<猛獣>のカケラ
「遅かったですね」
サキはキランへと笑いかける。
キランはそんなサキに一瞬不気味さを覚えるも、サキの近くにいるカリナとカユウに目を移す。
「こっちに来い!カリナ、カユウ!そいつから離れろ!」
2人はよく分からなそうにしていたが父親の言葉に反応し、駆け寄ろうとした。
が、その瞬間、
ガッ———
「…駄目だ」
「…ぇ?」
サキは2人の腕を掴むと自分側に引き寄せた。
そんなサキの行動にキランは段々と慌て始める。
「では、この2人のどちらか一人返してあげましょう。と言われた場合、貴方はどちらを選びますか?」
「…何が、言いたい」
「そのままです。仕掛けもこの質問への意図も何もありません」
「信じられるか…!」
「答えて下さい、キラン様。どちらですか?」
サキの目は真剣そのもので、仕掛けもなく意図もない、の言葉に嘘はないようだった。
「………もちろん、ふた」
「二人共、なんて答えは無しですよ」
「っ…」
「それじゃあ答えになってないでしょう」
「……」
「さぁ。カユウか…カリナか」
キランはその質問をなげかてくるサキの表情に息を呑んだ。
満月の光に照らされて、まるで別人のような恐ろしい表情をしているのだ。
一言で表すなら…蛇、という言葉が合うだろう。
他にも、獲物を仕留める直前の猛獣…か。
どれにしても、キランは恐怖心を消せないでいた。