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10 唐突な告白

 諦めよう、とミラノは固く結んだ口を開いた。いつだってなんだかんだとミラノの悩みを聞いてくれていたベルラーギに、隠すだけ無駄だったのだ。


「……レヴァンに、恋人ができたの」

「あ、知ってますよ。アカシアさんでしょう?」


 俯きながらぽつりとこぼした最初のことばで、ミラノは重大な告白をしたつもりだった。しかしあっさりと肯定され、なんなら相手の名前までぴったりと言い当てられて、ミラノは目を見開いた。なんで知ってるの、と視線で問いかけたのが分かったのか、ベルラーギは続ける。


「アカシアさん、有名ですから。僕のクラスでも話題になってましたよ」

「そうなの?」

「はい! あの伝説が、恋人をつくったって盛りあがってましたけど……もしかして、悩みはそれですか?」

「……まあ」


 ミラノはばつが悪そうに頷いた。同じ部活だったころ、さんざんレヴァンを好きになる女の子の気が知れないと笑っていたミラノだ。まさかレヴァンの性格をよくわかっていて、尚且つ恋人の話を一番に聞いている自分が彼に恋をしたなど、話せるはずもない。そんな迷いを知ってか知らずか、ベルラーギは笑っていった。


「あ、レヴァン先輩からののろけがあまりにも鬱陶しい、とかですか?」


 あまりにも検討外れなことを言われたミラノがぴたりと押し黙った。誤魔化せる機会の到来である。しかしミラノが何かを言う前に、ベルラーギが苦笑いで「冗談です」と言った。


「ミラノ先輩、……レヴァン先輩のこと、好きなんですね」

「…………」


 言葉にしてしまえば、後戻りはできない。そんな気がして、認めてはいた恋心を隠そうとだまりこくったミラノに、ベルラーギがへらりと笑ってみせた。なんにも言わないなんて、とベルラーギは言う。


「それはもう「そうです」って言ってるのと同じですよ」

「そうかな……」

「そうですよ。まさかとは思いましたけど……」

「……そうだよね。幼馴染みだったのに、いきなり好きだなんて……」

「いや、そういうことじゃなくて」

「……? どういうこと?」

「……内緒です。教えてあげません」

「いじわる」


 そう言って苦笑いするミラノ。いじわるでごめんなさい、と可愛い子ぶってみせたベルラーギは、やがてミラノに問いかけた。


「それで、どうしたいんですか?」

「…え?」

「いろいろあるじゃないですか。レヴァン先輩ともっと一緒にいたいとか、今の関係を崩したくないとか、付き合いたいとか、」

「それはない!」


 思わず声を荒らげたミラノは、はっとして口を押さえた。少し驚いた顔をしたベルラーギが、面白そうに目を細める。「珍しいですね」と言われて、顔が赤くなった。


「……付き合いたいとか、ないよ。レヴァンと先輩の邪魔するようなことしたくないから」

「邪魔って……そんなことないと思いますけど。ミラノ先輩あってこそのレヴァン先輩じゃないですか?」

「それは、幼馴染みだからだよ」


 自虐的に笑ったミラノに、ベルラーギがへぇと頷く。それから、出会った頃より少しだけ男らしくなったが、未だ中性的な顔を悩ましげに歪めた。もう一度ミラノに問いかける。


「それじゃ、結局先輩はどうしたいんですか? どうしたいか分かんないとか?」

「………ううん、分かる」

「もしそれができたら先輩は楽になりますか」

「そう、だね。……それができたら、きっとすごく楽になる」

「それじゃ、教えてくださいよ、それ。僕にできることなら手伝いますよ」


 いいよ、とミラノは言った。それが、ベルラーギに手伝える事じゃないのも分かっていて言った。

 ……つもりだった。


「わたしね、レヴァンへの……その、気持ちを忘れたい、かな。まっさらにしたい。幼馴染みだったころみたいに」


 小さな声で放たれたミラノの願いに対するベルラーギの返答は、ミラノの予想の斜め上を強打するようなものだった。



「……それなら、」

「ん?」

「僕と付き合ってくれませんか、……ミラノ先輩」


 ミラノに向き直ったベルラーギの瞳がミラノを映す。少し震えたベルラーギの声がミラノの耳朶に触れるのと、ミラノが目を見開くのは同時だった。

 ………ラーギは、何を言い出したの。

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