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しおり忘れな草(筆者エッセイ)


 今回は読書感想ではなく、エッセイを。読書日記なんて銘打っておきながら日記じゃねえじゃんと心密かに思っていた筆者なのである。読みたいひとがいるかはともかく、今日はここぞとばかりに綴りたい。次回はちゃんと読書感想であるので、心配ご無用である。



 物というものは、なくしたことを忘れた頃に手元に戻ってくる。なんていうことはないだろうか。探せども探せども見つからず、そのうち探していたことも忘れてしまう。幾日か、あるいは何年か先になにかの拍子にひょいと出てきたりして、「ああそういえば探していたなあ」なんてことを思う。このような経験をしたひとも少なくないのではなかろうか。


 さて、前置きが長くなったがわたしにはずっと探しているしおりがある。学生のときに、当時買っていたマンガ雑誌の付録にあったプラスチック製の栞である。当時連載していたマンガのキャラクターが描かれてあり、栞の頭部分はクローバーがかたどってあるものだった。ひもの栞がない文庫本にはさまれているような紙の栞とはちがい、硬いしやや厚みもあるので、ああ、ここにはさんだのだったと一目でわかって結構重宝していた。けれどもこれが、忽然と姿を消してしまったのである。こんな風に書くと、栞がみずから歩いてでもしてどこかへ行ってしまったようだ。そこから事件が起こる、なんてことは当然あるわけがなく。どう考えたって犯人はわたししかいない。わたしがどこかに栞をはさんで、その「どこか」を忘れてしまったとしか結論しようがない。これは問題である。その「どこか」は、家のなかであるかもしれないし、家のなかでないかもしれない。つまり、図書館で借りた本のなかにはさんで気づかず返却してしまったおそれもあるということである。

 じつは学生時代、おなじ過ちをしたことがある。が、幸運にもその栞は再度わたしのもとに返ってきた。他ならぬわたしが同じ本をもう一度借りたからだ。それも、栞をなくしているとは気づかず、前に借りてから半年ほど経過した卒業直前の時分である。その間きっと誰も借りなかったのか、誰かが借りても栞はそのままはさんでいてくれたのか、まあおそらく前者であろうが、なににせよそのプラスチック製のクローバーがかたどってある栞は、無事に持ち主のもとへ戻ってきたのである。タイムカプセルを開けたようで、なんだかちょっと嬉しかったことを覚えている。

 それはともかく。その後はなくさぬようにと家の机の引き出しにしまい込んでいた。けれども、ひととは忘却の生きものである。苦い経験をしたって、何度もおなじことを繰り返してしまうものだ。


 ここ一年ほど、わたしは間をおかず図書館へ行っている。学生時代とくらべて幾分、本とは遠ざかる日々を過ごしていたのだが、ここ「なろう」へ来てからは本を頻繁に読むようになった。さてかなしいことに、そのことに弊害が出てしまったのだ。紙の栞を抜くのを忘れて、図書館で借りた本を返してしまうのである。これは困った。図書館へ行ったさい、なるべく探して回収するようにしているのだが、ついに見つからないものができてしまった。さて。プラスチック製のクローバーをかたどった栞である。

 ここで、二段落目に立ち返る。すなわち、栞を「どこで」なくしてしまったかが定かでないのである。図書館の本かもしれないし、家の本かもしれない。心当たりをかたっぱしから調べてみても訊いてみても、いまだ見つからない。さらに困ったことに、「いつごろ」なくしたのかも明瞭でない。これはもうお手上げである。あのクローバーをかたどった栞を、いそいそと引き出しから取り出してしまった過去の自分が恨めしい。なにが恨めしいって、おなじ過ちを繰り返していることが。学習能力のなさにほとほと呆れる。

 そして栞がないというのは、なにかと不便である。高い頻度で、イラッとくるものがある。代用しているものはあるが、やはり以前に使っていたあの栞に勝るものはない。

 忘れられない、あの栞。ああ君は、いまいずこ。

 いつか、ひょっこり顔を出してくれると、ありがたい。



 最後にちょっと一言。

 わたしが利用する図書館は、本の種類が多くない。と、いうかわたしが読みたい本は、たいていない。けんか売ってんのかって具合にない。



 宮城谷昌光『夏姫春秋』も

 シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』も

 アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』も

 ゴールズ・ワージー『林檎の木』も

 藤沢周平『時雨のあと』も

 浅田次郎『王妃の離婚』も



 キリがない。ないったら、ない。

 そして悔しいことに、いま挙げた作者の他の作品なら揃っているのだ。……歯軋りしていい? いいよね。図書館さまは、なんでそんな有名どころをあえてはずす酷な所業をなさるのか。例外はある。アガサ・クリスティは児童書ならあるのだ。でも児童書って行間が空いてるし、字はでかいしで読みにくいんだよなあ。


 全然一言で終わらなかった。そして問題は解決していないが、まあいいってことよ。

 興ざめたところで。今回はこの辺で。では。



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