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13 告白?

大和さんに電話をしたら、




「普通のデート出来て良かったじゃねーか。で、どうだった?」とこの僕を嵌めておいて、しゃあしゃあと言うので、




「ますます大和さんを愛したくなりましたっ!おやすみなさい。」と言って切った。





ふー、まったく。





本社秘書室の彼女とは適当なレストランで食事して、彼女をタクシーに乗せて別れた。





仮に付き合うとしても、僕とは釣り合わない、育ちの良い女性。





自分とは違い過ぎる人間と暮らすなど想像もつかない。





僕の生い立ちでも知れば、向こうから敬遠するでしょう。





だけど大和さんには明かしたくない。同情なんてされたらおしまいだ。





同じ境遇の人に明かすのなら、同情にならないから気は楽かもしれない。





けど、そんな人は中々いない上に、好きになるとは限らない。





男も女も好きになった事がない。きっと自分は大和さん以外、好きになれない。





静かな住宅街の路地に入り、暖かそうな家々の窓の色を見たくないという風に、背を向けながら歩く瑞樹。





ふと、自宅アパートの対極にある電柱の陰に、ひらひらした影が見えた。





電柱に隠れきっていない、細い片足も見える。





・・・・・・





コツコツコツ、僕はアパートの階段を上り、二階の自宅玄関の鍵を開けた。





そしてすぐに、部屋の灯かりは点けずに、道路に面した窓から電柱の陰に立つ人物をレースカーテン越しに確認した。





・・・ふぅ、と僕はため息を一つ漏らす。





そして車の鍵を持つと、靴を履き、玄関を出て鍵を閉めた。





階段を下りると、「陽芽野さん、ここで何をしているのですか?」





僕は電柱の陰に隠れて僕の家を探る人物に声を掛けた。





ビクリと肩を揺らして、僕の顔を確認すると、青白い顔で小刻みに震え出した。





目の下だけ赤い。





手を伸ばして彼女の頬に触れると、とても冷たく、長い時間、外気に晒されていたと解る。





いつから、と訊く時間があるのなら、





「来なさい。」と手首を掴んで引っ張ると、彼女はその場に足を留めて動こうとしなかった。





ぽろりぽろりと零れる彼女の涙に、僕は「おいで。怒ってない。」まるで猫か犬に言うように話すと、こくりと無言で頷いて、ようやく足を動かした。





僕は猫が苦手だ。触れない。





だけど彼女は猫ではないから触れる。





車で彼女の家まで送ろうと考えていたが、取りあえずはお茶位、飲ませてからの方が良さだと判断して部屋の鍵を開けた。





パチと照明のスイッチを入れると、特段面白いものなどない部屋に、冷えて固まった彼女を引き入れる、これで二度目だ。





この部屋に入った人間も彼女の他にいないから、客人自体を招くのも二度目だった。





エアコンの設定温度を高くして、部屋を急いで暖める。





三宅正の真似をして、昔暮らしていた街の商店街にある店で作った半纏をクローゼットから出して、僕は彼女に羽織らせた。





「今、お茶を煎れますから、ここに座っていて下さい。」





「すみま、せん・・・」





ぐすっぐすっとすすり泣く彼女。僕は温めたタオルを渡した。





この場合、どうしたか訊いた方が良いのだろうけれど、察するに、





先程見かけた男性とデートをしたが上手く行かなかった。





そして、僕の家にやって来た。





・・・しかし、おかしいな。





映画館からなら彼女はそのまま家に帰った方が近いのに。





わざわざ電車に乗って歩いて僕の家まで来る理由がない。





そもそも、彼氏と上手く行かなかったからといって僕の家に来る時点で間違っている、と思う。





間違っていないとしたら、何か用事がある場合のみ。





その用事とは何だろう?





お茶を煎れた湯呑みを彼女の前のテーブルに置き、僕も普段使用しているマグを手に持った。





「僕に何か用事でもあったのですか?」ないと思うが、決め付けるのは良くないので、一応訊いてみる。





「訊きたい事が、あり、まして・・・」「何でしょう?」





「堀越さんと、別れてしまわれたのですか?」「堀越さんと別れて、とは?」





「先程、映画館で見かけました。堀越さんではない女性と、一緒にいるところを。」





「はぁ。それが?」





「堀越さんを好きとおっしゃっていたあなたが、どうして別の方といらしたのか知りたくて・・・」





「堀越さんを好きと、いつ僕が君に言いました?」





「え?・・・あの、会社の前でお会いした時、お耳が赤くなって、堀越さんとの事を私が言ったから、だと思っていたのですが・・・」





「会社の前?耳が赤くって・・・ああ、それは・・・」




思い出した。




あの時は、大和さんの事を言われていると思っていたのに、陽芽野さんは堀越さんと僕が、と勘違いしたのですね。





てっきり大和さんを好きだと解ってショックを受けて泣いてしまったと思っていたのに、そうではなかった・・・では、何故泣いていた?





女性とは、泣くのが得意な生き物だとは思っていたけれど、こうも泣く人に出逢った事はない。





「僕の好きな人の事は、君に関係ありません。」




「あのっ、もしも堀越さんではないとおっしゃるなら、その、好きな人のお名前かイニシャルを教えてください!」





「何故ですか?そんな事を訊いて何になるのですか?」





「応援します、私。瑞樹さんがその方と上手く行くように・・・」





「応援なんて無駄ですからいいですよ。それを飲んだら送って行きますから。」





「今日は、兄の家に泊まると言って来ましたので大丈夫です。」





「では、お兄さんの家に送って行きます。」





「近いので一人で行けます。そんな事より教えて下さい。」





「そんな事って・・・僕が誰を好きでも君には関係ありません。いくら君がさっきの男と上手く行かなかったからって、僕に構うのはやめて下さい。」




と言うと、




「そうですよね。瑞樹さんのご迷惑も考えず、突然お訪ねして、すみませんでした。」




じわっと再び目に涙を湛える陽芽野はお辞儀をして靴を履いた。





あっ、と気付いて陽芽野が半纏を脱ぐ間に、





「待ちなさい、君一人で歩いて良い時間ではありません。」と瑞樹に腕を掴まれた。





「だめです、離して・・・私の事はもう心配しないで下さい。」





「そう思うなら何故ここに現れたのですか。僕に心配させたいだけなのですか?」




「心配、して・・・る?」




「そうですよ。こんな時間に一人で歩かせられないでしょう?」





「瑞樹、さんっ。」突然陽芽野が瑞樹の胸に飛び込んだ。





瑞樹は、ぶるぶる震え続ける陽芽野の背中に手のひらを当てた。





「どうしました?」と訊いた瑞樹は陽芽野の背中を軽くトントンと叩いた。





落ち着いて来たようだったので、そのまま続けて叩いていると、





「あの、お手数ですが、フってください。」と瑞樹の胸に顔を埋めたままの陽芽野が出した声が小さく聞こえた。





「ふって?とは・・・」





「好きです。私は松田瑞樹さんの事が、好きです。」



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