秘密が一つバレまして
21時くらいにもう一つ載せるかも
そしたらまた、間隔空いちゃうけどね…
学校へ行けと言われてから一週間経った。
その間もきちんと弓の練習はサボらず、魔法を放ったことがないが魔力操作も怠らずにやっている。
あー。学校行きたくない。やだなぁ……やだなぁ……。
とか思っていようが、口に出して言っていようが。
結局は学校に通わされることになるんだけどね。
ただ、問題があるとすれば。
「何一つ、学校について教えてもらっていないんだけど」
俺の愚痴は誰にも届かない。まあ、一人で部屋にいるのだし。当然といえば当然か。
タイミングがいいのか悪いのか。前世の暦でいうと、三月に生まれたらしい俺は誕生日を迎えてすぐに学校へと編入するための試験を受けるらしい。
ただ、その内容も。学校についても聞かされていないのだ。試験を受けるっていうこともサラッと言われてそのまま流されたし。
いまさらだが、この世界での暦はよくある地球とほとんど一緒である。
作者が考えるの面倒とか思っていたけれど、仮に違ったとしても分かりやすく伝えるためなのだから致し方なしだな。
なんでも、はるか昔に生きていたとされる占い師が占ってできたようで。一月から十二月もそのまんまだが、全部が三十日までしかない。三百六十日である。
そして季節みたいなものも存在する…………とよかったなぁ。
冒険者である父親と母親によると、そういった場所もあるそうだが基本的に気候はほとんど変わらないそうだ。
確かに、この場所はずっとほのぼのとした陽気であったし、特別寒いとか暑いとかもなかった。
暦についていま、考えていたが…………はっきりいって時間の無駄である。
必要な時がないし、気候が変わる土地でも体感的に分かるからである。
一年が過ぎることさえわかればこの世界の住人は問題ないのである。
王都やそれなりにでかい街には今日が何月何日なのか分かるという魔道具があるらしいが……さして興味があるわけでもないし。
とりあえずはどんな学校なのか知りたい。
身体強化が使えることは両親とロニアの前で使ったから知っているとしても、魔法は使ったことないし、試してみろとも言われていない。
冒険者学校とか……だろうか?
さすがに、魔法が使えるかもわからないのに魔法学校に入れるとかはないだろう。考えられるとすれば、戦闘訓練所とか、育成学校だろうな。どれも似た意味か。
もしかしたら魔法と戦闘訓練が一緒の学校かもしれないが。
まず、どんな学校があるかも知らないし。
「…………ん」
「ただいま~」
軽い声とともにドアを開けた父親。
部屋を出て下に降りて出迎えると、父親に母親……その後ろに知らない人が三名。
人……でいいんだろうな。見た感じエルフとドワーフと獣人だもの。
「おかえり。後ろの人たちはお客さん? それとも冒険者仲間?」
「ああ、こいつらは仲間だ。ミオ、リビングで話がある」
自己紹介もしないまま、背中を押されてリビングへと向かう。
俺だけをイスに座らせ、対面に両親と冒険者仲間だという四名が立つ。ロニアは俺だけの飲み物を用意して後ろに控えている。
「まずは軽く紹介からだな。獣人のゲオル。ドワーフのコルギ。エルフのアンナだ」
「ミオです。いつも父がお世話になっています」
父親から紹介を受けたので、俺もイスに座ったままだが、軽く頭を下げて自己紹介をする。
「急でなんだが、明日から出発するぞ」
「…………はぁ」
いきなりそんなことを言われても、反応に困る。
母親にゲオルさんたち、俺の後ろでもロニアが嘆息しているのがなんとなく分かる。
みな、呆れているのだ。
「それは学校がある場所に向かうまでそれほど時間がかかるってこと?」
「ああ、そうだ。明日の朝から出て目的の場所につくのが試験日の前日だな」
「おい、もうちょっと余裕のある日程を組めなかったのか?」
到着するのが試験日の前日。それは仲間も聞かされていなかったらしく、コルギさんが顔をしかめながら尋ねる。
ってか、俺が誕生日を迎えるのって本当にギリギリなんだな。旅の途中で誕生日を迎えるのか。
「俺らの子だ。大丈夫だろ」
…………普通の子だったらアウトだけどね。
「…………はぁ。父さんがこうなのは今更だし、別に俺はいいよ。何を用意すればいいのか教えてくれる? あとは目的地、そこに着くまでの日数、俺が行こうとしている学校、試験についても」
指折り数えながら必要なことを述べていくたびに父親の顔色は悪くなり、それと同時に周りの人たちの父親に刺さる視線が冷えていく。
「抜けてる抜けてるって分かってはいたけど、何も伝えていないのか?」
「さすがにここまでくると終わっているわね」
「あなた、ちょっと二人きりでお話しましょ?」
「ああ、それがいい。その間に俺たちが教えておく」
あれよあれよという間に父親は母親に首根っこつかまれて引きずられながらリビングから出て行った。
「それで、まずは何から聞きたい?」
「それじゃあ順番に――」
☆☆☆
「まあ、こんなところか」
「ありがとうございます」
一通り、いま聞きたいことはすべて聞いた。
頭を下げて感謝を述べるが、ゲオルさんたちは『気にすんな』と照れているのか頬をポリポリとかいている。
種族も性格も年齢も違うはずだが、みな雰囲気が似ている。
やはり、類は友を呼ぶのだろうか。
いや、この人と母親は父親と一緒ではないと思いたいな。ただ、少しだけ似通った部分があるだけで。
気にするだけ無駄であるし、必要だと言われたものを準備するか。
向かう先は王都で、ここからだいたい二週間と少しらしい。
ロニアはお留守番で、父親たちが護衛で俺が護衛対象みたいな。
学校は剣士などの戦闘職と魔法の両方を募集しているために大きいらしい。
試験内容は指定された人と戦って一定の水準を満たさないといけないらしい。魔法はその素質があるかどうか。どれだけの魔法が扱えるか、だとか。
「なら、魔法のほうで受けてみようかな」
このまま弓だけを極めて行ってもいいのだが、やはり異世界なのだから魔法を扱いたい。
その欲求が無意識のうちに口から洩れたらしく、父親と母親はいまだに帰ってこないが四人に聞かれてしまった。
特に、エルフであるアンナさんがものすごく反応をあらわにする。
「ミオ君、魔法使えるの!?」
「いや、まだ無いけど」
「……そ、そうよね。ここじゃ学ぶも何も無いものね」
使ったことがないと言っただけでこの落ち込み用は何なのだろうか。
アンナさんはエルフだし、杖を持っているから魔法使いなのだろうか? もしくは精霊の力を借りるとか。もしそうだとしても、精霊なんて今まで一度も聞いたことないし、見てもいないことになっているため、地味に言動が制限される。
訳が分からないといった表情をしていると、ロニアが教えてくれた。
なんでも、魔法を扱うには幼いころから家庭教師などをつけて魔法とはなんなのかのイロハを教えてもらい、魔導書などを読んで理解しないといけないらしい。
しかもそれだけで誰もが使えるようになるのではなく、一番初めに素質があるかの測定を魔道具で行い、そこで素質がなければ諦めるしかないとのこと。
だからほとんどの魔法を扱えるものが貴族や有名な商人の子供など、金持ちしかいないらしい。
稀にだが平民などでも自身でその才に気づいて伸ばす子もいるが、まずいないと。
魔法を使えるだけで待遇などがよくなり、さらに魔法の才が伸びれば伸びるほどに将来の道もより良いものへとなっていくとか。上級魔法が放てるようになると、国に使えることができるとか。宮廷魔導士っていうのかな? 縛られるのは好きでないし、仕える気は全くないのだが。
「んじゃ、ちょっと外いこっか」
父親と母親はいまだに戻ってこないが、ロニアたちを引き連れて外へと出る。
皆はそれほど期待していないようだが、それが驚きに代わる表情を考えるだけで楽しみである。
それに、ようやく使えるかもしれないのだから。