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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第32話

(*´ω`*)おぱようございみゃす!

「合図は?」


 間合いを測りながらレナが訊ねて来る。クートは冷めた感じで応える。


「要るか?早く来いよ」


 クートが手を上げくいくい動かしレナを挑発する。


「そうだ―――ねっ!」


 レナが動く、槍を中段に構え突き出す。先ずは牽制の小手調べだ。槍の穂先にカバーは付けて有るが、直撃すれば嘔吐し地面を転げ回るだろう。悪ければ骨折に内臓破裂、最悪は死に至る。だが―――


「―――痛っ!?」


 ―――しかし、苦悶の表情を浮かべ、たたらを踏んだのはレナの方だった。槍はクートの真横の木の幹にぶつかり穴を穿つ。レナが痛みを感じた太腿を見ると鋼糸が張って有った。おかしい。


(予め木の間に張って有った!?でもさっきまでは何も無かっ―――直前まで緩めてあったのを引き絞れば高さが出るっ!)


 間抜けにも其処に自分が突っ込んだのだ。バッとクートを見ると、あからさまに手招きしていた手とは逆の手は背中に回されている。木の後ろや地面を経由して鋼糸を引っ張ったのだろう。


「ちっ」


 レナは舌打ち一つして足を拳で叩く。


(痛みは無い。動く。問題無い)


 ズボンを穿いていたので出血はしてない様だが、鋼糸がぶつかった部分は赤く蚯蚓腫れになっている事だろう。気持ちは落ち着いている。痛みで逆に冷静になる。クートは手強い。其れを再認識した。


「運が良いな」

「何?」

「鋼糸がもう少し細ければ、撓んでなければ、お前がもう少し強く踏み込んでいれば―――」


 クートがニヤリと笑う。馬鹿にした様にヘラヘラと嗤う。いや、アレは完全に馬鹿にされてる。見下されている。レナの頭に血が昇る。


「お前の足は飛んでいたぜ?」

「小細工を⋯⋯⋯」


 レナが怒りで眉根を寄せる。落ち着け、安い挑発だと言い聞かせる。デスファングボアを追い込んだ流れを思い出す。ああやってモンスターを怒らせ誘き寄せ、罠に誘い込み仕留めて来たのだろう。此のままクートのペースに巻き込まれてはならない。


「ふん⋯随分静かだな。何時もは黙れと言っても煩い癖に」


 怒りを理性で抑え込んでいるレナを見たクートが鼻で嗤う。


「小細工を弄して何か問題が?冒険者の腕前が只の力比べで決まるなら、文明も技術も要らねぇだろ。服も槍も投げ捨てて素っ裸で遣り合うか?お前の槍は職人が精魂込めて作り上げた物だろう?お前の槍術も人類が長年の研鑽の果てに積み上げた物の筈だ。俺を否定したいなら実力で示して魅せろよ。前衛戦闘職の槍士様ぁ?」

「随分と饒舌だね。何時もはあんま喋らない癖に」


 クートが明らかに誘って来ているのでレナは逆に冷静になる。周囲を見回す。足元を注意深く見る。日が差し込まない森の中、鋼糸を肉眼で捉えるのは至難の業だ。どうやって攻略するか⋯⋯⋯


「使えよ」

「え?」

「穂先のカバー外せ。其れで鋼糸を切れば良い」

「でも⋯」


 レナが躊躇する。予想よりもクートが手強い。手加減や寸止めはするつもりだが、万が一の可能性も有る。レナはクートを殺したくない。怪我もなるべくさせたくない。レナはクートに勝ちたいだけだ。己の力を確かめたいだけだ。


「穂先にカバーが無ければアンタは―――」

「大丈夫」

「え?」


 クートが今まで見た事が無いくらい優しい笑顔を見せる。まるで幼子に言い聞かせる様な優しく柔らかい口調でこう言った。


「レナの鈍間な槍じゃ俺には掠りもしないよ。だから大丈夫」


 ニコニコと笑顔で言われ、流石にレナの闘志に火が着く。


「言ったな?」


 ならば其の挑発に乗ってやる。クートが怪我をしたら素材もほっぽり出してクートを背負って町へ帰る。そして教会で治癒魔法を掛けて貰う。其れで行こう。Eランク昇格クエストはまた改めて受ければ良い。


「ふっ!てぇいっ!」


 カバーを外した槍の穂先で鋼糸を斬り払うレナ。足元と周囲を見回し違和感を感じた場所に狙いを定め槍を振るう。ブツブツと何かを切断した手応えを感じる。鋼糸だろう。かなり仕込んでいたらしい。デスファングボアに対する物じゃない。レナ対策に間違い無い。レナが我慢出来ずに勝負を挑んで来るのも想定内だったのだ。其の為の布石。


(へへ、私に対して此処まで警戒してるって事だよね)


 クートに強さを認められた気がしたレナは悪い気がしなかった。


「成る程ね。クエストをこなしながら私の分の罠も張ってたのか。やるじゃん」


 しかしクートの反応は淡白だ。


「別にお前だけの為じゃねぇよ。目撃情報のデスファングボアが同一個体じゃなかったら?実はもう一体居ました。実は番でしたなんて良く有る話だ」

「ああ、そっか。そーゆーことね⋯」


 クートは本当に万が一に備えていただけだった。デスファングボア以外の強敵の襲来の可能性も十分有った。その場合逃走経路も確保せねばならない。鋼糸の罠は追手に対する時間稼ぎでもあったのだ。レナからの対戦申し込みも勿論考えてはいたが。


(凄く頼りになる男だ。絶対欲しいっ!)


 レナの本能が目の前の男を手に入れろと叫ぶ。クートが居れば自分は槍働きに集中出来る。冒険者でも傭兵でも何方でも良い。モンスターでも人間でも何でも良い。自分の槍を、力を十全に発揮出来る舞台が欲しい。クートなら自分の望みを叶えてくれるだろう。レナにとって必要な男だ。


「本当なら町で安全安心に、立会人有りの模擬戦をしたかったんだけどな」


 クートが嘆息する。レナが殺気以外のナニカを宿したねっとりした熱視線を向けて来たからだ。


「此処での事は誰にも話さない。だから遠慮無く奥の手を使いなよ」

「嫌だね。すでに見せた手札だけで打ち負かしてやるよ」


 そう言ってクートは後ろ向きに森の奥へと歩き始めた。明らかに誘っている。だがレナは退く訳にはいかない。彼女にだってクートに見せていない奥の手や切り札はまだ有るのだ。


「私を余り舐めんなよ。どんな罠でも正面から喰い破ってやる!」


 レナが体勢を低くする。彼の言葉を全て信用する訳ではないが、後残っている手札はチャクラムにウルミ。何方で来ても良い様に身構える。体を沈め目を凝らし、鋼糸に注意しながらクートを追った。

(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!

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