2-ここどこ
(なんだか身体が重いな・・・)
サーバーとかそこらへんの所為かも知れないんだが、何故だろう。
(視界が暗転したままだ)
俺が今プレイしているネットゲームは、オンラインで全世界の人たちがプレイしている。かなり有名でユーザー数は把握し切れていない。それもそうだ。物語はきっちりと作りこまれてあるし、装飾もかなりのものだ。体感はかなり現実味がある。ただ、やはり痛みなどの神経系統は軽減してある。痛いのはいやだしな。
それに、不正、悪質な行為は全てにペナルティ。取り締まりは厳しいからそれなりに治安は良い。男女のいざこざとか金銭トラブルは仕方がないとして。
(にしても珍しいな・・・こんなにロードが長いなんて…実装時だからか?)
今回の目玉イベントである討伐戦は、昔あったクエストのリメイク版だ。難易度が桁違いに難しく、成功した者は2桁あるかないかだったらしい。そのため運営は中止、侘びアイテム配布の処置を取った。当然怒っていたプレイヤーもいたが、その時に配布されたアイテムは今も上位層に愛用されているし、取引所じゃかなりの値段でやり取りされていたりする。
まあそういう背景もあったから古参者から新参者まで、みんなこの時を待ってたんだ。さぞかし面白いギミック、アイテムが・・・少し考えただけでも血が滾る・・・!
んだけど・・・一向にゲームが始まらない。
いつもならここで
『ゲームを開始します』
なんてポップが出て数秒すれば始まるんだが…
ハードの買い替え時期なのか?
いやしかし最近新しくしたばかりなのにそれはおかしい。
内心で呻きながらあれだこれだ思考している内に声が聞こえてきた。
「・・・」
「ー-・・・」
「・・・ー・」
(お、そろそろかな?)
視界も少しずつ明るくなってきて、黒より白の面積のが増えた。
初めてみた始まり方だけど、多分昔のバージョンなのだろう。
なにせ数年前の掘り出しクエストなんだしなぁ。
時を越えて現代に蘇る・・・
なんてロマンチックな~。
などと暢気に考えていた自分をぶん殴ってやりたい。
声がより鮮明に聞こえて、視界も完全に晴れ渡り、目にしたのは一面の木。
木、木、木、木、つまるところ森かな。
明らかにおかしい。
何がおかしいかといえばもう既にいろいろとおかしいな。
まず、出現場所。
毎度「酒場」という特定の場所で入場し、ログアウトは基本的に街で行うのがマナー(まあ実際はどこでもだいたいログアウト出来る)なのだ。
で、俺の出た場所、森なわけだ。
次に視界。
これが感覚なのだが、妙にいつもの感じがする。
というのも現実世界のそれと酷似している。
いやまぁ確かにこのゲームもそれなりに頑張っちゃいたほうだが、ここまでのクオリティではないはず。
それとさっきまで聞こえていた声の正体、それは風と木々の擦れる音だった。
全然声じゃないジャン!突込みをいれつつ装備品を確認する。
もう既に数え切れない程繰り返した動作。
装備欄を表示させて・・・
「これは普通にできるんだな」
普段と特に違いはない操作方法で、あっけなくステータスが表示される。
▼
タク
lv100
▲
(・・・あれ?)
レベルはカンスト表示であっている。
上限がそれだ。
しかしそれ以降の記録が無い。
一回表示を取り消し、再度表示させる。
しかし何も変わらない。
首をかしげながら見つめる。
さりとて見つめても解決はしないので取り合えず後回し。
状況確認・・・
・森の中
・ステはカンスト(lv以外はわからん)
・・・そういえば装備が無いって・・・
は、はははは裸・・・?
い、いやそれはない、はず。
恐る恐る視線だけを手に向ける。
と、その前に武器が無い事を思い出す。
まあ武器といっても魔法職だから杖なんだけど。
杖といえばロッド系統の珠が付いたのが一般的だな。
俺のロッドも例に漏れず一般的のだった。
だったのに・・・無い!
魔法職なのに武器が無い!
MPはあるはずだから何か魔法使えるかもしれんけど!
しばらく杖を探して、結局何も見つからなかった。
ただただ木々と草が広がる森だった。
正直圧巻させられるほどの緑さだった。
さてどうしよう。どうしようもないぐらい迷子だ。