第76話 プリメリアを喰らう
(*´ω`*)ほわーっ!
(防御結界魔法と云う概念が働いているのかも知れないな)
あれ程の強度と強固さを誇るのは、守る事に特化させてるからと仮定出来る。思い返せばショコラが攻撃として防御結界を使ったのは全てクートを守る為だ。もしかしたら他者を守る行為でしか発動しないのかも知れない。
(其れだと自分に危険が及んだ時に対処出来ない。自己を対象にした時と他者を対象にした時で発動条件が違うのかも知れないな)
自分自身、初見とは云えオーガ相手にピンチになるイメージが湧かなかった。だから防御結界魔法が上手く発動しなかったのだろう。攻撃への転用は失敗した。手刀に防御結界魔法を纏わせればオーガの首を簡単に落とせていただろうに。
「わざと喰らってみたら上手く発動したけど。あ、もう消えた⋯効果は一時的か。ロスを抑えてるのか?瞬間的な高出力と引き換えかな」
一瞬でオーガの一撃と、壁へ叩き付けられた衝撃を完璧に防いだ。とんでもない魔力出力と即時性だ。防御する為の結界を張ろうとかの意識だと間に合わない。脳に刻まれた魔術式がオートで発動したのだと解る。
「きゃあああああああああっ!?」
「ふむ。攻撃が続く限り効果も続くか」
プリメリアはオーガに踏み付けられ悲鳴を上げ続けている。自身の肉体には掠り傷すら負ってはいないが、そう云う問題ではないのだろう。
「俺の意識次第か?」
プリメリアは恐らくオーガの一撃で死ぬ。だから試した。死ぬ可能性が有る彼女にクートの魔力を刻んだ唾液を与えた。其れを媒介にして防御結界魔法がキチンと発動するかどうかを試したのだ。結果は成功。分の悪くない賭けだったし、当人から『何でもして良い』と言質を取れている。結果オーライである。
「ああ⋯吸われてる気ぃするな」
オーガがムキになってプリメリアを踏み付ける度にクートの魔力がゴリゴリ削られてるのが解る。クートの魔力が有る限りプリメリアは守られる。
「まぁ実験に使った対価かね」
万一プリメリアが死亡しても責任は彼女に有る。契約書にそうサインさせた。其れと二人を見捨てて逃げた取り巻き達。彼等にも其の責任が及ぶ様に連名で契約書を書かせたのだ。もしもプリメリアが死んでも構わない。だが死んだら少し困るし、顔は可愛いから勿体無い。五属性魔法も魅力的だからやはり死なせたくない。其の程度の認識でもキチンと発動した。
(抱きたいと思ったのも大きいか?そうじゃない相手には使えないかな⋯)
クートのキャパシティを超える攻撃は防げないだろうが、Dランクモンスターぐらいなら完封出来るのは解った。其れで十分。
「使い方は面倒だが、使えない訳じゃないな」
「オオオオッ!ゴァアアアアアアアアッ!」
プリメリアを殺せない事に遂に激怒したオーガがクートに向かって来た。プリメリアを守る不可視の盾がクートの仕業だと流石に気付いたらしい。
「ああ、悪いな。実験に付き合わせて」
クートが合掌する。
「じゃぁ、行くぜ?」
靴を脱ぎ捨てる。裸足で前傾姿勢を取り、倒れながら走り抜ける。両手は合掌したままだが姿勢は四つん這いに近い。壁を走り床を駆け抜け天井を疾駆する。走る走る走る走る。そしてオーガの拳を避け其のまま腕に飛び乗り身体を駆け上がる。
「ギャアアアアアアアアッ!」
肩に足を回して取り付きオーガの眼球の一つに合掌した手を突き刺す。だが致命傷ではない。オーガがクートを引っ剥がそうと爪を突き立てる。しかし防御結界魔法が其れを阻む。
「うおっ!やべぇ、魔力切れになる―――」
絶対防御に近いが物凄い魔力消費量である。先程プリメリアで使った分もだが、かなりデカい。後少しでダメージが耐久力を上回り、盾は割られる。魔力も底を突くだろう。オーガは防御結界ごとクートを引き剥がそうとクートを両手で掴む。確かに此れなら剥がされ投げ飛ばされてしまうだろう。壁に叩き付けられれば其れで今度は大ダメージを負う。魔法職でもないクートの魔力総量は其れ程高くない。
「だが―――」
此れで詰みだ。
「手槍」
クートが両掌の間で加熱と冷凍を同時発動する。潰された眼球は蒸発し脳味噌が沸騰する。頑丈な頭蓋骨は破壊出来なかったが、内側で脳味噌が爆裂したからかボコボコと変形する。耳や鼻から血煙が噴き上がる。
「おっと」
ズズンと地響きを立ててオーガが倒れる。焦げ臭い匂いが周囲に広がる。
「さてと」
クートは大分目減りした魔力を補給する為にオーガの腹を掻っ捌く。
「有った有った」
クートはオーガの魔石の心臓を取り出すと其れに噛りつく。ぢゅるぢゅると血を啜る。手槍で負った火傷と凍傷も回復して行く。
(うーん、美味い⋯とは違うが、魔力が補給されて行く満足感が有るな⋯)
心臓がカラカラに萎むまで啜り上げ、終わったら魔石から切り離す。
「い、今のは?」
「あ、見てた?」
モンスター食等と云うトンチキな学問だが、ある程度の常識的な周知はされている筈である。其れはモンスターの食材を適切に処理、調理してから食べると云う事だ。何故ならモンスターの肉は人間にとって猛毒だからだ。特に魔石と繋がる臓器の血を飲む等正気の沙汰では無い。重度の魔力汚染に依り心身に異常を来たし死に至るだろう。
「此れは俺の覚醒スキル、魔食晩餐」
「ましょく⋯ばん、さん?」
「そう、名付け親はフラッペね」
モンスターの肉を生のまま食べる等、明らかに食材鑑定とはかけ離れたスキル効果である。加熱や冷凍とかはギリギリ調理魔法と言って通らなくは無いが、此れは流石に無理が有る。
「秘密な」
「うん⋯」
素直にコクンと頷くプリメリア。クートがプリメリアに先程の条件を出したのは此の為だ。魔石の心臓を喰らう所を見せてしまう。ならば自分の女にして口止めをすれば良い。
「ごくんっ⋯どうだ?満足したか?」
「ま、まんぞく?」
震えが止まらない。自分は助かった筈なのに。命を助けられた筈なのに。其処で気付く。目の前に居るのはほぼ無手でオーガを喰い殺す化け物なのだと云う事に。
(こんなっ!こんな狂犬を飼い慣らしてるなんてっ!)
遊び半分でペットにしようと思った男は、とんでもない猛獣だった。ドクドクと脈打つ心臓。血塗れの顔の壮絶な笑み。自分が失禁してる羞恥心。そして奪われた唇の感触⋯
「あ⋯」
吊り橋効果と云う物が有る。胸の動悸が激しくなると其れを恋愛感情のドキドキと勘違いしてしまう奴だ。勘違いかも知れない。しかし確かに今、プリメリアは命を助けられた。取り巻き達は逃げ出し、自身も腰を抜かしてしまっていたのにだ。
(助けられた。助けられちゃった―――)
自分よりも強いオスに命を救われた。そして其のオスは自分を求めている。ならば一個のメスとして応えるだけだ。その本能を理性が否定しようとする。
「ムードも欠片も無いが、お前を俺の女にするぞ」
「ひうっ!?ま、待って、こ、こんな所じゃ⋯」
クートが蹲るプリメリアの手を取る。プリメリアも年頃の女の子だ。初体験への憧れは有る。相手は選べないと解ってはいたが理想とか色々有る。如何考えてもダンジョン洞窟の奥、オーガの死体や肉塊が散乱した場所で平民に奪われるシチュエーションではない。
「駄目だ。約束は約束だ」
歯応えの有るモンスターを殺したばかりで昂ぶっている。女を抱きたい。
「お願い」
「俺の物に成れ」
少女の懇願は唇を塞がれ閉ざされる。
「プリメリア」
「きゅぅ⋯」
何人もの女を抱いてレベルアップしてるクートのキスに腰を砕かれるプリメリア。そんな彼女を抱き寄せるクート。
「はい⋯」
もう抵抗は無意味だと悟る。
「優しく、して」
「努力する」
クートがプリメリアのズタズタの衣服に手を掛ける。
「あと」
クートを潤んだ瞳で見上げるプリメリア。
「プリムって呼んで」
恥ずかしくなって顔を背ける。
「家族は、そう呼ぶから」
「解った。プリム」
「クート」
夜目が利くプリメリアの逸らした視界には、クートの逞しい肉体がハッキリと視えていたのだった。
(*´ω`*)最初は清潔なベッドの上の予定でしたがオーガの死体が転がる洞窟の奥で初体験でつね。やっほー




