第2章 1
「あ゛―――――、疲れた――――――――――――――――――!!!」
その日の仕事が終わった瞬間、美紗緒は大きな声で疲れを吐き出した。
美紗緒は幸一と飲んだ翌日、あかりで朝10時半から夜の10時まで
ぶっ通しで仕事をしたのだった。
その日は、戦場と化したランチタイムはもちろん、ディナーもまさかの大忙しだ。
前日しこたま飲んだ美紗緒としては、今思い出しても身の毛のよだつ程の忙しさだ。
ま、お店としては、いいんだけど・・・
二日酔いの身に、あれはないよ。 少しは老体を労わろうよ・・・
あまりの疲れ具合に、美紗緒はふう、と大きいため息をついた。
美紗緒の働いている“あかり”は、東京にある西麻布でランチとディナーに営業している
関西風鉄板焼き屋である。
超高級レストランではなかったが、各テーブルに鉄板が置いてあり
熱々のステーキはもちろん、東京にいながら地元関西のお好み焼きまで食べられる
ということが受け、半分は常連客で埋まるようなお店だった。
それはもちろん、オーナーの人柄が成せる技なのだが。
そして、そのオーナーに関西つながりということで口説かれ
美紗緒は3ヶ月ほど前からあかりで働いていたのだった。
(ま、口説かれたっていっても、お酒がのめるから、なんだけどね!)
「若くて飲める女の子は、いつの時代でも財産だ!」
それがオーナーの口説き文句である。 いかにも私らしい口説かれ文句だ。
しっかし、どうするかな。
こんなに忙しかった後なら、いつもは必ず2階のLightに寄るのだが、なんせ昨日の今日。
昨日飲みすぎた分は、しっかりとお財布に打撃を与えている。
でも、疲れた心と体にはビールが一番・・・!!!
服を着替えながら一頻り迷った美紗緒は、、、、
「春ちゃん、ただいま~!」
結局Lightの扉を開くことにしたのだった。
「お前、また来たのかよ!」
という春ちゃんのツッコミが心地いい。これだから、ここには関西人が集まるんだ!!
「やぁ、また会ったね!」
春ちゃんのツッコミに癒されている私に、いつもと違う声が呼びかけてくる。
その声の主を探すと、そこには昨日あったばかりの幸一がいた。