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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第25話

(*´ω`*)クート君が楽しそうで嬉しいです。

「親方、何此れ?」

「そいつぁウルミっつう⋯ウィップソード⋯だな」


 コボルト退治に向かう前に鋼糸を補充しに来たクートが目を留めたのは、剣の様な板の様な、不思議な得物だった。


「まぁゲテモノだな。昔コイツを使ってる凄腕の傭兵を見掛けてな。真似して作ってみたんだが⋯使い手が居なくてな」

「ふーん」


 普通の剣より安い。と云うか在庫処分品扱いで安値で売られていた。値段が高ければ買わないが、安いなら試してみるのも良いだろう。親方には悪いが使い勝手が悪ければ投げ付けて撹乱に使おう。


「買う」

「お前はいったい何処へ向かってるんだ?」


 若気の至りで作った異形の剣に熱視線を送る若い冒険者を心配する親方。彼は厳つい見た目に依らず、頑固なだけで優しい鍛冶屋だった。


「ギャウウウウウウッ!?」


 バチンッ!とコボルトの群れのボスの体にウルミがヒットする。毛と血と肉が飛び散る。親方の作った異形剣は十分に通用する。初めて抱いた処女の様に使いこなして乗りこなせば良い。


「ふふっ」


 今日来る前に試しに木に向かって振るってみたが今一だった。やはり武器は実戦で試さないと具合が解らない。


「獣には鞭だな」

「ギャッ!ギャッ!」

「ギャウウッ!?」


 バチバチとクートのウルミがボスコボルトの皮膚を叩く。近寄ろうとした配下の三匹にもウルミを振るい牽制する。

 ウルミの達人なら首も刈り取れるらしいが、初心者のクートは鞭の様に振るって嫌がらせに徹する。

 ボスコボルトは敵や仲間に強さを誇示する為か、敢えて防具を装備していなかった。強靭な肉体はクートが普通に剣で斬り掛かっても致命傷は与えられまい。ウルミでも恐らく致命打は無理だ。しかし刀身がしなり遠心力を以て加速、威力の増した板状の刃がボスコボルトの皮膚を削っていく。

 ミドルレンジからの攻撃に手も足も出ないボスコボルト。仲間で囲んで狩り殺すつもりだった人間の子供が予想外の攻撃をして来た。格下だと思ってた相手に良い様にされて頭に血が昇る。痛いだけで命の危機を感じるダメージではない。此れを堪えれば敵を殺せる。その判断がボスコボルトの生死を分けた。踵を返して逃げ出せば、罠での狩りを主とするクートはコボルト討伐を諦めたろう。


「ギャアアアアッ!?」

「お、良いの入った」


 不慣れな武器だったが、まぐれ当りで顔にヒットした。ボスコボルトの片方の目玉が取れかかっている。顔を抑えて蹲るボスコボルトに容赦無く追撃を加えるクート。逞しい背中にバチバチとウルミを叩き付ける。


「良いな、此れ」


 腕力に自身の無いクートとしては、ウルミは予想以上に使い勝手が良い。当たれば痛い。血が出る。それで十分だ。


「ガウウウッ!」


 仲間のコボルトが背後に回り込もうとするが―――


「ギャウッ!?」


 鋼糸に引っ掛かり転がる。仲間がやられたのを見ていた筈なのに、ウルミのインパクトで失念したらしい。


「えい」

「ギャボッ!?」

 

 間抜けな一匹を手斧で頭をかち割る。


「二」


 クートはコボルトから盾を奪い、そのまま本命に向かう。


「先ずはボスから」


 クートはボスコボルトへ突っ込む。片目を失い掛けたボスコボルトは距離感が狂ったのだろう。持っている大剣を避けるのは容易い。拾った盾を正面に構えて突撃する。


「三」


 ボスコボルトの首にナイフを突き入れる。ゴボリと血の塊を吐き出し膝を突くボスコボルト。


「良し」


 ナイフを捻って大量出血をさせて命を奪う。


「シャロン」


 親方は言っていた。親方が見たウルミ使いは舞う様に戦い、縦横無尽にウルミを振るって敵兵を斬り刻んでいたと云う。


「シャロンは綺麗だったな」


 クートがウルミを手に死のダンスを躍る。

 クートはダンス等習った事も無い。故郷の田舎の祭では姉と踊った事も有る。その程度だ。シャロンの様な体幹の良い動きは無理だ。優雅さも欠片も無い舞いだ。だが彼は合計百はモンスターの命を奪って来た。

 基本は罠を張って嵌め殺すのがデフォルトだが、その手は殺しに手慣れて来ていた。

 クートが震えばウルミが雷鳴の様に轟き、獲物に襲い掛かる。


「ギャァァァ!?」

「四」


 クートが舞う。ウルミンで撹乱し、ナイフで突き刺し手斧でかち割る。


「五」


 舞う様にウルミを振るうと、獣の悲鳴と毛と血と肉が飛び散る。


「六」

 

 笑顔が溢れる。


「七」


 楽しい。


「八」


 楽しくて笑う。最後の一匹はウルミで滅多打ちにする。折角なので新装備だけで仕留めてみたい。何度か繰り返す内に動かなくなった。動かない的ならアレが出来るかも?


「九」


 クートが狙い澄まして一撃を見舞う。ウルミがしなり、板状の刃が水平にコボルトの頚椎に突き刺さる。遠心力を得た鋼の刃が見事コボルトの首を刎ねたのだった。


「えへへ。うん、良いね、此れ」


 新しい玩具が思ったより楽しく、無邪気に笑うクート。都合九匹のコボルトを仕留め、満足気に頷いている。


「痛っ!?」


 気付くとクートも血塗れだった。返り血も有るが、衣服のあちこちが破け血が滴っている。どうやらウルミで自分自身を斬ってしまったらしい。


「まぁ初めて使ったしな」


 クートはコボルトの腹を捌いて魔石を手に入れる。


「おっと、こっちもちゃんと片付けないとな」


 クートは楔に括り付けて張った鋼糸を回収する。木立の多い森の中なら此れで十分戦える。


「⋯でもやっぱ俺に仲間は無理かなぁ」


 鋼糸の罠は周囲に他人が居たら使えない。今日使ったウルミも全方位への斬撃は便利だが、連携が上手く取れる気はしない。


「パーティーか」


 しかし実の所、パーティーを組まないといけない。ランク昇格の条件にはパーティーでのクエストクリアが含まれる。

 実力の有る騎士とか傭兵とかが事情が有って冒険者資格を取る時は、便宜が図られ飛び級扱いになる事も有る。一昔前はソロの実力者は一度もパーティーを組まずに上位ランクへ駆け上がったりも出来たらしい。

 今は規則が変わり、FからEへ行くにはパーティーを組んでクエストをクリアする事が必須だ。


「ルカでも誘うか」


 たくさん殺して劣等感は薄まって来た。しかし未だ残ってる。きっと一生だ。

 剣術スキル持ちなら鋼糸やウルミ等使わず、コボルトの首を一閃出来た。

 槍でも弓でも、一流の使い手なら一撃で倒せた筈だ。

 魔法職なら遠距離から安全に仕留められた。森ごとモンスターを焼き殺せただろう。

 自分の戦い方に恥じる部分は無いが、やはり本物の戦闘職への引け目は感じる。


「誰か誘うかな」


 同じFランクの冒険者を探してみよう。きっと良い女が他にも居る筈だから。

(*´ω`*)クート君は最早仲間にするなら女しか選択肢無いですね。困ったもんだ

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