<報告>のカケラ
次の日、慌てた様子でサキが家に来た。
双子が不思議そうにしながらもサキに寄っていった。
「どうしたのぉ〜?」
「…、あの…魔王様から急な伝達が…、」
「…?」
サキは言いにくそうにキランを見る。
キランは『魔王』という言葉に反応して顔を青ざめる。
…が、すぐにニクハに頼み双子を別部屋に移動させる。
「で、なんだ」
サキとキランしかいなくなった静かな部屋キランの太い声が響く。
「…言いにくいのですが、」
「…構わん、気にせず言え」
「では———」
サキはゆっくりと詳しく話し始めた。
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「失礼します…サキでございます」
『入れ』
魔王が一言言うと、扉が音をたてて開いた。
その先には少し通路があり、階段がある。そしてその階段の上に魔王は座っていた。
サキはそれを見て息を呑むと階段の下まで通路を進み、片膝をつけ頭をさげる。
「クイ家の双子の検査結果を伝えにきました」
「…ほう。で、どうだったのだ?」
「…双子の妹であるカリナ・クイ。この者の反応はもう明日消えてもおかしくない状態でした」
「そうか…。報告ごくろうだった。サキよ、」
「…はい?」
「キランに伝えてほしい」
「はい」
「…『カリナはもう駄目だろう。実験に使ってみてはどうか』と」
「っ……はい、承知致しました」
サキは【実験】に反応して少し汗をかく。
そんなサキと比べて魔王は愉快に笑うとサキに「行ってよい」と告げた。
言われた通りサキはゆっくりと立ち上がり魔王に悔しそうな表情を見せると、背を向け扉に向かって歩く。
そして扉から出た後、扉は再び音を立てて閉まった。
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「———という事でした」
「なん、だと…っ」
キランは目を見開きながら驚いた。
「魔王様にはなんと伝えればよろしいですか?」
「…もう少しチャンスを下さい。と」
「…かしこまりました」
サキは一礼するとその場から消えた。
怪しい笑みを浮かべて———。
そう、先程の報告の話には続きがあった。
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扉の前でサキは何かを考え込むように俯いた。
「おい、サキ」
自分を呼ぶ声に顔をあげると、自分と同じくらいの女性が立っていた。
この女の名前はミスナ・ヨカス。サキと同じ解放者。
ミスナはにやぁ、とした笑みを浮かべると言った。
「凄いねぇ、さっきの演技。見とれちゃったぁ」
「何が言いたい」
「別にぃ?ただ、この後どうするのかなって」
「キラン様に報告しに行く。…前にする事がある」
「きゃはっ!!やっぱりぃ〜?」
ミスナは楽しそうに笑い、サキに紙を差し出す。
「ここにいるよぉ。んじゃぁね、詐欺師さん」
「……詐欺師じゃねぇっつの」
サキは呟くように言うと渡された紙を見る。
そして冷徹な笑みを浮かべてその場から消えたのだった。