3話 病院へ
騎士様のケガの治療をしていると、長い銀髪をキラキラさせながら副団長のクリード様が救護室に入って来た。
相変わらずカッコよくて、思わず見惚れてしまう……。
できたら騎士団長のシューク様と二人のツーショットが見たいんだけど、シューク様は、まだここに来たことがないのよね。
やっぱり、王太子でソードマスターなんて肩書もあるから、何かと忙しいみたい。
あっ、いけないいけない、お仕事に集中しなくっちゃ。
私が気持ちを切り替えて、騎士様の治療を続けていると、クリード様は私に近づいてきた。
「聖女様、市中の病院から依頼がありましたので、今からそちらに行っていただけませんか?」
「あの、まだ騎士様の治療が残っているのですが……」
「緊急を要する依頼ではありませんが、それはここにいる騎士たちも同じことです。ですから、市中の病院を優先してください」
クリード様の言葉を聞いて、残っていた騎士様三名はがっかりした顔をしたけれど、副団長様の言うことは絶対だ。
私はクリード様の言葉に従い、病院に行くことにした。
「はい。わかりました。この方の治療が終わりましたら、すぐに行きますわ」
聖女の仕事に、町に出て一般市民の病気やケガを癒す仕事がある。
でも、これは町の病院や個人経営のお医者様に依頼されたら、出向いて治療するってことになっている。
私は、別に毎日でもかまわないんだけど、聖女が頑張り過ぎちゃうと、お医者様の仕事を奪うことになるから、依頼されたときだけ行くことになっているそうだ。
主に、お医者様が処方した薬ではなかなか治らない病人だとか、ケガは治ってるんだけど、痛くて辛い人に癒しの治療を施している。
私が馬車まで行くと、護衛騎士のガトーさんが、爽やかな笑顔で挨拶をしてくれた。
「聖女様、本日は私とシナモが護衛を務めます。よろしくお願いします」
「私こそ、お世話になります。よろしくお願いします」
実は、このガトーさんは、私のお気に入りの騎士様である。
下の名前がないことから、たぶん平民だと思う。
茶髪に茶色い瞳で、割と平凡な顔立ち。
でも、細身の身体だと思っていたら、脱いだときの筋肉がすごい。
見事なシックスパックで、服を着ていたときとのギャップがすごくて、初めてみたとき、私、萌えました。
それに、治療が終わったら、すっごく爽やかな笑顔で、ありがとうって言ってくれるの。
よく青あざ作って「何度も申し訳ありません」なんて言いながら救護室に来るんだけど、ガトーさんの顔を見たら、とても嬉しくなる。
でもガトーさん、『竜トワ』には名前すら出てこなかった騎士様だから、私以上にモブ中のモブってことだよね。
今日の護衛騎士はガトーさんとシナモさんの二人。
彼らは馬に乗って並走してくれるのだ。
私は馬車に乗って、依頼を受けた病院に向かった。
大きな馬車に乗っているのは私一人。なんて贅沢なの……。
転生前は、出勤するのに地獄の満員電車に揺られて行き、会社についた頃にはへとへとになっていたから、もう今のこの状態は天国だ。
窓の外を見たら、ガトーさんのキリッと締まった顔も見えるし……って、外を見ていたら、道端に人だかりができているのを見つけた。
叫び声も聞こえる。
心配になって、ガトーさんに頼んで馬車を止めてもらった。
馬車から降りると、叫び声がはっきりと聞こえてきた。
「お願いです。誰か、誰か、この子を助けて!」
女性の泣き叫ぶ声だった。




