6話 プルプル・・・
ガトーさんの膝の上に座っているこの状態が、恥ずかしくて仕方がなかったけれど……
これがお仕事だと言われたら、受け入れるしかないとは思うけど……
なんとなくガトーさんの顔が赤くなっているような気がする。
もしかして、私が重いのを我慢しているのかしら?
私の思いがわかっているのかいないのか、ガトーさんは、隣に置いてあるバスケットの中から、ハムと卵が入ったサンドイッチを手に取って、私に見せた。
「食べやすいようにサンドイッチを用意してもらいました。私が食べさせて差し上げましょうか?」
いやいやいや、それはいくら何でも……
「大丈夫です。一人で食べられますわ」
私はサンドイッチを受け取ろうとしたのだけれど……
プルプルプルプル……
手が、手が、震えて上手く持てない……。
指先に力が入らない……。
両手をフル活用して大量の神聖力を流し続けた私は、まだ身体が慣れていないことに、今さらながら気付いた。
この震えは、後遺症みたいなものみたい。
「すみません。サンドイッチ、持てないです」
私は消え入りそうな声で、ガトーさんに言った。
「あれだけ大量の神聖力を放出したのです。手が震えて当然ですよ。ですから遠慮せずに、私から食べさせられてください」
「えっ? でも……、そんな……」
「聖女様? 早く食べて病院に行きたいのではないのですか?」
そうでした。私は今から病院に行かなければならないのよ。
ここはガトーさんに甘えることにした。
「お、お願いします」
それからガトーさんは私にサンドイッチを食べさせてくれたんだけど、恥ずかしいやらなんやらで、もう穴があったら入りたいと思った。
でも、食べさせてもらうサンドイッチはとっても美味しくて、お腹が空いていたから、用意してくれたサンドイッチは、全部食べた。
そのころには手の震えも止まって、最後に差し出してくれたお茶のコップは自分で持てた。
お茶は、ほかほかと暖かくて、こんなところにも気配りを感じる。
さすがガトーさん。
前世の上司に、ガトーさんの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ。
お腹が膨らんで、心も満たされて、神聖力も元に戻ったのを実感した。
「何から何までありがとうございました。もう大丈夫です。今から病院に行きましょう」
「わかりました。おや、聖女様の口に……」
ガトーさんは、私の口の横についていた卵を指先で拭って、それをぺろりと舐めた。
「ガ、ガ、ガトーさん!?」
私はボンと頭が爆発するような感覚に襲われた。
真っ赤になってあたふたする私をよそに、ガトーさんはようやく私を膝から降ろして椅子に座らせる。
「それでは、私は外に出て 騎乗護衛の任務に戻ります」
ガトーさんは爽やかにそう言うと、馬車を出て元の仕事に戻ったけど……
私は一人馬車の中に残されて、目が覚めてから今までのことを思い出して、すごくドキドキしていた。
爽やかな笑顔とシックスパックの筋肉が好きで、お気に入りの騎士様だったけど、あんなに優しくて細やかな配慮ができて……、最後のペロリなんて、まるでマンガか小説の世界みたいで……。
ガトーさん、なんて素敵な人なの?
ああ、平凡な顔だなんて思ってごめんなさい。
心の美しさは顔に出るものなのね。
今の私には、ガトーさんの顔がとても男前に見える。
窓から見えるガトーさんの顔を見て、私はぽっと赤くなった。




