<言葉>のカケラ
「…カリナ、いいか?よく聞くんだ。あと、カユウも」
キランは自分の部屋にカリナとカユウを呼ぶとゆっくりと低い声で言った。
その声音で二人は真剣な話だ、ということを察したのか頷く。
「…サキにはもうあまり近付かないでほしい」
「何で?」
キランの言葉にいち早く反応し口を開いた。
「…カリナはサキの事好きだもんな」
「僕もだよっ!」
「あぁ、カユウもか」
「…お父さんは好きじゃないの?嫌いなの?」
カリナの言葉にキランは少し目を伏せる。
…嫌いなわけではない。でも、好きにもなれない…、信用し難い人物。
ただ信用できないというだけで嫌い、と言っていいのか。
「…嫌いじゃ…ないかな」
「じゃあ何で?」
「…悪い。ちょっとお母さんと話して来るから二人で遊んでおきなさい」
キランは話を逸らすように…そして二人から逃げるように自分の部屋を出る。
そんなキランが気になったのかカリナとカユウはバレないように付いて行き、キランの入ったドアに耳を当てる。
『…どうしたんですか?』
『さっき…あいつらにサキに近付かないでほしい、って言ってきた』
『なんで…!』
『でも子供ってのはやりにくいな。根掘り葉掘り聞いてくる』
『純粋なんですよ。…あの子達にとってサキはお兄さんのような存在なんですよ。家族と同じくらい大好きなんです』
『だが…』
「………」
まだ幼い双子には言っていることが理解できてないような表情をしていた。
カリナはカユウの手を引っ張ると庭へと走る。
「ねぇ、あれどういう意味かな…」
「…僕が知るわけないじゃない」
「サキ兄ちゃんに関係してるみたいだったでしょ?サキ兄ちゃんに聞いてみようよ」
「うん」
カリナは少し興奮したようにカユウへ話す。
そんなカリナに気圧されたのかカユウはぎこちなく頷いた。
頷くことを確認するとカリナはそそくさと進み始めた。