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下戸の酒盛り

作者: 真柄

何年も会っていない親父から、一通の白い封筒が届いた。

 

 東京に出て早十年。進学のため上京し、辺鄙な田舎を嫌っていた俺は、バイト三昧の学生生活を送り、そのままバイト先に就職した。実家に帰っても、会う旧友も故郷を捨てた者ばかり。待っているのは年老いた頑固者の父親一人だけだ。

この十年、実家に帰ろうと思ったことはあったのだが、喧嘩のような形で家を去った俺としては、会うタイミングと言うか、あの頑固親父に合わせるための理屈をわざわざ作ることが、なんだか癪に障ってできなかった。まぁ、俺もあの頑固親父の血を引いたということだろう、と納得したりもした。

 そして、未だにそんな性懲りもないことをたまに考えていたところに来たのが、太筆で書かれている俺の名が記された手紙だ。

 しかし、こういった手紙の場合、仮名筆の先を使い、名を書くものだが、我が頑固親父は仮名筆を全て下ろし、太筆かの如く殴り書くため、このように滲んで名前とも住所とも分からないようなことになってしまうのだ。

 それにしても、郵便配達の兄ちゃんは(兄ちゃんと言うのは俺の偏見だ)よくこれで俺の住所が分かったな。遺言鑑定人の知り合いでもいるのかも知れない。明日から暇だったら玄関ポストの前で待ち伏せしてみよう。

 なんて、突拍子もないことを考えてしまうほどに僕は驚いていたのだ。

 あの頑固親父が手紙だなんて。それも、俺が生まれて三十年たって初めての手紙だ。

 いつまでも郵便配達員のことを考えてもいられない。十数秒かけて深呼吸をする。

 まずは、振ってみる。

 中身は紙のようだ。しかも何か書かれているようだ。透かし目では、なんと書かれているか分からないが、あの達筆な仮名太筆(仮名筆を全て下ろした筆のことだ)の文字ということだけは、はっきりと言える。

 次に匂ってみた。

 ……酒臭い。酒を零したのか?下戸で酒が苦手な親父が珍しいもんだ。もちろん、墨汁の匂いもするぞ。

 次に炙ってみた。

 焼け焦げそうになったので、すぐに止めたが何も出てきそうにない。

 最後に手で封筒の端っこを少しずつ千切って中の手紙を出してみた。そして、読んでみた。

 久しぶりに笑った。客を相手にする作り笑いでもなく、テレビを見ての大笑いでもなく。

 思わず笑みが零れるなんて、本当に久方ぶりだった。

 

 翌日、俺はマネージャーに頼んで翌月に三連休を貰った。

 仕事帰りにスーパーにより、日本酒を一升買い、自宅で常温のまま何杯も飲んだ。

 もともと、親父に似て下戸で酒が苦手な俺だが、なんだか、今日は酒を飲んでいて楽しかった。

 そうとう酔いも回ったころ、やっと行動に移る。携帯電話の〇番に登録されている番号を呼び出す。何度目かの呼び鈴で不機嫌そうな声が、俺の笑みに繋がった。

 「来月、帰るから。そん時は、面合わせて酔っ払って言い合おうな」

 

 手紙の向こうでも、電話の向こうでもなくて。アルコールに頼らないと本音を言えない親子だからな。まぁ、俺が大人になったから出来ることだけど。

 そして、帰ったら一言目に「あの手紙の『帰ってこい』は俺にしか読めねぇよ」って言ってやるんだ。あんなよたよたの酔っ払いの字。酔ったって俺の方が上手いのを見せてやるよ。


読んで下さり、ありがとうございます。

約半年ぶりの小説となりました。


本当は、どこまでを説明しなくては伝わらないのかが分からないので、実験的な小説にしようと思ったのですが、やはり詳しく書いてしまった感が否めません。

最終章の「手紙の向こうでも~」ラスト部分は始めは書いていませんでしたが、これでは分からないだろうと後からつけ足したものです。

どうなのでしょうか?

ラストの部分はあってもなくても変わらないでしょうか?

ぜひ、これからの参考にさせていただきたいので、ご意見をお願いいたします。


まだまだ、稚拙な文章ですので、何かご意見、改良点、ご感想など一言でも頂けたら、とても幸いです。

よろしくお願いいたします。

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