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魔食晩餐〜最弱スキル食材鑑定でダンジョンサバイバル〜  作者: 猫屋犬彦
序章

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第2話

(*´ω`*)おぱようございみゃふ!

「薬草です!お願いします!」

「はい、有り難う御座います。確認致しますね」


 クートが薬草の詰まった革袋を提出すると、冒険者ギルドの受付嬢がにこやかに対応する。

 新人に対しても変わらぬ接客態度である。お客様対応とも云う。親密度が上がればフランクな遣り取りも出来る様になるだろう。

 当たり前だが、冒険者ギルドの受付嬢の交際相手、結婚相手は冒険者が多い。


(あらあら、泥だらけで目をキラキラさせちゃって⋯可愛いわね)


 笑顔の奥で冷静に値踏みする受付嬢カヤラ。

 目の前に居るのはクートと云う新人冒険者である。

 昨日スキル鑑定を受けて望みのスキルじゃなくて酷く落ち込んでいたらしい。

 同僚の鑑定士が、アレはダメかもと言っていた。

 田舎に帰るかと思っていたら今日、朝一で現れ昼過ぎまで薬草採取クエストに行っていた。

 そしてキッチリとクエストを達成した。

 レアアイテムをゲットした訳でも、凶悪なモンスターを倒した訳でもない。

 だが彼はしっかりと冒険をして来たのだ。


「こちら報酬です」

「有り難う御座いますっ!」

  

 薬草採取は即日現金払いだ。食うに困って冒険者になる者への救済措置でもある。ランクが上がるとクエスト報酬も高額になる。他にも達成確認やら何やらと手続きも煩雑になり、支払いは銀行振り込みになる。

 薬草採取はGランク専用だ。Fランクに上がればクエスト受注不可となる。薬草採取だけで生計を立てるのは不可能だ。


「⋯⋯⋯⋯此れが⋯」

「どうしました?」


 子供のお小遣い程度にしかならない報酬を手に持ちジッと見つめるクートに問い掛ける。


(少なくてショックなのかな?)

「いえ、初めての報酬、ですから。冒険者としての⋯」

「はい、おめでとう御座います」


 クートは喜びを噛み締めてるだけだった。

 その事を察したカヤルが微笑む。


「有り難う御座いますっ!」


 カヤルに向けられる純真無垢な笑顔。


「良かったですね」

(か、可愛い〜)


 むさ苦しくくたびれた中年冒険者ばかりの職場に現れた、一服の清涼剤の様な純朴な少年。

 見ていて癒される。


「それではまた宜しくお願いしますね」

「はいっ!」


 クートはキラキラと輝く笑顔を見せながら冒険者ギルドを後にする。


「カヤル、猫被り過ぎだろ⋯」

「なんですか?冷やかしなら帰って下さい」

「いや俺も仕事だし」


 順番待ちをしていた常連冒険者が声を掛けて来る。

 この町の冒険者ギルドの良い所は、クエスト受注のロビーが酒場になっていない所だ。ギルド運営の酒場は別棟に有る。

 以前待合所が酒場も兼ねている支部に居た時は、仕事中にナンパやら喧嘩の仲裁やら業務外の雑事が多くて辟易したものだ。


「ピリピリし過ぎだろ。後輩が寿退職したからって⋯」

「本当に五月蝿いですね。評価下げますよ」


 カヤルは御年二十うん歳のピチピチ受付嬢である。成人が十五歳であるこの世界ではちょっと微妙なお年頃なのだ。


「職権濫用だー。あ、此れゴブリンの魔石ね」

「ちっ」

「え?舌打ち?」

「血っ⋯ぐらい洗って下さいよ」

「ロッタちゃんなら笑顔で受け取ってくれたのに⋯」

「悪かったですね。行き遅れで」

「機嫌悪いなぁ。なんだ?生理か?」

「⋯本当に、冒険者って奴等は⋯」

 

 デリカシーも何も無い常連との遣り取りに頭が痛くなる。もっと酷い場所だと胸や尻を触られるし、仕事の話をしてる最中に『今夜一発どう?』とか誘って来る馬鹿ばかりだ。

 荒くれ者の冒険者達からすると、受付嬢に性的サービスを要求するのが当然と云う風潮すら有る。


「あぁ、嫌だなぁ。クート君もあんなんなっちゃうのかなぁ⋯」


 挨拶代わりにセクハラして来る常連を見送り溜め息を吐き出すカヤル。


「随分ご執心だな」

「支部長」


 冒険者ギルド支部長が顔を出す。もっと大きな都市だと支部長が現場に顔を出す事等滅多に無い。

 しかしこの小さな町ぐらいの支部だと、受付嬢の昼休憩中に受付業務を支部長が代わりにこなしたりする。

 特に今は、若い受付嬢が電撃結婚して退職してしまって人手不足である。

 子持ちの受付嬢がパートで働いてくれているが、朝から夜まで通しで働いてくれるのはカヤルを含めて数える程である。


「クート君。見込み有るじゃないですか」

「食材鑑定だっけ?」

「スキルは兎も角、心が折れなかったですし」


 冒険者を目指す者達が求めるスキルは戦闘職や魔法職が多い。

 魔法職適性の有る者は誰に師事する事も無く魔法がなんとなく使えたりするので鑑定を受ける前から己のスキルを把握出来る。

 しかし物理的な戦闘スキルは難しい。

 剣で負け無しだった若者の鑑定結果が盾術だった場合も有る。

 その者が過去を思い返すと、盾を扱って相手を遣り込める戦術に長けていた事に気付く。最強の剣士になる夢が頓挫し一時的に荒れてしまったが、己のスキルと向き合う事で克服した。

 現在彼は優秀なタンクとして頭角を現し、彼の盾は多くの仲間の命を守っている。

 望んだスキルでなくとも大成は出来るのだ。


「戦闘職は花形だからな」

「鑑定も需要有るんですけどね」

「食材鑑定なんて、料理人や商人からしたら重宝するんだがな」

「モンスター倒してダンジョン潜るだけが冒険者じゃないのに」

「分相応の身の振り方をすれば長生き出来るんだがなぁ⋯」

「そうですね。大手の商会とかで雇われれば、冒険者なんかより安定で安全な生活が出来るのに」

「冒険者なんかってお前⋯」

「宵越しの金は持たずに娼館で散財する男達に魅力が有るとでも?」 

「男の甲斐性だろ?」

「それ、奥様に言えます?」

「すまん、俺が悪かった」


 支部長は手を上げて降参のポーズを取り、後ろを向く。

 カヤルは退散して行く支部長を尻目にクートに思いを馳せる。


(⋯将来性は抜群ね。前向きで明るくて、礼儀正しい。何より―――内勤向き)


 カヤルがクートを品定めする。

 クートには不本意だろうが、鑑定スキル持ちは人気が有る。

 冒険者ギルド所属のスキル鑑定士然り、商会所属の各鑑定士達もそう。

 

(安定、安全、安心⋯結婚相手としては悪くない⋯)


 冒険者と結婚する受付嬢は多いが、離婚率も多い。

 冒険者達は酒場で騒ぎ、娼館にしけこむ。

 遠征先で現地妻を囲うのなんかザラである。


(⋯唾付けとこうかしら⋯)


 クートの望みとは違う方向で彼は評価され始める。

 その日から毎日真面目にクートは冒険者ギルドに通い、カヤルが笑顔で対応する。


「有り難う御座いましたっ!」

「また宜しくお願い致しますね」

(⋯薬草採取クエスト⋯後数回かしらね)


 新人冒険者の仕事を減らさない様に、ある程度の評価を受けたGランク冒険者は直ぐにFランクへ昇格する。

 それこそ何処かの国の騎士や、魔法士ギルドの魔法使いが冒険者へ転身する場合、形式的にGから入って貰い、昇格試験を経て直ぐに高ランクへ引き上げる。

 何処も人手不足で優秀な人材を遊ばせておく余裕等無いからだ。


「クート君は真面目だし、採って来る薬草の質も良いし。後もう少しでFランクへ強制的に昇格ね」


 それまでに個人的に話しておきたい。

 Fランクになればパーティーを組める。それが心配だ。

 冒険者には悪い連中も居る。戦闘職でない新人を雑用にして扱き使うのだ。


(その程度なら未だ良いけど⋯)


 下手をすればダンジョン探索へ連れて行かれ、罠を見つける為の使い捨てやモンスターを誘き寄せる囮に使われる事すらある。


「今度予定訊いてみようかしら」


 年上の自分があんな少年を食事に誘うのも少し二の足を踏むが、放置しても置けない。

 クートにだけ三割り増しで笑顔を振り撒いていたが全く効果が見えない。

 彼はクエストクリアにしか興味が無いのが丸分かりだ。恐らくカヤルの名前すら知らないだろう。


「狙ってるのはFランク昇格⋯モンスター討伐にダンジョン探索⋯」


 カヤルは決心する。クートがFランクに上がる前に食事に誘い、内勤勤務を勧めよう。

 彼の真面目で堅実な性格は内勤向きだ。

 鑑定スキルで安定、安全、安心に食って行ける。


「結婚相手に申し分無いわね」

「おい⋯欲望ダダ漏れだぞ?」

「何の事です?前途有る若者を冒険者なんてチンピラにしないのも受付嬢の務めです」

「十も離れた子供に欲情するなよ⋯」

「あん?ロッタと宿屋でしけこんでた話、奥さんとビギーに話して良い?」

「御免なさい。好きにして下さい」


 切り札を切ると支部長が退散する。

 ビギーはロッタの結婚相手であり、ギルド所属の冒険者である。ロッタが妊娠した為の出来ちゃった婚であるが、果たして種は誰の物か?清純そうなロッタがビギーや支部長とは違う男と歩いている所も見た事が有る。


「クート君はお姉さんが守ってあげるわ」


 八割私情の義務感に燃えるお姉さんカヤル。しかし、事態はこの後急変する。

(*´ω`*)お読み頂き有り難う御座いみゃす!

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