6話
「めぐみちゃ~ん、今日も出てこれない?」
かつこさんの心配そうな声が聞こえる。でも今の私にはとても外に出る気力がない。
「……別に出てこなくてもいいの。でもご飯だけは食べてね。体がもたないわ」
そう言い残して、かつこさんの足音が扉の前から遠ざかっていく。ドアの取っ手には、毎日のようにご飯の入った袋が掛けられていた。
幼馴染を振り切って、泣きながら帰宅した夜から数日後。私はずっと部屋に引きこもっていた。
「…おじいちゃん」
気づけばおじいちゃんの姿はなくなっていた。幽霊のおじいちゃんと話した時間が、まるで遠い幻のように思える。あるいは、最初からそんな出来事などなかったのだろうか。おじいちゃんを失った私の悲しみが作り上げた蜃気楼だったとでも言いたげに、私の部屋は何一つ物音を立てない暗闇と同居していた。
ドンドン! ドンドン!
すると、突然玄関の方から音が聞こえてきた。
「誰だろう…呼び鈴もならさずに」
「めぐみ! おれだ、さとしだ!」
扉越しから幼馴染の声が聞こえてくると、私の歩みがとまる。
「会社の方から頼まれて様子を見に来た! …いや、俺がお前のこと心配だから来たんだ。ここを開けてくれないか?」
今の私には幼馴染に会わせる顔がない。そっと廊下を引き返そうとする。
「会えないっていうならそれでもいい! でも俺の話を聞いてくれ。お前が苦しんでる原因はさかきさんなんだろ?」
私の足が動きを止める。
「お前がたった一人の家族を亡くして、平気でいられないのはわかってる。いや、それがどれだけでつらいことなのか、きっと俺には想像もつかないことなんだろう。でも、俺はお前のことを家族だと思ってる!」
違うよさとし。きっとおじいちゃんは関係ないんだ。
「幼馴染でも腐れ縁でもない。お前との関係はもっと大切なものなんだ。だから、お前が望むなら…」
そのままなら、きっと気づかなかったと思うから。
「俺の家族になってくれないか、めぐみ!」
私は扉を開けた。