第24話
(*´ω`*)クート君に女の好みは、無い。抱いてみてしっくり来るか確かめる感。
「飽きたな」
サハギンの死体の山を見てクートが溜め息を吐き出す。サハギンの討伐数も通算三十を越えた。やはり知性が低いのか、鋼糸の罠で面白い様に釣れる。狩りと云うより最早作業だ。腹を掻っ捌いて魔石を取り出す方が時間が掛かる。
「もういっかな」
クートは其処でクエストを切り上げる。此れ以上サハギンを狩っても面白くもなんとも無い。
クートは魔石を川で洗い、革袋にジャラリと仕舞う。
町へ帰るともう夜だった。気紛れでとある酒場へと向かう。酒を飲まないクートにしては珍しい行動だ。
その店に入り肉料理を注文する。飲むのは果実水だ。
時間になるとダンスが始まった。露出の高い服装の踊り子達が扇情的に躍る。中でも飛び抜けて技術の高い踊り子が居る。勿論一番可愛い。
(体幹が良いな⋯やっぱ貴族令嬢なんじゃ?小さい頃からダンスのレッスンとかしてたりして⋯)
踊りの中に気品が感じられる。胸や尻を強調する下品なダンスと違い、エロスの中にも高い芸術性が有る。クートに踊りの善し悪しを語れる様な知識は皆無だが、彼女が抜きん出た才能と⋯弛まぬ努力を続けていた事は理解出来る。
クートはクエスト中の殺し合いで命の輝きを感じられる様になって来た。
「似てる⋯いや、同じだ」
彼女は別に殺し合いをしていない。踊ってるだけだ。だが胸に来るモノが有る。
(真剣に、全力で生きてる。戦ってるからか⋯)
順序がまるで逆だが、肉体関係を持った後に女の魅力に気付くクートである。抱いた時は彼女の仕事や人間性に特に興味は無かったが、踊りを見たら尊敬した。
(それが彼女にとって一番大切なものだからか―――)
クートはダンスの終わりに拍手を送った。
「シャロン」
「クート久しぶり。今日はどうしたの?」
「元気かなと思って」
シャロンにはパフォーマンス中にウインクされた。外で待っていたら外套を着込んだシャロンが現れた。
夜遅くに帰還したクートは魔石提出は明日に回し、シャロンが働く酒場に来た事を告げる。
「ふふ、私の事忘れちゃったのかと思ったよ」
「そんな事無いよ。クエストに行くと中々帰れなかったりするんだ」
今回のサハギン狩りも一週間程のクエストとなった。魚も食べ飽きて来たので肉料理が美味かった。
シャロンに会いに来たのは本当に偶々だ。公衆浴場は閉まってるだろうし、ついでにシャワーでも借りようと云う魂胆だった。
(シャワー浴びたいから⋯て言ったら怒るかな?)
頭の上から振り注ぐ温かい綺麗な水は魅力的だ。そのついでに抱きに来たと思われたら機嫌を損ねるだろうか?
「もぉ⋯シャワー先に浴びないの?」
シャロンの部屋に着いた後、直ぐに抱き着くクート。
「シャロンの匂いが嗅ぎたい」
「クートの変態」
そう言うシャロンだがクートを拒まなかった。どちらからともなくキスをする。
「初めて見たけど、良かったよ。シャロンの踊り」
「本当?お肉に夢中じゃなかった?ウエイトレスと楽しそうだったし」
「世間話だよ」
そう云えば女性店員に話し掛けられた。クートの様な若い男は珍しかったのだろう。客はほとんど中年男性ばかりだったから。
「シャロン、綺麗だった」
「他には」
「うん、格好良かったよ」
彼女の生きる舞台はダンスなのだ。其処が彼女の戦場だ。クートは冒険者として生きる事を決めているが、他の職業を下に見たりはしない。シャロンは輝いていた。モンスターを殺戮するクートと同じくらい気高く、キラキラと綺羅星の様に。
「そう、嬉しいな」
語彙は貧弱だが、真摯な言葉に微笑むシャロン。歯の浮いた様な美辞麗句よりも心に響く。
そのままクートはシャロンと寝た。
「偶には良いな、シャロンも。可愛かったし」
翌朝シャワーを浴びてスッキリしたクートが冒険者ギルドへ向かう。
飽きる程サハギンを殺戮したクートは余り血に飢えておらず、シャロンの事は優しく抱けた。
ハーニャには及ばないが、シャロンの踊り子の肉体も悪くなかった。ハーニャは長く、それこそ一晩中楽しめるが、シャロンは一回一回が激しく出来る。
長時間潜伏する事も有る斥候職のハーニャと、数十分全力で躍るシャロン。
仕事に依って求められる身体作りが違う為、それも行為に影響していた。
女の味を覚え始めたクートは、それぞれの良さを噛み締めていた。
クート自身は食材を見極める鑑定職らしく、対象の弱点をじっくり見極めるタイプだ。
散々に女を食い散らかすクートであったが、女の扱いはとても丁寧だ。噛み付いて歯型を付けるぐらいしか悪癖は無く、余り乱暴な事はしない。
只やはりシャロンには噛み付けないのでずっとキスばかりしていた。口寂しかったからだ。
(彼女の体に痕を遺すのは申し訳無いからな)
踊り子として真剣に生きてる女の体は正に彼女の武器だ。クートにとってのナイフや鋼糸と同じ。丁寧に扱わなければならない。
だが結果的にキスしながらの行為が良かったのか、前回以上にシャロンが甘えて来た。
また抱こうと思う。帰り際には濃厚なディープキスで別れた。
「ルカもまた抱いてみるかな」
ルカも成長期だ。抱き心地が変わってるかも知れない。
「お願いします」
「はい、有り難う御座います。魔石の方、確認致しますね」
カヤルとは違う受付嬢が対応してくれる。最近カヤルに会わない気がする。どうしたのだろうか。まぁどうでも良いか。抱けない女だし、抱く気も無い。
「コボルト、ですか⋯」
「はい、コボルト討伐依頼がしたいです」
早速次のクエストを受けるクートに、カヤルより少し年上の受付嬢が顔を曇らせる。
(確かに普通じゃぁないわね。普通は稼いだ金で暫く遊ぶもの⋯)
クエストの頻度とモンスターの討伐数等のデータだけだと、血に飢えた獣の様な冒険者にしか見えない。だが実際目の前に居る男の子は凄く普通に見える。
彼女の息子はもっと小さいが、息子が居る受付嬢はクートを心配してしまう。
「はい、次は此れ、仕留めて来ますね」
「解りました。お気を付けて⋯」
冒険者がクエストを受けると云うのに拒む事は出来ない。それもFランクらしく雑魚モンスターしかターゲットにしていない。
彼女はクートを笑顔で見送るしかなかった。
「ヘッヘッヘッヘ!」
「グルルルルルッ」
「ガウッ!」
「へぇ、武器持ってるんだ」
モンスターエンカウントマップ通り、コボルトの棲息地に行くと早速囲まれた。犬面のモンスターらしく群れを形成する様だ。
「盾も。どうやって手に入れてるんだ?人間から奪ったのかな⋯」
クートを取り囲むコボルトは五体。他にも気配を感じる。此の群れのボスと後詰めの数匹が居るのだろう。多分十は居ない。八匹ぐらいか。
「ふーん。まぁ良いか」
クートがナイフと手斧を構えると、コボルト共が一斉に襲い掛かって来た。
「グァァァァッ!?」
「ふふっ」
悲鳴を上げて転がるコボルト達を見てクートが微笑む。
鋼糸は今回も活躍してくれている。
周囲に張り巡らせた鋼糸の罠。今回は鋼糸を楔に括り付けて木の根元に突き刺してみた。其れに引っ掛かったコボルト達が転んでいる。勢い付けて足を引っ掛ければ相当に痛いだろう。出血するし痛みで動きも鈍る筈だ。
運の悪い奴は足首が切断され掛けている。
「重傷な奴は後回し」
運良く罠に掛からなかった個体を狙う。その個体は仲間が急に倒れて苦しみ出した事に驚いて萎縮してしまっていた。
クートは自分が張った罠をヒョイヒョイ飛び越えながらコボルトに近付く。
「半端に知能が有ると不幸だね」
頭が悪かったらきっと突っ込んで来ただろう。そっちの方が厄介だった筈だ。鋼糸の罠もそんなにいっぱい用意していない。初見殺しの奇策だから。
「先ずは一匹」
「ギャンッ!?」
耳を垂れさせ切ない表情になったコボルトの首を掻き斬る。
「ボスはお前か?」
「グルルルルルッ!」
茂みの奥に居た個体が姿を現す。残りの三体も現れた。コボルトは全部で九体だ。魔石も九個手に入る。
「丁度良いな」
クートは新しい武器を構える。
「試し斬りだ」
死闘が始まる。Fランク冒険者とちょっと強い雑魚モンスターの個体。底辺同士の殺し合いが。
(*´ω`*)クート君新装備購入。




