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6ー救助

 月の光が差しているのか、地面は明るい。人が幾人が倒れているが何があったのか。

 それに。

 ここはどこだろうと夢想する。

 

 少し見渡せば綺麗な壁。町・・・かな。

 道も綺麗・・・ではないな。汚い箇所もあるが、住めなくは無い。


 灰色の壁はどこか城壁を思わせる。

 だかところどころ赤い。ペンキで塗ったのだろうか?

 それにしても中途半端な塗り方だな。

 そのペンキをこぼした本人だろうか、赤い水面の上に少女が立ち、笑ってる。

 いや・・。なんだか違う。

 『笑う』んじゃなくて『嗤っている』のか。

 分からないが、雰囲気はただ事じゃない。何かが起こっているのだ。

 場を動こうにも視点は貼り付けられたように少女を見つめている。

 見つめて見つめて・・・。穴が開くほど見つめて。


 気付けば茶色い天井。木の文様から素材は木材。

 身体を起こすと獣の毛皮だろうか?が掛けられていた。

 どうやら眠っていたらしい。

 身体を起こす際にずり落ちた毛皮の下には衣類が無かった。

 ・・・。衣類がない?つまり裸?なぜに全裸?

 た、たたたたしか全裸というのも可能であったきがする。

 過去に一度アバターを全て外した己の姿を思い出し一人赤面する。

 そして目線を彷徨わせ、結局見下ろす。

 確かゲーム中ぐらいは女の子が良いと設定するも、胸は男のように平らにしたか。

 ちなみに乳首や性器といった局部は全て無くなっている。

 理由としては必要ないからという運営からの配慮だが・・・。

 えろかった。ただえろい・・・。無いえろすを知ってしまった時期でもあった。

 とまあそんなのはどうでもいい。無い胸を見下ろし。


「・・・・・・。」


 無言というのもオカシいかもしれないが。今は言葉よりも驚きが上回っている。

 綺麗なピンク色の突起。桜色とも取れる綺麗な・・・。

 嘘だろおい・・・。


「あ、起きたんだね」


 声が投げかけられるが、そんなものもどうでもいい。何せ裸体だ。

 設定上は未熟児の体系。この体系はもう男子と見紛う程の出来栄え。ていうか基本皆そういうものかもしれないけれど。

 いやいや、だけれど・・・。設計者本人である方は知っている。性別上は女だ。つまるところ、女の裸体・・・。

 ゲームプレイ中に何度かふざけてアバター脱ぎというのは幾度としたことはあるが、他のプレイヤーには見えない特殊エフェクトで妨害・・・。長くなるから割愛だ。

 取り合えず・・・。彼女もいない人には初めての・・・。おお・・これは・・・。すごいな。


「・・・えっと、君?」

「うるさい少し黙っていろ」


 俺の返答にうろたえているのか次の声は聞こえない。

 そんな考えも瞬時に消えうせ視点はまじまじと胸を見つめる。

 小さな双曲。無いにも等しいが成長が見込める双曲である。わからないが。

 触ろうと手を伸ばすが手がとまる。

 待てよ、と。俺は誰かと言葉を交わした?

 それはいつもの一人問答ではなく?そのいつものせいでダチは少なかった訳だが・・・。

 ここで声を掛けてくるのは第三者他ならぬ他の者。

 伸ばした腕をクロスさせ、上と下のアレを隠し視界を向けると。


「えっと・・・。そのごめんよ・・・。診察のためにさ」


 てへへと妙に人間臭い仕草をするモノがいた。

 モノだ。


「お前は・・・誰だ。人じゃないな?」

「ヒト?」

「誰だ、答えろ」


 装備もアイテムも無い。

 襲われればゲームオーバーだ。

 か弱い乙女には自衛する権利がある。

 というか裸を見られるのは誰だろうが恥ずかしい。

 そして乙女の裸体は国一つ滅ぼそうが尊い。むしろそれ以上の価値があるのだ。

 つまりだな。


「あー・・・。そうだね・・・僕はなんて言えばいいのかな」

「早く言え。言わねば殺す」

「まあまあそう焦らないでよ」

「・・・怪しいな。新手の変態か?」

「変態・・・そうかもしれないね」


 冗談で言ったつもりがまさかこいつの正体を突き止めることになるとはな。

 どんなスキルかは知らないがアバターを脱がして眺めるのが趣味らしい。

 さて。どうやって殺すか。とまあとりあえず。


「きもい」

「違うからね?」


 一瞬で詰め寄られぎりぎりと首を締め上げられる。

 軽々と持ち上げられ、足は空を切る。

 苦しい・・・。何者だこいつ。会ってまだ数分だぞ・・・。


 意識が遠くなって目の前がよく見えない。

 体格差で言えば確実に負けている。

 相手は大柄の男性ぐらいの背丈だ。

 このまま熱い歓迎を受けていると首の骨が折られかねない。

 それだけは簡便願いたい。


「ひゅ・・・ぁ・・・っく」


 上手く声が出せない・・・!

 またこんな終わり方なのか?いやいや、そんなのは俺が許さない。

 相手は味方であってほしいが、この程度で激昂する奴にいい奴なんていない。

 だから一旦仮想的とする。そして対抗策を。


「君さ。会って間もない僕を殺すだの変態だのキモいだの・・・お行儀がなってないね」


 激昂しているな。締め上げられて相手の顔は分からないが。

 確かに酷いことは言ったが・・・。この勢いだとこちらが殺されかねない。


「・・ぁ・・・・ぅ」


 やばいぞ・・・。死ぬ。

 明確な死が目の前に迫ってる。


「ったく・・・。まだ未熟な固体だし・・・しょうがないか」


 宙を舞い、三転四転して視界が固定される。

 脳はぐらぐらと揺れて吐き気がする。

 器官は必死に空気を取り入れる。

 げほげほとむせながらもだんだんと息を整えていく。


「・・・何を、するん・・・だ・・・」

「口には気をつけるんだな小娘」

「っく・・・誰が」


 欠伸と同時にぎしりと何か軋む音がした。

 隣で。


「助けたのに恩も知らずにそんな仕打ちなんてね。君に似た固体達全員に共通する過ちだよねえ」

「何の・・・事」


 知らなくてもいいさ。声に続いて軋み沈んだ部分が元に戻ろうとする感覚。

 助かった・・・のだろうか?


「すまなかったね。疲れたろう?休めるだけ休んで、気が済んだら服を着て僕の元までおいで」


 半殺しにする程度で済ませてくれた・・・んだろうな。

 あの握力・・・獣・・・いやそれ以上・・・。

 締め上げずにぽっきりと逝っていたかもしれんな。

 何故加減をしてくれたかは分からないが生存した事に喜ぼう。

 そして。


「甘えることにするか・・・」


 確かに体力を消耗してしまった。奴のいうことは素直に聞くべきだろう。

 全快したら聞きたいことがあるしな。

 さあ寝るか。

 

 

 


 

 

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