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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第27話

(*´ω`*)レナは大型犬です。

 初のパーティー結成早々、クートはレナを選んだ事を後悔し始めていた。


「模擬戦しよーよ」

「しない」


 レナがしつこい。本当にしつこい。


「クエスト中だぞ。気を引き締めろよ」

「気を引き締める為にちょっと体を動かそうよ〜」

「嫌だ」


 金にならないから戦わない訳ではない。負け確の模擬戦なんて真っ平御免だ。負けるのも嫌だがそれだけじゃない。普通に戦う意味が無いからだ。確かに戦闘職と模擬戦をしてみたいとは思うが、槍の勝負じゃ勝てっこない。

 クートとレナで食材選びや料理対決をする様なものだ。お互いに得意分野を教え合うとかならともかく、戦う意味が本当に無い。


(もっと良く相手を選べば良かった。いや、あそこで引き下がる訳にもいかないか)


 折角現れたレナはパートナーとしては最適だ。槍術スキル持ちの前衛戦闘職。レナが居ればクートが避けて来た大物も狙える。味方としてはとても心強い。


「ねぇねぇ〜戦ろうよ〜」

「殺らない」


 何でも有りなら恐らくクートが勝つ。だが初対面の相手に手の内を晒す気は無い。クートがソロに拘るのは自分の戦法を知られない為だ。

 レナとのバディはある意味、レナに直接戦闘を押し付けてクートは安全地帯に居る様なものだ。依頼報酬についてはその分多く渡す気も有った。


(支援に徹して上手くやり過ごそうと思ったのに)

「ねっ!ほらっ!穂先にカバー付けてるからっ!ねっ?死なない死なないっ!」

「突かれれば痛いし下手すりゃ骨折する。却下だよ」


 手の内を晒さずに戦えば負ける。クートは本気で戦えば勝てるのにと不満が残る。レナはレナで期待外れだとガッカリする。そんな関係性のまま一緒にクエストをして無事成功出来るとも思えない。クエスト前にやるのは無しだ。しかしレナからすると、クエスト後に怪我や疲労を理由に断られる可能性も有る。万全の体制でやり合いたいのだ。


「クートの噂は聞いてたよ」

「どんな噂」

「女を取っ替え引っ替えしてる屑男とか」

「ふーん」

「うわぁ、否定しないんだ?」

「向こうから誘って来ただけだし」


 別にこちらから口説いたりはしていない。多分。


「うわぁ、屑男だ〜」


 キャッキャと騒ぐレナに苛つく。流石に此れは仕方無いだろう。レナがうざ過ぎる。


(ペナルティ出るけどパーティー解散してクエスト返上しようかな)


 クートが辟易する。暫く年相応に笑っていたレナだったが、ふと真顔になってから、キュッと口角を上げる。その仕草はまるで、肉食獣が舌舐めずりした様な錯覚を覚える。


「他にも気になる噂が有るんだよ。クートがソロでモンスターを百匹以上仕留めてるとか」

「ふーん」

(やっぱりか)


 クート自身も多少は自覚が有る。自分はモンスターを狩り過ぎている。それで狩り場が荒らされたりはしないだろう。モンスター等掃いて捨てる程居るのだから。だがやはり悪目立ちしてしまったらしい。

 レナは純粋に、短期間に異常な数を殺してるクートの手腕が知りたいのだろう。教えてやる義理は無いが。

 そしてクートも負けず嫌いだ。そうでもなければ食材鑑定だと固有スキルが解った時点で田舎に帰っている。モンスター討伐に力を入れていたのはその面も有る。俺はスキル食材鑑定だが此れだけ戦えるんだ。モンスターを単騎で殺せる冒険者なんだ。そんな主張も含まれている。


「こっちも否定しないんだね」

「討伐数はギルドに記録されてる。レナが閲覧可能かは知らないけど、調べれば解るでしょ」


 冒険者ギルドは秘匿性の高い指名クエストでも無い限り、各冒険者のクエストクリアデータ一覧を公開している。勿論閲覧可能権限はギルドランクに準拠する。例えばAランク冒険者が気になる下位ランカーが居た場合、ギルドで下位ランカーのクエストクリアデータを閲覧出来る。


「私でもそんな倒してないよ。同じソロなのに。ソロだからかな?」

「そんな事は知らん」

「丸一日モンスターに会えない日も有るし」

「レナは殺気と云うか、やる気がダダ漏れなんだよ。後ちゃんと地図読んでる?エンカウントマップ読めばモンスターの棲息地は解るよ?」

「私地図苦手」

「絶対それだろ。俺は強くないよ」


 其れは概ね正しい。戦闘職であるレナならクートよりも短時間でより多くモンスターを倒せる。

 だが彼女は地図を読むのが下手と云うか読む気が無い。食糧等も適当にしてるので、お腹が空いたら町に帰って来てる。

 だが此れが普通である。新人は雑魚モンスター一匹すら発見出来ず、食糧が尽きて諦めて帰る。更には地図が読めないので道に迷って帰って来るのすら困難だったりする。行方不明の新人捜索の依頼も冒険者ギルドから定期的に出る。

 レナは帰巣本能が強いと云うか、勘は鋭いので家には帰れていた。


「だから、俺が強いからモンスターをたくさん狩れているんじゃない。レナが地図も読めなくて行き当たりばったりなクエストをしてるからモンスターにエンカウントしないんだよ」

「そうなのかな」


 まだ納得していない顔の槍使いの少女。そしてパッと顔を輝かしてこう言った。


「じゃぁさ、模擬戦やろうよ」

「⋯話、聞いてた?」


 クートの呆れ声に少し怒気が混じる。いい加減にして欲しい。しかしレナの方こそ実は譲歩していた。本当はガチンコの立ち合いをしたいが、それで怪我をしてクエスト失敗したら意味が無いし、多分ギルドは私闘、喧嘩扱いにする。そうなればEランク昇格どころかGランク降格も有り得る。其処までは無くても暫く研修として大所帯のベテラン冒険者パーティーに放り込まれて雑用をさせられるだろう。

 無い頭を捻って出したレナの答えが模擬戦なのだ。お互いの実力を知る為と云うのも一応建前としては通じるだろう。やや苦しいが。

 Eランク昇格もしたかったが、噂のクートと組めるチャンス。クートのパーティーメンバー募集に応募したのはレナにメリットしかなかったからだ。

 レナの狙い通りにいかなかったのは、クートが模擬戦を断り続けている事だ。あれだけモンスターを殺してるならさぞや血に飢えた獣の様な男だと思ったら、ちょっとイメージと違った。

 

「お互い実力が解ってた方が連携取れ易いと思うんだけど⋯」

「まだ言ってるし」


 日も暮れて来たので野宿する事にした。大きな木の下で暖を取っている。食材は町で購入しておいた野菜や肉の煮込みだ。クエストが長引けば食材は調達すれば良い。


「やろうやろうやろう」

「御飯出来たぞ。食え」

「うん。頂きます」


 煩い口を食べ物で黙らせるクート。レナの目的はすでにEランク昇格よりもクートに移っていた。過信ではなく同期では自分が一番強いと知っている。同期の剣術スキル持ちや槍術スキル持ちと模擬戦で殴り合って勝ち越している。


「美味いっ!結婚して」

「断る」

「え〜〜〜結婚したら毎日戦えるよ?」

「なんだその地獄の新婚生活は」


 同世代では負け無しのレナだが、流石に上のランクの冒険者や槍術の教官とかには勿論勝てない。

 負けず嫌いのレナだったが、明らかに格上の相手だとそう熱くなれない。

 拮抗した実力で切磋琢磨出来る相手が欲しかった。そう、彼女はライバルを求めていたのだ。

 クートの性格からして、Eランク昇格後は直ぐにパーティーは解散するだろう。そうすると模擬戦出来る機会が無くなる。このクエスト中がチャンスなのだ。


「御飯食べたら食後の運動に一戦しよ?」

「嫌だ。寝ろ」

「え〜なんで〜?」

「怪我をしたくない」

「この軟弱者がぁ〜あ、おかわり」

「合理的な話だよ。クエスト前に怪我してどうすんのさ。ああ、朝御飯分も有るから其れでもう終わりな」

「もぐもぐ⋯ええ〜もっと食べたい〜」

「駄目だ」


 レナは料理が出来ないらしい。出来たとしてもやらせる気は無かった。劣等感を持つ食材鑑定スキルだが、其れは其れとしてプライドも有った。食に関して誰にも負けたくはない。任せたくない。


「それと」

「何?」


 模擬戦もおかわりも断られ、不貞腐れ気味のレナに淡々と告げる。


「レナを殺したくない」


 もしも戦うなら殺すつもりでやらないと勝てないだろう。間違って殺してしまうかも知れない。クートは恐ろしい事に喧嘩らしい喧嘩はした事が無い。人間の殴り方が良く解らない。チンピラからシャロンを助けた時はやり過ぎてしまった。彼がやってきたのは罠を使った殺しだけだ。手加減のしようも無い。手加減をすれば此方が殺されるから。


「へぇ〜⋯言うじゃん」


 レナが笑う。獰猛で太い笑みだ。だが魅力的だ。レナは美人だし可愛い。ちょっと身長が高くて、身長より長い槍を担いでなければきっとモテていただろう。

 まぁ冒険者ギルドではモテているが。すでにあちこちのパーティーからスカウトの声は掛かっている。しかし全てを断っている。先ずはEランクに上がってからだ。


「じゃ、おやすみ〜⋯」

「おやすみ」


 火の番はクートが先にする事になった。横になったレナは直ぐに寝息を立て始める。


「ぐぅぐぅ⋯」

「凄いな」

  

 今日出会ったばかりの者を良く信用出来るものだ。クートが先に火の番を申し出たのはレナを信用出来ないからだ。戦おう戦おう煩い奴の目の前でぐっくり眠れる訳が無い。


「顔は良いな。身体も良い」


 レナは良い女だ。そんな女に迫られるのは悪い気分ではない。


「まぁいいか」


 少し考え方を変える。モンスターを殺したら衝動が強まるかも知れない。女が必要になるかも知れない。


「すぅすぅ⋯」


 クートは無言で、規則正しく上下するレナの大きな胸に魅入っていた。

(*´ω`*)クートは猫ですね。大型犬にじゃれつかれる猫。すげー嫌そうなヤツ。

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