『江戸の味を食べたくなって』 池波正太郎
ご無沙汰である。
お久しぶりで、申し訳ない限りである。それというもの、拙作に目を通してくださるかたが、毎日いらっしゃることを知って、恐縮しきりであるのだ。アクセス解析をなんとはなしに見てみると、多いときで20アクセスくらいあるので、ぎょっとするのである。これはイカン! こんな辺境にまでわざわざお越しくださる読者のためにも、なんとかせねば、と思い立った次第である。
「20アクセスだって? 吹けば飛ぶような数字じゃないか、なにを大げさな」などと悪魔が囁いたりしているかもしれないが、わたしにとっては「姉さん、大事件です!」なレベルである。読者のかたに、感謝、感謝である。
池波正太郎(2010年)『江戸の味を食べたくなって』新潮社
【本の紹介】
粋ですね、乙ですね、池波先生!
文壇きっての食通で知られる著者の没後20年にあたる2010年に刊行された文庫版。絶筆となった『居酒屋B・O・F はじめてのフランス(一)』をはじめ、対談やエッセイ集などを再録している。
池波正太郎といえば、『鬼平犯科帳』や『剣客商売』などで知られる時代小説家であることはあまりにも有名だが、大変に食に精通した作家でもあったようだ。本に紹介される料理の数々が、目を楽しませてやまない。そこには写真などなく文章でしか表現されていないが、字を追うだけで味覚・視覚・聴覚が刺激され、とても満たされた気持ちにさせてくれる。
池波節とはよくいわれることである。短い文に、味わい深い台詞、躍動感にあふれた世界。このひとは本当に、「粋」というものを体現したような作家である。
わたしのお気に入りは、江戸・東京情緒豊かな、『味の歳時記』である。
旬の食材や味を、江戸・東京への変遷を通して、変わりゆく街へのもの哀しさと無念をこめ風情に富んだ視線でつづっている。
まったく関係ないが、本エッセイを一時的に改題している。
前『気ままに読書日記』
後『最近はとみにやる気のない読書日記』である。
最近はとみにやる気がなくなった最初の紹介が池波大家だとは、ファンにぶちのめされそうである。
短いけれど、今回はここまで。
足を運んでくださる皆様に、改めて感謝です。
筆者 拝