<疑惑>のカケラ
あれから双子とキランは家に戻って、サキは一人解放者の本部へ戻り結果を出していた。
双子はニクハの作った夕飯を食べていた。
「ねぇ、パパ食べないのぉ?」
「あら、ほんと。どうしたんですか?具合でも悪い?」
カリナはパンをかじりながら聞く。
ニクハも同じように心配そうに覗き込む。
そんな二人にキランはムリに笑顔をつくり大丈夫だ、と答えた。
「……」
ニクハは何となく分かっていた。
だからかそれ以上は何も言わなかった。
きっとニクハも不安だから。
そして双子は食べ終わると、庭へ遊びに行った。
この時を待っていた、というようにキランが口を開く。
「…サキの事、どう思う?」
「いい子だと思いますよ?子供達の世話もやってくれますし…」
「……そうか」
「…どうかしたんですか?」
「いや、なんでもない」
「…まさか」
と、ニクハが言いかけたその時…。
「…あの」
サキが現れた。
たくさんの資料を持って…。
キランは、
今の話が聞かれたのではないか———
と心配し、サキを疑視していると…。
「……」
キランに笑みを見せた。
いつもの笑顔のはずなのに…全身に鳥肌がたつ。
背筋には冷や汗もつたう。
「…顔色が悪いようですが…。結果、でましたよ」
「……構わん。言え」
「その前に一つ」
「なんだ?」
キランは焦っていた。
今の話、つまりサキについて話していた時の話を聞かれていたのなら…と。
「さっき…私を”黒察者“(ぐさつしゃ)、と疑っていませんでしたか?」
「なんの事だ。そもそも黒察者とはなんだ」
「白々しいですね、」
サキは話をぼかそうとするキランを笑う。
今の悪魔族の大人で黒察者を知らない人はいない。
魔王から無理矢理聞かされている。
黒察者———
解放者と違い、意味なく人を殺す。
そして立場からすると悪魔側…というより実験の協力者。
そのため実験の材料になる人間を捕らえては実験に使う、といういわばスパイ的役目を果たす存在…。
もちろんキランもニクハも黒察者の存在は知っている。
「…私はただの解放者ですよ。でも黒察者も近くまで来てますよ。魔王様が命令したのでは?」
「なにッ!?」
「近くといってもまだ、安心な所ですけどね。今のうちの住む場所を変えた方がいいでしょう」
サキは無理矢理黒察者の話を終わらせ、検査の結果を話す。
「結果、言いますよ?」
「……」
ニクハは念のため別部屋に移動した。
キランは大きく息を吐くと、サキの目を真っ直ぐ見て頷いた。
今はサキを信じるしか無い———
そう心に強く思いながら…。