<真逆>のカケラ
キランは双子のカリナとカユウを呼び出した。
二人共、始めは遊んでもらえる、と思ってついてきていたのか無邪気な笑顔を浮かべていた。
だが、キランの真剣な表情に二人の顔から笑みは消え、少し怯えた表情だった。
「…お前ら、サキ兄ちゃんが好きか?」
突然のキランからの問いに二人ぽかん、としていたがやがて「当然」とでも言うように、
満面の笑みを浮かべ頷いた。
そんな二人の反応に少し悲しそうにするキラン。
「なんでそんな事聞くの?」
「お父さんは嫌いなの?」
そんなキランに二人は不安そうに質問していく。
キランはサキが嫌い…というわけじゃない。
どちらかと言えば信頼できる…頼りになる解放者だ…。
サキは解放者になる人専門の学校でもかなり優秀な方だったらしいし判断力、瞬発力、理解力。
解放者に必要なこの三つの能力が長けている。
だが、「優秀だから」とか「能力が長けている」や「信頼できる」からと言って、完璧に心を許せるか、と言うとそうではない。
———優秀だから、怪しいんだ
———能力が長けているから、恐ろしいんだ
———信頼できるから、疑ってしまうんだ
実際、キランはサキのことを黒察者と疑っている。
あれだけ、優秀なら人を騙すこと…ましてや敵味方関係なく相手との関係の持ち方を知っているはず。
簡単に言うとサキは八方美人なのではないか、と言う事だ。
「……お父さん?」
「———っ」
カリナは何も言わず、ただ険しい表情で考え事をしているキランを心配に思ったのか、
不安そうな顔でキランの顔を覗き込む。
そんなカリナでふと我に返るキランだったが、カリナのことを見るとどうしても…嫌でも思い出してしまう言葉———。
『カリナはもう駄目だろう。実験に使ってみてはどうか』
キランは大きく、その言葉を否定するように首をふった。
そして心配そうに自分を見つめているカリナを安心させるように優しく頭を撫でる。
この時のキラン…父親の行動で、双子は理解するものがあった。
まだたった五歳でも…理解できた事…。
———サキ兄ちゃんがお父さんに何かしたのか、
というサキへの疑いがある事を…自分たちは理解した。