時が経ち、大きな変化だそうです
評価、ありがとうございます!
「…………飽きたなぁ」
手元にあった矢を全て打ち終え、全て真ん中を射抜かれている的に視線をやりながら独りごちる。
現在、十一歳となりました。
もうすこししたら、十二歳になりますよ。
☆☆☆
四年前、母親がそろそろいいと言っていたもの。
あれは先頭訓練であった。
違う違う。
戦闘訓練な、戦闘訓練。
始めロニアは難色を示したが、面白そうだと思ってやりたいと俺が言ったため、本人がやる気ならばと引き下がった。
それじゃあさっそく。と言わんばかりにあの後すぐ外に出て行った。
そして木剣……というにはお粗末な木の棒を渡され、俺が思うように本気で打ち込んでこい。と、同じくお粗末な木剣を構える父親に言われたので、前世での妄想を行動に移すときが来たとばかりに手加減抜きで踏み込んでいった。
その時、失敗したのである。
毎日やっていたために、今では無意識でも出来るようになった体内での魔力循環。そこからの身体強化も五歳の頃からだったかやり始め、何かあった時など咄嗟に出来るようなっていた。
……今の所、何かあった時など無いのだが。
つまり、何が言いたいのかと言うと。
ちょっち加減間違えて、体当たりしてふとっばしちゃった。テヘッ。
……………………みたいな?
そんなこと。つまりは俺が身体強化を使えることなど予想していなかった父親は俺に飛ばされ、そのまま木にぶつかるというところで、さすがは現役の冒険者と言うべきか。
見事に体をひねり、両足で木の幹に着地して衝撃を殺していた。
ただ、その表情は驚愕に染まっており、周りも唖然。俺もビックリである。
「ミオ、身体強化が使えるのか」
「…………まあ」
あそこで惚けても良かったのだが、そうすると天才だとかなんだで対応が面倒だと思ったから素直に頷くことにした。
「それなら、ミオの進む道は剣士で決まりだな」
「い、一応は弓も試してみなきゃ分からないんじゃないかしら?」
今の会話で分かる人も多いと思うが、二人は剣か弓を俺に試させ、伸び代がある方に進ませようとしていたらしい。
初見で不意を突いたとはいえ、それなりの実力があるらしい父親を吹っ飛ばしたのだ。
父親は剣の道に決まったと確信し、母親は少し焦る。
二人とも、自身と同じ道に進んでもらいたいようだ。
「み、ミオ? 今度はこの弓を使って……そうね。あそこの木の幹でも狙ってみましょ?」
そう言ってだいたい目算距離で百メートル先の木を指し示す。
んんんん……マイマザー? 初めてやらせるにしては随分と酷なことを……。
前世で弓道部の人に何回かやらせてもらったり、お遊びのアーチェリー程度ならやったことあるのだが、この距離はさすがに初めてである。
それを言ったならば、木の棒みたいな木剣を使って試合……みたいなのをしたのも初めてだが。
取り敢えず弓と矢を受け取り、矢をつがえて引き絞る。
体全体に軽く身体強化をかけ、加えて目にも魔力を集中させる。
するとまるでメガネをかけたような、望遠鏡で覗いたような状態となる。
これをやると、生物がもつ魔力が見えるようになったりするが、まるで普段からそのように見えていたかのように問題なく動いたりできる。
夜、光の無い真っ暗な状態でも見えるようになるため、使えると思う。
「…………んっ」
目に魔力を集中させると、他にもその生物の弱点のようなものも見えるようになる。
ここの部分が脆い、またはここを攻撃するとヒビが入るなど。
矢を射ったときもそこを狙ったつもりだったのだが、数ミリずれた。
ピンポイントで狙わなければいけないうえ、木のような動かないものだと弱点も固定されているが、動く生き物になると弱点も移動する。
……よし、決めた。
「俺、弓の方にするよ」
その時の父親の驚いた顔は見ものであった。
母親も一瞬だけポカンとした後、よっぽど嬉しかったのか抱きついてきたし。
別に剣でもよかったし、両方の道に進んでも俺は問題無いといえば問題なかった。
だけど、ゲームでも俺は近接よりも遠距離系が大好きであった。
銃もライフルの超長距離狙撃などに憧れを持っていた。
…………べ、別に剣の方選んだら暑苦しい練習が待ってるとか、思って無いよ?
あとは面倒臭そうとか考えてないからね? ね?
まあ、身体強化はもととなる自身のステータスを倍増かな? だから弓を選んでも必要最低限の体力トレーニングはしていくつもりだ。
それに、弓を引き絞るのにも筋肉と、どんな体勢からも射れるように体幹も鍛えておこうと考えている。
それから親は冒険に行かないで付きっ切りで訓練……なんてことはなく。
生活があるために再び次の日から冒険に戻っていったり。
その際にこれをやっておけと宿題みたいな感じで訓練メニューを言いわたされた。
意外なことにロニアが少しであるが戦闘できることに驚いた。弓も少しばかりできるらしく、親がいないときは訓練メニューをこなしつつロニアに。
そして時たま帰ってくる親に修正されたりといった日々が続いた。
そして月日も過ぎて四年経ち、十一歳。
両親が帰ってきたときにいつも通り訓練……ではなく、リビングに集まっていた。
いつもは給仕に徹するロニアもお茶の用意もそこそこで、席についている。
父親がドンッ、と音を立てながら小袋をテーブルのうえに置く。
何事かと顔を見ると、ものすごく激レアである真面目な表情であった。
「ミオには十二歳になってから学校に通ってもらう」
…………うぇぇ、面倒くせぇ。
誤字脱字報告、嬉しいです