1話
私は棺桶の中に入っている人を見て、誰よりも泣いていた。
「おじいちゃ~ん」
私にとっては最愛のおじいちゃんだった。父はガソリンを積んだトレーラに轢かれ、ガソリンが引火して亡くなった。母は私を生んで過労で亡くなった。おばあちゃんは私が生まれる前に亡くなっていた。残ったのは、おじいちゃんと私だけだった。私が大学を卒業するまで大事に育ててくれた人だった。
だが、今日その最愛の人が亡くなったのだ。
私は夜が明けるまで泣き続けた。
☆
朝起きると、棺桶に私は寄りかかったまま寝ていた。
「めぐみ。おい、めぐみ」
何故か、おじいちゃんの声がする。寝ぼけているのだろうか。
「こっちじゃ、めぐみ」
また、おじいちゃんの声がする。恐ろしかったが、声のする方へ振り向いてみる。
「なに、泣いとるんじゃ。わしはピンピンしているぞ!」
目の前には幽霊になったおじいちゃんがいた。
「でっ、でたーーーーーーーー!」
「どうしたの、めぐみちゃん?」
「で、出たんです!」
「何を見たって言うの?」
「おじいちゃんの幽霊が出たんですよ!」
「めぐみちゃん、おじいちゃんは亡くなったのよ。しっかり現実を見たほうがいいわ」
そうだ。これは夢なんだ。おじいちゃんは死んだ。
「なに、死んだのは確かなんじゃ、成仏するまでは幽霊としてピンピンしているぞ」
また、おじいちゃんの声がする。今度は驚かない。おじいちゃんはもういないのだから。
「なんでですか、おじいちゃん。幽霊として化けて出てきたんですか」
「あぁ、やり残したことがあったからな」
「何ですか?」
「お前と結婚式をあげないといけないじゃろ」
中学生の頃から、純粋な気持ちで私はおじいちゃんに恋をしていたのである。大学4年生の頃におじいちゃんに告白してから、おじいちゃんとお付き合いしていたのだ。