺も部活動に専念できるとおもうんだ」
東森「しかしだな〜・・・。う〜む・・・。」
陸「俺、真剣にやりたいんだよ! 俺の目をみてくれ!」
陸、東森の顔に自分の顔をぎりぎりまで近づける
しばらく見つめ合う。
陸「先生!」
東森「うわっ! あ、あら〜!」
陸が叫ぶと、驚いてイスから転げ落ちる東森。
陸「先生! 先生! ・・・・」
叫び続ける陸。
東森「うるさい! やめろやめろ! わかった! じゃあこうしよう、今日の午後に行われる新入生の部活動見学会で4人以上の部員をあつめること! ま〜、元々部員が5人以上じゃないと部活動と認められないから、それが条件だ! これでいいだろ!」
陸「よしきた! じゃあ、後3人映画部に勧誘すればいいんだな!」
東森「3人? お前を入れるとして、もう一人いるのか?」
陸「新一! 入ってこいよ〜。」
陸が勢い良く扉を開けると、九園新一(16)が奇妙なポーズで立っている。
新一「話し合いはうまくいったみたいだな! 先生、始めまして映画部映画評論家の九園新一です(名刺を取り出す)」
東森「(受け取り)知ってるよ・・・」
新一「何としてもあと3人、勧誘してみせますよ! まあ任せてください! 僕がやるからには何も問題はない!」
東森「何をいっているんだね君は」
新一「映画はすばらしいですよ! 映画にかかれば先生のそのだっさいスーツも!(ボタンをはずし、ネクタイを引っ張る)」
東森「おうっ!?」
新一「時代遅れの髪型も!(髪の毛を手で崩す)」
東森「ぬぅっ・・・」
新一「吐き気を催すその顔も!(顔を指す)」
東森「くぅ〜!(怒りが込み上げる)」
新一「映画なら全てが許されるんです! ヒットでも飛ばそうものなら・・・。(大声で)校長の座どころか、理事長の座さえもあなたのものに・・・!」
東森「あー! あー! あー! いいから! 分かったから早くいきなさい!」
陸「よしっ! 新一! あれやるぞ! お楽しみは〜・・・?」
陸・新一「これからだ!」
陸と新一、勢い良く職員室を飛び出す。
机に顔を何度も打ち付ける東森。
4.学校・学生ホール(昼)
新入生を勧誘したいクラブ員と、どのクラブに入ろうか迷っている新入生とでごった返している。
凛太「うわ〜。色々なクラブがあるね」
杏「そうだね、どのクラブにはいろうかな〜」
聖良が歩いてくる
聖良「あら、あなた達まだ決まってなかったの?」
凛太「聖良はもう決まってるの?」
聖良「私は部活はしないわ。生徒会にはいるの。当然生徒会長は私よ、いえーい!」
凛太「不安すぎる・・・」
杏「じゃあ凛太は何部にするの?」
凛太「僕は機械工作部。」
杏「へ〜! すごーい!」
聖良「そんな部活あるの・・・?」
凛太「あるよ〜! 毎年ロボットコンテストにも出場するほど優秀な部活じゃん!」
聖良「・・・初耳だわ!」
杏「本当に理事長の娘?」
聖良「そんなくだらない事はどうでもいいのよ! 私は生徒会で忙しいの!」
鞄から手帳のような物を取り出しじっとにらむ聖良
凛太「そんなに予定が詰まってるの?」
聖良「違うわ、鏡よ。 メイクが崩れてないか確認しないと。あー忙しい!」
杏「これが私たち生徒の代表になるんだね・・・」
凛太「・・・暗黒時代の幕開けだ・・・」
その場を去ろうとすると、向こうから陸と新一が「映画部」と書かれた横断幕を掲げ、メキシカンハットをかぶり、マラカスを振り、歌いながらこちらにむかってきた
陸「へいっ! 映画部!」
新一「映画部!」
陸「映画部で〜楽しい!」
新一「学園生活を送ろう!」
新一、キレのいい変なダンスを踊る。
しばらく歌い続ける2人
凛太「・・・。え〜っと機械工作部は・・・」
陸「おっ! 待てよ待てよ凛太!」
去ろうとする凛太の肩をつかみ、陸が引き止める
凛太「やめてー! 巻き込まないでー! 僕は変態じゃないーー!」
陸「落ち着けって。お前、機械系得意だったよな?」
凛太「うん。まあ・・・」
陸「よーし決定! お前は今日から映画部カメラマンだ!」
新一「いえーーーい!(マラカスを振る)」
杏「カメラマンだって! すごいじゃん!」
凛太「ちょ、ちょっとまってよ。僕はもう入るクラブが決まっているんだから」
陸「あ〜? 何部だ?」
凛太「機械工作部だけど・・・」
陸・新一「おえーー!」
凛太「なんか文句ある!?」
陸と新一が凛太を囲む
新一「おおありだよ! ぜんっぜんいけてない!」
陸「そんなオタク部絶対やめとけ! 待っているのは悲惨な高校生活だけだぞぉ〜!」
凛太「でも・・・」
陸「でもは無しだ! お前を必要としている人がいるんだ。協力しよろー」
凛太「悪いけど、もう陸には流されないからね。僕は僕のやりたいようにやるんだ」
杏「残念、カメラマンの凛太みたかったのに・・・」
凛太「僕、映画部はいるよ! カメラマンになる!」
陸「よーし決まりだ!」
陸、凛太に映画部とかかれたたすきをかける
新一「君、なかなかいいね。どう? 映画部はいらない?」
杏「えっ、わたしが?」
陸「君なら大女優になれるよー」
じわじわと杏に寄っていく陸と新一
それを押しのけ、割って入る凛太
凛太「杏、一緒にやろうよ。」
杏「ん〜わかった、いいよ。なんか楽しそうだし」
陸・新一・凛太「いよっしゃー(ハイタッチ)」
陸、杏にたすきをかける
聖良が向こうから歩いてくる
聖良「あら、あなた達はいるクラブは決まったの?」
杏「うん。映画部に入ることにしたよ」
聖良「映画部!? きゃー、私映画大好き! あれって儲かるんでしょ? 興味あるわ!」
凛太「でも生徒会で忙しいんじゃ・・・」
聖良「あんなのもう絶対いやよ! 皆でボランティアをしようって言い出すのよ? あいつら悪魔の使いだわ・・・。」
凛太「悪魔に感謝する日が来るとはおもわなかった・・・」
聖良「私監督をやってみたいの! 大ヒット映画を作って、ハリウッドセレブの仲間入りだわっ!」
陸「ちょっと。ちょっとまった。監督は俺だ。かってに決められちゃ困る」
凛太、陸をひっぱり、耳打ちする
凛太「ちょっと陸、彼女学校の理事長の娘だって! 逆らうと廃部にされかねないよ」
陸「理事長の娘・・・。いいこときいちゃった〜(満面の笑みになる)」
陸「悪いけど監督は駄目だ。でも、もっといい仕事をまかせる。君にはプロデューサーになってもらう!」
聖良「プロデューサーって何?」
陸「え〜っと・・・プロデューサーって言うのは・・・。偉い人だ!」
聖良「偉いの? 一番?」
陸「あぁ」
聖良「じゃあ私それやる!」
陸「よーし決まり!」
聖良「きゃー! はっ! (周りを確認し冷静を装って)しょうがないわね、入部してあげるわ」
陸、後ろを振り向く
陸「(小声で)理事長の娘か〜。利用しがいがあるぞ〜!」
凛太「陸っ!」
陸「よーし。部員はあつまったぞ! 早速先生に報告だ!」
陸に続いて、学生ホールを後にする新一、杏、聖良。
凛太はひとつため息をついてから走ってついていく
5.学校・2年1組(昼)
きれいに机が並べられた教室の教壇にたつ東森
東森「奇麗に整頓された机・・・。これほど美しい物は無いな。将来、ここで勉強をして卒業をした生徒が大物になって戻ってくる、そして私にこう言うんだ。先生! あの時はありがとう! ・・・とっ 」
陸「せんせーい!」
陸、凛太、新一、杏子、聖良が勢い良く扉を開けて机を押しのけて教室に入ってくる。それを愕然とした顔でみる東森。
陸「戻ってきたよ先生!」
東森「君は刑務所にでも入って二度と戻らないで欲しいよ!」
陸「約束通り、ほら、5人つれてきたよ!」
全員笑顔で東森を見つめる
東森「確かに5人集めたようだが、顧問の教師がいなければ部活とは認められない! ど〜こにお前らなんかのクラブの顧問になる教師が入る? はっ! どこにもいないね! お前の悪ふざけもここで終わりだ! ははははは!」
じっと東森をみつめる陸。
東森「な、なんだその目は・・・。。私はやらんぞ! そんなのごめんだ」
陸「おねが〜いせんせ〜。先生しかいないんだよ〜」
東森「やだったらやだね〜!」
新一、東森の肩に手をのせる
新一「先生。よく聞いてください・・・。映画ってのはいいもんだ・・・。」
東森「だからどうしたんだ・・・」
杏「先生! おねがいします!」
東森の手を握りしめる杏
東森「い、いや〜。(照れながら)」
聖良「あなた。私プロデューサーよ。一番偉いんだから私に従いなさい!」
東森「何なんだね君は・・・。」
凛太「先生・・・。」
東森に近づき、そっとささやく用に話す凛太
凛太「お願いします先生。陸が今までに無いくらい真剣になっているんだ・・・。普段ならイタズラのことしか考えてないのに・・・。先生、顧問になれば普段から見張ることもできるんだよ」
東森「問題抑制にもなるわけか・・・ん〜。しょうがない! 私が映画部の顧問になってあげよう」
陸「いやったあー!」
東森「ただし! 今後また迷惑をかけるようなら、その時点で私は顧問をやめるから、そのつもりでな!」
陸「はいっ!」
凛太「やったね! 陸!」
新一「これで僕たち仲間だな」
杏「えぇ、良い作品つくりましょ!」
東森「まぁ、誰であれ生徒のがんばる姿をみるのはいいものだ・・・」
聖良「これであなたも映画部の一員ってことね。じゃあ一番偉い私のために励みなさい」
東森「君は何も考えていないのかな〜(笑顔で)」
X X X X X
陸、黒板の前に立っている。
凛太、新一、杏、聖良は机に座っている。
教室の端に東森が立っている
陸「よーし、それじゃあ企画会議だ。なんかアイデアあるやつ〜?」
誰一人手をあげない。
陸「おいおいおい! きみらは何しにこの部にはいったんだよ! 何でも良いから言ってみろ」
静かに手を挙げる東森。
東森「高校生が学業に専念し、大学を目指すっていう映画はどうかな〜。撮影期間は卒業まで〜」
陸「先生。俺たちは真剣なんだよ! ちょっとは信用してよ〜」
東森「はいはい、わかったわかった」
陸「じゃあ〜・・・。好きなことは何だ? 答えて。」
凛太「なんでそんなこと聞くのさ?」
陸「こういう何気ない事が作品に繋がるんだよ! じゃ〜凛太から」
凛太「機械いじりかな」
陸「機械・・・っと(黒板にかく) 次!」
新一「僕は、ダンスだな(軽く変な踊り)」
陸「なるほど〜(黒板に書く)」
杏「私は歌が好き!」
陸「いいね〜!(黒板に書く)」
聖良「私のために働いてくれる下僕〜!」
陸「下僕!? 趣味悪いな・・・(黒板に書く)」
東森「私は、先生の言う事を素直に聞いてくれる生徒かな〜」
陸「まだいってるよ! まあいいか・・・(黒板に書く) よーし出そろったな!」
凛太「これをどうするの?」
陸「これを合わせてシナリオを作るんだ。ん〜、そうだな〜・・・」
黒板を眺める陸
陸「よしっ、出来た! タイトルはこうだ。“地獄の優等生”」
杏「変な名前だね・・・。どんな話?」
陸「ある不良生徒がいるんだ。」
東森「誰の事かな〜」
陸、東森の事を少しにらむ。
陸「そいつはダンスが好きなやつなんだけど、石頭の間抜け鬼教師によって改造人間にされてしまうんだ。間抜けな教師は誰の事かわかるよね〜」
東森、陸をにらむ。
陸「改造されたせいで大好きなダンスも踊れなくなってしまった。ロボットダンス以外は・・・」
新一「それはかわいそうだな!」
陸「それで、改造されて無理矢理優等生になった不良生徒は毎日その教師の下僕のように勉強させられるんだ。」
聖良「まぁ! 下僕に知恵をつけさせちゃ駄目よ。反乱を起こすから!」
杏、驚いた表情をする。
陸「その通り、改造不良生徒は反乱をおこして、歌いながら先生をやっつけるんだ!」
杏「なんでそこに歌が入るの?」
陸「杏の意見を取り入れたんだ! 感謝してよ!」
凛太「それにしてもすごい作品になりそうだ」
陸「すごい作品にするんだよ! さぁ、早速準備だ!」
陸、凛太、新一、杏、聖良、教室から出ていく。
X X X X X
陸、扉を開けて教室に入ってくる。
でかいメガホンをもち、“陸”と書かれたイスにすわる
聖良、教室に入ってくる。
派手なスーツを着て、ピンヒールを履いている。
聖良、手帳のような手鏡でメイクチェックをする
東森「君らは形から入るんだな・・・」
杏、教室に入ってくる。
長ランにモヒカンヘアー。
東森「いつの不良なんだよ!」
杏「ばりばりだぜ! ・・・。きゃは! いっっちゃった〜! 一度この台詞言ってみたかったんだ! モヒカンもかわいい〜!」
東森「君も立派な映画部員だな・・・。やはりどこかおかしいよ」
凛太、教室に入ってくる。
凛太「やぁ、またせたね」
凛太、人形のロボットをコントローラーで操縦している
東森「なんじゃこりゃ!」
陸「すげえ! それお前作ったの!?」
凛太「機械工作部に持っていくつもりだったんだけど・・・。役立つと思って!」
陸「さっすが俺の弟だぜ〜!」
新一、教室に入ってくる。
新一「みんな、撮影時間は・・・」
一斉に新一の方を注目する。
新一「な、なんだよ・・・」
陸「まさか新一が普通の格好でくるなんてね〜。期待してたのに。」
杏「残念」
凜太「いや、別にいいんだけど~・・・。はぁ・・・」
聖良「出直してきなさい」
新一「何っ!? 一発芸でもしなきゃだめなわけ!? まあ俺は今回特に何もしないからね。」
東森「なんで? 映画部の部員なのに・・・」
新一「僕は映画評論家だ。映画が完成してないと仕事が無いんだよ!」
東森「はいはい、そうですか・・・。」
聖良、手を叩きながら。
聖良「そろそろはじめましょうよ! じゃないとこの後、美容院に行き遅れるわ」
鏡をみながら髪の毛をいじる聖良。
陸「じゃー皆、はじめるぞ〜! 位置につけ!」
凛太・杏「おー!」
凛太、カメラ位置につく。
杏、カメラの前に立つ。
新一と聖良は、陸のイスの横に並べられたイスに座る。
陸「ちょっと先生! なにやってんだよ、早くスタンバイして!」
東森「えっ! えぇ〜! わ、私がっ!?」
陸にひっぱられ、カメラの前に連れて行かれる東森。
陸、イスに戻る。
聖良「がんばれ〜!」
新一「いよっ。大根役者!」
陸「準備は良いな〜。よ〜し、気合いをいれて・・・。」
東森「ちょ、ちょっと待て! 台詞も何も・・・」
陸 「よーい、アクション!」
東森「ふはははは! お前を優等生にしてやる!」
杏「ちくしょう、この俺がこんな間抜け教師につかまるなんて!」
東森「よーし、早速改造開始だ!」
東森、杏を教壇の後ろに連れて行き、レンチやドライバーを持って、改造するまねをする。
東森「じゃじゃーん! 優等生ロボの完成だ!」
ロボット、教壇の後ろからでてくる。
東森「よーし優等生ロボよ、この問題集を解いてみろ」
東森、問題集を手渡す。
ロボット、問題集を床に叩き付ける。
東森「ちがうちがう! これを解くんだよっ!」
東森、問題集を拾い、再びロボットに渡す。
ロボット、問題集を東森の顔に叩き付ける。
ロボット、雨に唄えばを歌いながら東森に襲いかかる
東森「うわっ〜! ぎゃ〜!。や、やめろやめろ! いやああああああ」
陸「カッァト! いいよ〜。先生、中々演技うまいね〜!」
凛太「違うよ陸・・・。コントローラーが壊れて制御できないんだ・・・」
陸「・・・てことはマジに教われてるわけ?」
東森「たあああすううけえええてええええ!」
杏、様子を見るために教壇の後ろから出てくる
ロボットに持ち上げられる東森
陸「やばいっ!」
ロボット、東森を窓の外に投げ飛ばす。
東森「ぎゃああああああああ」
SE 水しぶきの音
静まり返る教室。
聖良「これで撮影は終わりね。じゃあ私美容院いかなきゃ」
聖良、教室を出て行く。
新一「僕も特に仕事無いし、そろそろかえろうかな〜・・・」
新一、教室を出て行く。
杏「私も衣装きがえないと・・・!」
杏、教室を出て行く。
陸「やっちまったな・・・」
陸と凛太、顔を見合わせる。
X X X X X
ジャージを着た東森、教室に入ってくる。
東森「私がいいたいことはわかるよな?」
陸「言わなくてもいいんだよ〜・・・」
東森「いいや、言うぞ。映画部は今日限りで廃部だ!」
凛太「まってよ先生! 今回は僕の責任だ。僕が退部するから映画部の顧問を続けてください!」
陸「いや、凛太じゃない、俺の責任だ。」
凛太「違うよ! 僕が悪いんだ!」
陸「映画って言うのは監督に全責任があるんだよ! 」
凛太「僕があんなロボットをつくったせいだよ!」
陸「それも含めて俺の責任だ!」
凛太「なにー!」
陸「やるのか!?」
東森「まてまてまて! やめなさい!」
東森が2人の間に割って入る。
凛太「先生・・・。ごめんなさい。僕、なんでもするから映画部はやめないで」
東森「どうしてそこまでこだわるんだ?」
凛太「陸が1つの物にあんなに真剣になってるところ初めて見たんだ。それを僕のせいで壊したくなくて・・・。」
陸、凛太の頭を押さえて拳でぐりぐりする
陸「こいつ、弟のくせに生意気いいやがって! 終わりなもんは終わりなんだよ!」
凛太「痛い痛い!」
東森「分かった。顧問を続けるよ」
陸「えっ、本当!? やったあ!」
陸、凛太を投げ飛ばす。
凛太「陸〜!」
陸「あっ、ごめん。ついうれしくて」
陸、凛太の手を取る
東森「今回は凛太の思いに免じて許してやる。映画を作るって言うのは思ったよりも難しいって分かっただろ? 今後も色んな問題が起こるとだろう・・・。陸、その時も自分だけでなく、全スタッフの責任をもって行動するんだぞ」
陸「まかせろって。いつかは先生も助けてやるよ!」
東森「お前だけには借りはつくりたくないな!」
教室の扉が開く。新一、杏、聖良が教室に入ってくる。
杏「ごめんなさい、私たちも仲間なのに・・・」
新一「陸、お前がそこまで考えてると思わなかったぜ」
聖良「映画作り、続けても良いかしら」
陸「もちろさ! よーし、箱中組ここに結成だ!」
一同「いえーい!」
全員中心に手をかさね、大きく上に上げる
東森「あ」
東森、床においてあったロボットのコントローラーを踏む。
ロボット、雨に唄えばを歌いながら襲いかかってくる。
陸「にげろおおおおお!」
(終わり)